挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ファルファ、スライムに戻る編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

108/280

106 ブッスラー、ベルゼブブに弟子入りする

 ブッスラーさんが距離を詰めてきた!

 だが、途中でブッスラーさんの足が止まる。
 また、ベルゼブブが言ってたように、隙ばかりだから逆に攻められないってことになったのだろうか。

 けれど、ブッスラーさんの足がふるえていた。
 武者震い? ファンタジー世界に武者はいないかもしれないけど。

 あれ、でも顔も青くなってる。なんだ、体調でも悪くなったかな? お相撲さんでも取り組み中におなか壊して最悪だったみたいな話をニュースで見たことがある。

「こ、こわ、い…………」

 ブッスラーさんが声までふるわせて言った。

 怖い?
 そりゃ、大会のチャンピオンと対戦するわけだから一般人は恐れるだろうけど、そっちも選手だし、しかもそっちから挑んできたんじゃないか。

 かなり矛盾した話なので、言ってる意味がよくわからない。

「ありえないぐらいの、巨大な岩塊みたいな殺気を感じます……。これが最強の格闘家ですか……」
「殺気って、私、別に殺し屋でも剣客でもないよ……」

 あくまでものんびりスローライフしてるだけの魔女だぞ。血なまぐさいこととは無縁の日々を送ってきた。

「いや、これは想像を絶するほどの命を奪ってきた者だけが持つオーラがあります……。近寄ったら殺される……!」

「言いたい放題すぎる! いたいけな魔女を人殺しみたいに言わないで!」

 …………ん?
 人殺しではないけど。
 スライム殺しではあるよね。
 それで、相手は元スライムだよね。

「スライムの魂が訴えかけてきます! これ以上近づいたら命をとられると!」
 謎は解けた。
 私、スライムにとっては天敵中の天敵だもんな。普通、三百年スライムを倒し続ける人間っていないので、世界一スライムを倒している可能性が高い。

 ブッスラーさんはそれを敏感に認識してしまったらしい。感覚が研ぎ澄まされてるから格闘技やれてる部分もあるしなあ。

 私から一歩近づく。
 汗がブッスラーさんの頬から垂れてくる。まだ戦闘は実質はじまってないから、冷や汗だと思う。

 私はもう一歩近づく。
 ブッスラーさんがのけぞり気味になる。本能が私を避けようとしているらしい。

 たたたっと私はブッスラーさんの真ん前で接近した。

「た、助けて…………」

 ブッスラーさんが目を開いたまま、ぶっ倒れた。
 恐怖が私を理解することを諦めさせたらしい。

「真の武道家は相手に触れることさえなく打ち倒す――なわけあるか」
 勝ちはしたけど、自分が名状しがたき化け物になったようで、女子としては極めて複雑な心境だった。
 失礼にもほどがあるだろ……。



 三十分後、ブッスラーさんが目覚めた。

「あれ、ここは……控え室ですか……?」
「うん、ひとまずここまで運んできたよ」
「――わっ! 世界最強の生物アズサさんじゃないですか!」

 そろそろ、ハラスメントとしてどこかに報告するぞ……。

「まさか触れる前から決着つくとは思わなかったよ。おそらく何も得られるものはなかっただろうけど、そこは責任持たないからね」
「はい……。まだまだ修行不足です……。あまりに恐ろしいものには近づくことすらできないと知りました。もっと鍛えなければと思います」

 だから女子に対して失礼だって!
 こっちは見た目年齢は十七歳だからね! 日本に行ったら女子高生と認識される歳だからね!

「あっ、ブッスラーさんが起きた~!」
 後ろからかわいい声がかかった。
 ファルファだ。ほかにうちのファミリーが揃っている。それとベルゼブブも交じっている。

「ずっと一人で待ってるのもなんだし、みんな呼んできたの」
「ああっ! ベルゼさんまで!」
 ブッスラーさんからしたら格闘技における大物なんだな。

「ブッスラーさん、あらためてありがとうございます! ファルファ、この体に戻れました!」
 礼儀正しいファルファが笑顔であいさつする。この笑顔を保存するために、魔法創作でカメラ作ろうかな。いくらなんでもそれは無理か。

「いえいえ。これぐらいどうということはありません。しかし、ファルファちゃんのお母さんはとんでもない方ですね……」

「うん、ママは世界一強いんだよ!」
 これ、子供が「ママは世界一やさしい!」とか言ってるのと同じノリなんだけど、わたしの場合、本当に世界一強い可能性がワンチャンある。それを誇る気も何もないけど。

「はい、その言葉に偽りなしですね……。これからももっと腕を磨きます……」
 向上心があるのはいいことだ。ファルファやシャルシャがまたスライムに戻ってしまった時のためにも、特訓で死んだりしないでほしいけど。

「というわけで、ベルゼ様、弟子にしていただけませんか?」

 ブッスラーさんがベルゼブブの前で頭を下げた。

「はっ? なんでわらわがそんなことせんといかんのじゃ! 弟子をとるつもりなどないからの!」
 ベルゼブブがあっさり拒否する。いかにも面倒くさそうだもんな。

「大会でのまるで悪魔かと思うほどの強さ、思い知りました! ぜひ修行させてください!」
「そりゃ、悪魔かと思うほどに強いじゃろ。弟子は一切受け付けておらん。そろそろ国に帰らんと仕事がたまっておるのじゃ。部下にかなり怒られそうじゃし」

「えっ、本業は別にあるのにそんなに強いんですか!? いつトレーニングとかしてるんですか?」
 普通に考えれば、そこを驚くよなあ。

「ほどほどに鍛えたりしておるだけじゃ。アズサに出会うまでずっとさぼっておったがの。なんとか一矢報いるために鍛えたりしたが、足りなんだな」
「お願いします! 弟子にしてください!」

「知らん! 他人に教えるほどのものはないのじゃ!」
 意外と強硬に反対するベルゼブブ。本能が面倒だと認識してるんだろう。

「せっかくだから弟子にしてあげてよ(この人がどこにいるかわかったほうが娘がスライムになっても対処できるし)」
「おぬし、魂胆見え見えじゃ!」
「お願いします! 皿洗いでもなんでもしますから!」

 このあと、ずっと粘られて、ベルゼブブは弟子入りを許したらしい。
 ブッスラーさんがベルゼブブの故郷に行って、どういう反応するかが楽しみだ。
 でも、スライムもモンスターの一つだし、どうにかなるだろう。
ファルファ、スライムに戻る編はこれにて終了です!
今回のエピソードはけっこう長くなったんで、次はもうちょっとライトなエピソードにできればと。

20161213_slaim_syoei01.jpg
GAノベルさんより発売中です! 5巻は2018年1月15日発売! 1巻は10刷を達成いたしました! ↑をクリックしていただければ紹介ページに飛びます!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ