表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/71

第三十四話   今度こそ、無理だな

僕はなせる限りを尽くして皮肉っぽく言葉を発した。


「ほんじゃあ、まぁ、そろそろ案内してもらえますかね、“Odin”様様?」


橘は目を細めた。


「おいおい、こっちは大変だったんだぜ?もうちっと“敬意”ってのを示せねぇのか?」


「えぇ?これ以上??」


「・・・・・・・分かった分かった」


「・・・・・・・お兄ちゃん、いったい何を探してるの?ここに軍の機密でもあんの?」


僕は肩をすくめた。


「恐らくあるな。だけど、そいつは“あの”三人の役目。きっとそろそろ見つかる頃だ」


「哲、こっちだ」


橘がもう歩き始めている。僕は歩きながら続けた。


「俺の探しもんは、 俺 か 、 未 来 か し か 探 さ な い も の・・・・・・・」


未来はぴんと来ないようだ。



「姉貴だよ」


後ろで息を呑む音が聞こえた。




―――本部のある廊下



「まったく、何で斉藤が・・・・・・?」


葵が頭をぶんぶん振った。隼は躊躇いがちに呟いた。


「どうでもいいが、やっぱり脱出したほうがいいと思うな・・・・・・」


「だめ」


葵はきつく彼を睨む。


「““South-Pore”を助けなきゃ!”ね。はいはい・・・・・・」


翔もあきらめたように呟いた。



斉藤が自由ということは、南が危険な立場にいることを、火を見るより明らかにしている。


葵は彼の救出を頑なに主張した。後の二人がぼそぼそと、“もう死んでるかもしれない”と言っても、聞く耳を持たず、“じゃあ、私一人で行くから!”と言い放った。



二人もそんなことをさせるわけにもいかず、ついてきている、というわけだ。



「でさ、隼」


「んあ??」


彼はいかにもめんどくさそうに返事をした。


「ちょっと!・・・・・・・ル ナ ・ ド ー ム の 本 当 の 目 的 って?」



隼は言葉を選ぶ間をとった後、重々しく告げた。



「・・・・・・・居住者を殺すのに、核ミサイルは必要ない」


翔の声が掠れた。


「か、核ミサイル??」


「そもそも、“中の人間を殺す”だけなら、ただ、空気の漏れる穴を作るだけでいい」


隼は無表情だった。


「せいぜい使っても細菌兵器だ。というか、それがベストかな。施設も壊れねぇし、“後始末”がしやすい」


葵はごくりと唾を飲んだ。


「でも、核兵器だ。しかも、大きさを考えると・・・・・・・」


「動くな!!!」



今度こそ、無理だな。



隼はぐるりと周りを見渡した。



10人の武装警官じゃあ、さすがにこの娘でも勝てない。



彼はそっと肩をすくめ、ゆっくり手を挙げた。




「おとなしくすんのが無難だよ、お二人さん」


体を硬くしていた二人は隼を見てあきらめたようにため息をつき、彼に倣った。



「あ、そうそう。大きさの話だったね?」



彼は手錠をかけられても、冷静だった。




「ありゃあ、地球の半分はぶっ飛ばせる大きさだよ」




今のところ、この意味を理解しているのは隼一人だ。





少なくとも、今、この場の中では・・・・・・・・・






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ