第三十九話 この瞬間
この瞬間、日本中に散らばった“Ragnarok”の43名のメンバーが目を光らせ、耳を澄ましていた。
それぞれの目が、“Loki”である可能性がわずかでもある人間を見張っていたのだ。
彼らが必死になって絞り込んだのは47名。
メンバーがまさに影のように彼らに張り付いている。
また、耳は、“ルナ・ドーム”のとある場所に仕込まれた盗聴器が拾う音に注意を向けていた。
43人のメンバーが、
IT企業の技術者の周りを掃除しながら、
有能プログラマーの横で助手をしながら、
悪名高いハッカーと話しながら、
あるウィルスを蔓延させたと噂される男とベッドを共にしながら、
目の前で自分のちらつかせている“餌”に飛び掛ろうとしているかつての盟友を見ながら、
“ルナ・ドーム”の本部のモニターを見ながら、
耳の内部に埋め込まれた、極小のイヤホンの声に耳を澄ましている。
今、まさに電撃が走る。
敵の正体はもう分かったのだ。
全てを繋げたのは、“Loki”候補の一人。
“ 彼 女 ”の“耳”のお陰である。
衝撃からくる一瞬の空白の後、遅れて勝利の喜びがやってくる。
敵はもう、こちらの手中にあるのだ。
少女が言う。
“決まってるでしょ?”
“それは、お兄ちゃんが、“Loki”だっていう、何よりの証・・・・・・・・!”
石井 未来の言葉が、ルナ・ドームの深部で、本部で、日本のさまざまな場所で響く。
当然、正田の所でも。
“石井 哲が“Loki””
正田を含めた、44人が拳を握り締めた。
へ、“予想通り”だって?
知・る・かっ!( ̄ー ̄)
さてさて、突っ走っていきますよ!