第五話 Good night
僕はさっきと同じやり方で操縦席までたどり着こうと思っていた。・・・・隣にいるのが未来なら。
「・・・葵はさ」
「え?」
「暗い中でも、まっすぐ走るくらいなら・・・・・」
「無理」
「即答!?」
予想通り、あっさりと斬られた。
「無理は無理。できない。・・・・なんで?」
「照明落として突っ走ろうかと・・・・・」
「ハイ、ボツ。次の案」
そういえば、こいつがいても、得することはあんまりない・・・・?
「・・・・・お前、ここで待ってる?」
「さて、着いたらすぐに警察に動いてもらいましょうか。何ならさらに罪ふっかけてあげようか?」
葵はにこりともしない。本当にやりかねないから危ない。
「・・・・・・しょうがない。ちゃんと着いてこいよ?」
「了解。で、ルートは?」
僕は天井を指差した。
僕らは身をかがめてやっと通れるような、狭くて暗い空間を歩いていた。通気孔らしいんだが・・・・
「最ッ低!!こんなとこ通るなんて・・・・・!」
「五月蠅い!俺だってこんなとこ通るつもりはこれっぽっちもなかったんだ!!」
いい加減いらいらしてきた。この野郎(?)、さっきからブーブー言いすぎだ。誰のせいでこんな埃だらけの小汚い空間を通る羽目になってっか、わかってんのか?
「だいたい、アオがまっすぐ走ることすら・・・・・」
「違う!“暗い中”ってのが重要なポイントでしょうが!」
「視覚に頼ってんじゃねぇよ!」
「あんたと未来ちゃんが異常なんでしょ!?」
「異常とは何だ、異常とは!」
やっとのことで通気孔が終わった。僕らは格子状のふたをこじ開け、下の部屋に何も考えずに飛び降りた。
「動くな!!」
・・・・・ずっと怒鳴りあってたんだもんな。部屋に侵入した僕たちに、警備員が銃を向けてたって不思議じゃない。
「・・・・おい、葵のせいだぞ」
「はぁ?あんたが大声でごちゃごちゃと・・・・・」
「・・・・・手を上げろ」
警備員は冷静沈着で、ホントに迷いなく撃ちそうだ。僕はおとなしく手を上げた。
「あのさ、アオ」
「え?」
「暗い中、“アレ”は出来る?」
「・・・・・暗くなれば」
「喋るな!」
「・・・・・Good night・・・・!」
電子音の後、電気が切れた。
ミシッ「グッ!!」ドサッ
「もしもに備えててよかったな」
すぐに電気を復旧させると、警備員は床に伸びていた。その傍らに葵がいる。
「今の、何?」
「俺の声紋とパスワードを登録してあるんだ。俺のいる部屋の電気が自動で切れるように」
葵は怪訝な顔をした。
「・・・・・準備良すぎない?」
「なぁに、葵のその護身術と同じだよ」
実際は“護身”よりも“攻撃”に使われているが。
「ねぇ、ほかにも何か仕込んでんじゃないでしょうね?」
「備えあれば憂いなし。何かあったら、何か出てくる」
「・・・・・・なんかやな予感がする・・・・・」
僕も同じである。