挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ファルファ、スライムに戻る編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

106/282

104 ブッスラーのお願い

「どう? こういうことをすると脳震盪になって気絶するって聞いたんだけど」
 私は倒れているベルゼブブのほうに声をかけてみる。

 ダウンってルールはないはずだけど、とにかく初めてダウンを奪った。

「これでもう私の勝ちってことでいいんじゃない? それともしばらくは立てない?」

 ベルゼブブから返事がないまま、審判がそこに入ってきて、ベルゼブブの様子を確かめる。

「ベルゼ選手、戦闘不能のため、アズサ選手の勝利!」
 そのコールと共に「アズサ!」「つえええ!」といった声で会場を包む。
 ひとまず、いい仕事はできました。赤の他人の前で恥をかいても気にしないけど、娘の前で負けるわけにはいかないからね。

 だけど、それで一段落というわけにはいかなかった。
 まだ、ベルゼブブが起きてきていない。

「ちょっと、ベルゼブブ、大丈夫? いや、大丈夫ではないから倒れてるんだろうけど」
 全然、ベルゼブブが仰向けになったまま動かない。まさか死んだりしてないよね……?

 ガチの戦闘をしたことなんて本当に長い間なかったし、そんな全力で戦う必要もなかったから、力の加減が自分でもわかっていなかった。これぐらいで致命傷になることはないと思ったんだけど……。

 少し、ベルゼブブの体をゆすってみる。
「お~い、終わったよ。起きて、起きて。寝るのはベッドにしようね。お~い……」
 反応がない。
 ぞくっと寒気がした。
 そんな、これで死んだとかナシだよ。せっかくファルファが復活したのに全然喜べないよ。

「ちょっと! 終わりよければすべてよしの反対! 最後だけ不吉なのはいろいろ問題だから! そんなきれいに入っちゃった? ねえ! 目を開いて!」

「あの、アズサ選手、あまりゆするのはよくないので、今、タンカを用意しますので」
 審判に後ろから声をかけられた。たしかに悪影響を与えちゃうか。

「ねえ、起きて、起きて……」
 こういうの、大昔のラブロマンスとかだと涙が落ちてよみがえったりするけど、悲しいというよりパニックで泣けない。
 いや、水があればいいなら、手はある。

 氷雪の魔法をちょっとだけ顔にかけることにした。
 これで代用になるんじゃないかな。威力だけなら水より強いし。

 直接やると攻撃になりかねないので、魔法を地面にかけて、そこの氷を割って、顔にひっつける。
「ほら、冷えるよ、冷えるよ、きーんとするよ~」

 十秒ほどすると――

「さ、さむっ! 寒いのじゃ!」

 ベルゼブブが目を覚ました!

「あっ、おはよう、ベルゼブブ!」
「無茶苦茶しおって! 魔王様の魔法で氷漬けにされる夢を見たわ!」
「それぐらいやらないと目を覚まさなかったんだから、しょうがないでしょ。でも、ほっとしたよ!」

 私は、よいしょっとベルゼブブをお姫様抱っこする。
 まだ歩くとふらついてるかもしれないし、控え室ぐらいまでは連れていこう。
「おい……これは目立つのじゃ……。観客もたくさんおるし……」

「ケガ人だからしょうがないでしょ。脳震盪直後はよろけて上手く歩けないんだよ。格闘技のテレビ見た時、そうだったから」
「テレビ? また訳のわからん単語が出てきおったな……」

「ああ、そこはあまり気にしないで」
 私はひょいひょいベルゼブブを運んで、舞台を後にする。こういう時、ステータスが高いのは助かる。

「また、おぬしに負けてしもうたな。完敗じゃ」
 ベルゼブブはせいせいした顔をしていた。
「挑戦したかったら、そのうち再戦してあげるよ。面倒だからできればしたくないけど」
「おぬしは強いのに全然血の気がないのう」

 そりゃ、強くなろうと思って強くなってないからな。
「これが私のやり方なの。ゴーイング・マイ・ウェイ。ほどほどにやって、それなりに楽しく生きていく」

「わらわもそういう生き方をすればもっと強くなれるのかのう」
「スライムをひたすら倒せばいいんじゃない?」
「一応、スライムもモンスターじゃから倒しづらいのう」

 なるほど……魔族ならではの悩みだな……。

「しかし、これでまたおぬしの平穏が崩れるかもしれんな」
「えっ? どういうこと?」
 そんな不吉なことをさらっと言わないでほしい。

「これまで知られてなかった王国南部までおぬしの強さが知れ渡ってしまったぞ」
「あっ……」
 会場全体が私に向かって拍手を送っていた。

 光栄ではあるけど、できれば明日になったら私のことは忘れてね!



 その後、私とベルゼブブは表彰式で賞金とメダルなどを受け取った。

「最強の魔女!」「高原の魔女!」「おかげで十万ゴールド以上儲けたぜ!」

 私はほどほどに手を振って、それに応えた。厄介ごとの相談はとくに請け負いませんので、そこんところよろしくお願いします。

 ちなみに、その表彰式にはブッスラーさんもいた。上位まで進んでいるので、賞金などは出るのだ。

 そのブッスラーさんには式が終わってから、あらためてお礼を言った。
「娘を治してくれて、本当にありがとうございました!」
 深く、深く頭を下げる。この人がいなかったら、ずっとファルファはスライムのままだったかもしれない。

「こちらこそ、同じスライムの方を助けることができてうれしかったです。途中で負けて賞金額が微妙になってしまったのは残念ですが」
 ブッスラーさんはアスリート系少女のさわやかな笑みを作って言った。見た目ではスライムらしさはない。

「もし、また何かスライムのことでわからないことや困ったことがあればおっしゃってください。それと格闘技でお金になりそうなイベントがあれば教えてほしいです」

「孤高の格闘家のはずなのに、金にうるさすぎるだろ」

「すいません、実はお金を貯めるのが趣味なんです」
 事情、浅っ!!!
 ブッスラーさんは照れながら言ったけど、世俗の中の世俗な生き方してるぞ。

「けど、ファルファを治すのに一ゴールドも要求しなかったってベルゼブブから聞きました。やっぱり、あなたはいい人なんですね」

 それこそ、こっちは一億ゴールドと言われても払うしかなかったのに。

「そこは困ってる人同士のことですから。あと……実はお願いがありまして……」

 ブッスラーさんが少し上目づかいになる。
 それで彼女の背が女子の中でも低めであることにはじめて気づいた。

20161213_slaim_syoei01.jpg
GAノベルさんより発売中です! 5巻は2018年1月15日発売! 1巻は10刷を達成いたしました! ↑をクリックしていただければ紹介ページに飛びます!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ