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第四話   人々は神意に逆らった



さっきの通り、照明なんざ簡単にいじれる。ボタンをちょっと押すだけだ。



客席に出るとき、僕は全ての明かりを落とした。こんな風に。



「・・・・・3」




「・・・・・2」




「・・・・・1」


カタカタカタ



「・・・・・0!!」パシュゥゥゥ




「はい、安心して通れるな!」



「・・・・カウントダウンの意味は?自分でスイッチいじってるようなもんじゃん」



未来は完全に僕を馬鹿にしていた。



「・・・・お前、ホントにかわいくない妹だよ」


「ホントにダサい兄貴を持っていますから・・・・オホホホ」


「オホホホ、アーオモシロイオモシロイ。で、未来」


「ん?」


「出て、右。22メートル先左折。それからさらに13メートル先の右側の部屋だ。全速力で駆け抜けるからな、しっかりついてこいよ」


「了解」



未来が敬礼のポーズをとった。完全な闇の中、僕は駆け出した。





未来が部屋に入ると同時に照明を回復させる。未来はある機械を使い、非常用のアナウンスを流させる。



“ただいまの停電はコンピュータの信号ミスでございます・・・・すでに修復いたしましたので、ご安心ください・・・・”


仕事を終わらせてから、未来が口を尖らせた。


「人使い荒いんだから、全く・・・・」


「ご苦労、ご苦労!」



僕はここで初めてこの部屋の住人に目をやった。




「おっす、アオ」


僕らを唖然としてみていた3人の一人が激しく反応した。


「・・・・哲!?何であんたが!?」


彼女の名前は日向 葵(ヒュウガ アオイ)。言い訳に使わしてもらった、幼馴染。冷静に彼女の顔を見るとかなりの美形で、スタイルもなかなか・・・・



親父は、僕が月に行きたいって言ったのは葵がいるからじゃないかと本気で疑っていた。






まぁ、少しはそうかな?






「諸事情ってやつ?・・・・そんなことより、今日は葵じゃなくて、日向さんに質問がありまして」


「私に?」


葵の隣の人のよさそうなおっさんが驚いた顔で僕を見た。何度かあったことはあるけど、話すのは初めてだと思う。


彼、日向 政史(マサシ)は葵の父であり、親父の親友であり、元、国会議員であり、現・ルナドームのトップだ。


P・P(ピーピー)って、ご存知ですか?」


「P・P?それは何かの略かね?」


「・・・・そうです。ご存じないんですか?」


「・・・・全く知らんよ。・・・・P・P?People tempted Providenceとか?」



「何ですって?」


僕が聞き返すと、彼はふっとミステリアスな笑みを浮かべた。


「People tempted Providence.・・・・人々は神意に逆らった」


「・・・・そしたらPTPになるのでは?」


「おぉ、確かにな」


「・・・・・しかし、俺はそっちのほうがいいと思いますね・・・・詩的で・・・・では、失礼します」


僕は立ち上がって部屋から出て行こうとした。もう、用事はすんだ。ドアノブに手をかけたとき、日向さんが鼻を鳴らした。


「ふむ、悪くないだろう?で、本当は何の略なのかね?」


僕はちょっと迷ったが、いつかは話さなければならないこと、ドアに向かって吐き捨てた。


「単純ですよ?“Purge Plan”追放計画」


「それは、私のことかね?」


「さぁ、ね。内容を聞きたいからいろんな人に伺ってるんですよ」


では、といって僕は部屋から出た。未来は戸惑いながらもついてきた。




「お兄ちゃん」


「あ?」


「実は内容も知ってるでしょ」


「どうかな?・・・さ、お次は機長にでも会おうかね?」



「「・・・・・・・・は!?」」



未来とは違う声が重なった。振り返ると葵がいた。


「哲、まだ聞いてないよ。何であんたがここにいるのか」


「さぁな」


「・・・・・ふ〜ン・・・・ま、いいわ」


彼女の目がギラリと光った。うん、慣れてきたけどやっぱり恐ろしい。


「・・・・何か問題でも?」


「ルナ・ドーム最初の逮捕者になりそうなだけ・・・・“密入国”“ハッキング”あとそれと・・・・」


「まだあるのか?」


葵はニンマリ笑った。


「私が襲われたことにするとか?」




ダメだ、こいつはたちが悪い。




「・・・・・分かった、ついてこい。・・・・未来。」


「ほいほい」



「悪いがこいつの部屋で待っててくれ」


未来はキョトンと僕を見た。


「・・・・なんで?」


「お前らは一緒にいないほうがいい」




女どもはクスクス笑いあって分かれた。



全くおめでたい。



僕は二人の笑い方に妙に腹が立った。




しばらく歩くと、初めて障害らしい障害にぶち当たった。施錠された扉だ。


「哲、ホントに機長に会うつもり?」


そこで葵が再び聞いてきた。3度目だ。


「あぁ」


「でも・・・・ここでストップね。ロックかかってるよ?」


「へぇ?」



ピ、ピピピ。ガシャン



「何処に?」



唖然とした表情の葵を見るのは実に面白い。









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