第四十二話 それがルールだろ?
盗聴器を握りつぶした直後、“Odin”は難しい顔でこっちを見ていた。
「あいつら、どこまでやれっかね?」
「さぁ、な」
監視カメラを見やると、未来が僕が封鎖した壁を殴りつけて、何か叫んでいた。
次の瞬間、姉貴と“Tarsier”が駆け寄り、その腕を掴んで、引きずり始める。
姉貴は未来を怒鳴りつけ、キッと監視カメラを睨んだ。隠しカメラであるはずのこっちを。
「・・・・・・・悪い、姉貴」
「・・・・・・・アメリカ映画ならよかったのにな」
「何?」
「ほら、アメリカ映画なら、主人公と相棒は絶対死なない。それがルールだろ?」
僕はすぐに反論する。
「いやいや、相棒が死んで、その弔いのために主人公が奮闘するってのがベストだろ?」
「あ、ナルホド!・・・・・・・主人公は俺だよな?」
「バ〜カ!“Loki”の俺を差し置いて何が主人公だよ!」
「あぁ?主人公が“Loki”本人でした〜!なんてオチを誰が期待すんだよ!」
二人して声を出して笑った。が、場違いな笑いは、瞬く間に過ぎ行く。
「・・・・・・・現実は・・・・・・・」
「暗い部屋に二人だけ、“死”を待ってる・・・・・・・」
「・・・・・・・ガスの名前、“Panikhida”は、死者が神の許しを得られるようにする祈りらしい」
ギリシャ語で、“夜を徹して歌う”“徹夜の祈り”。
正教会で、死者のために行う祈りのことだ。
「へぇ・・・・・・・名前の割りに、死に方が汚いな」
僕は頷く。
「だから、観客に退場してもらったのさ」
一瞬の沈黙。
「哲、まだ諦めんなよ?俺等には・・・・・・・」
「“可能性”がある」
そう、穴も穴、大穴でも、俺たちは賭けた。
大逆転のチャンスはある。
「フ!」
「おいおい、鼻で笑うなよ」
「“Odin”、ヒーローなら生き残るさ。だけど、俺達はそうじゃねぇ。だろ?」
「・・・・・・・そうだな・・・・・・」
俺達はまた笑った。後、十数秒だ。
「・・・・・・・せいぜい、“ブッチ・キャシディ”と“サンダンス・キッド”、だよ」
この名前を知っている人は少ないだろう。
あるアメリカ映画の主人公達だ。
“Odin”はラストシーンを知っている。
だからこそ、穏やかに笑って頷いた。
その映画の題名は、“明日に向かって撃て!”
時間だ。
“明日に向かって撃て!”のラストを知っている方でしたら、この意味分かってくださると思います!(多分)
え?“そんな古い映画知らない”って?
“分からない奴の方が多い”?
作者からは二言だけです。
“全員観ろ!”
“そして意味を悟れ!”
後書きにまでお付き合いいただき、ありがとうございましたm( _ _ )m




