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第八話   勘、かな?

葵を穴が開くほど見つめていた“South-pore”は、乾いた唇をなめて、尋ねた。


「君はいったい・・・・・」


「私は日向 葵。でも、あなたが知っている名前はこっち・・・・“向日葵(ひまわり)”・・・・!」




先程のような反応の後、機長がむっつりと呟いた。


「・・・・・何故、彼に?」


葵は肩をすくめる。


「・・・・・勘、かな?」


「・・・・・分かりました・・・・・・」


どうやら、彼らの上下関係が変化したらしい。僕と斎藤はいまいちついていけなかったが。





「・・・・・Purge Planの全容は、ほんの一握りの人間しか知らない。私も、本当は知るべき人間じゃない。“や む を え な い 犠 牲”の一人のはずだからな」


「・・・・・」


「石井君も知っている通り、近年の人口爆発は深刻だ。日本中で過密化が進んでいる。」


「その問題を解決するためのルナ・ドームでしょ?」


思わず口を挟んだが、彼はこちらをチラッと見ただけで、話を続けた。



「・・・・・ルナドームの“選ばれた住人”は、ほとんどの者が共通点を持っている。何か分かるかね?」



「・・・・・?」



斎藤は機長を、葵はテーブルをじっと見詰めている。誰も何も言わない、何か不安を抱かせる沈黙があった。




「経済的な―――そうだな、俗に言う―――敗者たちだ」



「??当然じゃないですか? そういう人たちのほうが身軽だし、再出発を望んでいるし、政府の提供した値段も手ごろですし」



「まぁ、確かに筋が通っているが、あまりに割合が高すぎるんだ」


「え?」



「具体的なデータでは、約8割が失業者だ。」


「そんなにですか!?」


「残りの2割もほとんどが低所得者。作為的な何かを感じないか?」


「・・・・・・そうですね。普通なら買占めを狙う金持ちが出てきてもおかしくないのに」


彼が頷いた。


「そう、これは仕込だった。そうだろ?斎藤くん」


話を振られた斎藤は、全員をじろりと見渡してから、溜息をついた。


「・・・・・えぇ。政府は、ルナドームを実験施設としか考えていない」


「実験?」


斎藤はこちらを見ようともせず、テーブルとにらめっこしながら話し続けた。


「人類が地球から離れて生活できるのか、快適に暮らすには何が必要か、伝染病がはびこったときの対処法。それを確認するためのドームだ。最初の1億8千万人はただの、実験体(モルモット)さ」


「・・・・・・モルモット・・・・・・・」


「もちろん、すぐ傍で監視するために政府の人間も少しは混じっている。この便に乗っている日向ってお偉いさんも恐らくその一人だ。そうだろう?」


斎藤は葵に問いかけたが、彼女はポカンと口を開けて、彼を見ている。斎藤は戸惑った。


「・・・・・知らなかったのか?さっきの様子だと・・・・」


「まぁ、斎藤くん、焦ることはない」


機長がちょっと微笑んで斎藤を制した。


「え?」


「彼らはそう説明したが、それは、私たち乗務員用の説明に過ぎない」


「え!?」




「真相は、違う」




機長は同意を求めるように葵を見る。そして彼女もそれに答えて頷く。



「・・・・・・P・Pは、もっと、勝手な計画なんだ・・・・・」




機長は、冷めたコーヒーをがぶりと飲み干した。




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