表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/71

第二十六話  相打ちになろうとも

「・・・・・・・俺が橘だ」


若い男が唸った。周りを囲んでいる連中は驚きを隠せない。


「おいお前ら。こいつらは俺の客だ。余計な手出しするんじゃねぇ」


「はぁ!?」


「そりゃないぜぇ!!」


「マジかよ!?」


野次馬どもが轟々とわめいたが、橘のひとにらみで辺りは静かになった。


「・・・・・・・文句があるなら、俺が相手してやる」


その迫力にほとんどが目を逸らした。しかし、全員がそうしたわけではなかった。


「説明、してもらいたいね」


ひょろっと背の高く、眼鏡をかけた20前後の男が飄々と言った。橘に睨まれても、口元の笑みは消えなかった。


「・・・・・・・・俺がここに送られたのは、正田の野郎に喧嘩を売ったからだ」


「喧嘩を売った?」


「“Loki”という奴と一緒にね」


未来の反応は凄まじかった。電光石火の早業で橘の胸倉を掴み、後ろの壁に押し付けた。


「イテ!!!」


未来は無言のまま、彼の喉に手を当てた。どうやら頚動脈を押さえているらしい。


「お、おい・・・・・・・」


周りの荒くれどもは勿論、橘も唖然としてされるがままになっていた。


「知ってるんでしょ!?」


「あ・・・・・あ?」


困惑している橘に、未来が叫んだ。


「“Loki”の正体だよ!!」


橘は目をぱちぱちさせていたが、だんだんと自分のペースを取り戻しつつあった。未来の手を外しながら、鼻で軽く笑って見せた。


「何を根拠に・・・・・・」


先程の男は、眼鏡を押し上げながら言った。


「あんたがもし、“Loki”とつるんで動いた、“Odin”(オーディン)なら、あいつの正体も知っているはずだ!」


眼鏡の言葉に彼は驚いたように目を見開いた。


「お前・・・・・・何処でその名前を・・・・・!?」


「・・・・・・・もっぱらの評判よ、“Loki”と“Odin”が国家機密を手にしたって」


橘が二人の間からこっちを見た。


「そうなのか?・・・・・・・・哲」


「“Loki”が吹聴してた・・・・・・らしいぜ」


“吹聴してた”から“らしいぜ”というまでの短い間に眼鏡も未来もこっちを振り返った。僕は 三 人 の 顔 を見て溜息をついた。


「おいおい、そんなに睨むなよ」


未来はさっと橘に向き直った。


「で?あなたが“Odin”なんでしょ?」


橘は僕を睨んだまま、鼻から息を出した。


「・・・・・・・そうだ」


「知ってるわよね?」


「ああ」


こっちをじっと見ていた眼鏡が二人の会話に割り込んだ。


「何者だ?」


「細かいことを話す気はない。が、一つ、いい事を教えといてやる」


「・・・・・・・・なによ?」


「・・・・・・・・俺も“Loki”も、本気で喧嘩を売った。相打ちになろうとも、連中の思惑を叩き潰す」


橘が不思議な目をした。僕はそれを見て頷いた。



僕と橘は同時に呟いていた。


「「・・・・・・・・相打ちになろうとも・・・・・・・・」」



僕ら以外がいっせいに顔を見合わせたのが見えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ