第二十三話 ・・・・・・どんだけ?
斎藤は日向夫妻を引き連れ、シャトルから出て行った。
「さてさて、こっちも追いかけなきゃな」
「でも・・・・・お前ら、面割れてんじゃ・・・・・・?」
「斉藤“氏”が、俺たちが反乱分子だと報告しただけだ。 奴 一 人 が 、 ね」
「・・・・・・まさか・・・・・・」
「情報源をぶっ潰したのさ。俺たちは堂々と歩ける。特に南さんはね」
全員に盗聴器のイヤホンを配り、パソコンをバックに入れて立ち上がった。
廊下を歩いていると、イヤホンから斎藤たちの声が聞こえてきた。
“さ、参りましょう。本部までほんのちょっとですよ”
シャトルの発着所はルナ・ドームの本部の中だ。斎藤が言っているのは、おそらく管制室のことを言っているのだろう。
“止まってください”
別の人間の声が割り込んだ。
“ここから先、関係者以外の立ち入りは許可されていません”
“俺たちは“関係者”だ。こちらは日向さん。連絡が入っているだろう?”
“・・・・・それで、キミは?”
“俺は斎藤だ”
“!!・・・・・・・了解した。日向議員、こちらへ”
音から想像すると、日向さんは半ば強引に係員に引っ張られたようだ。
“何をする!?”
しかし、係員はそれを無視した。
“・・・・・・・日向議員を保護しました!“奴”は扉の外です!”
“・・・・・・・そうか! よし、“ザイン”を確保する! お前は日向議員を連れて管制室まで来い!”
“はい! さぁ、行きましょう!”
“な、何事かね?”
“あいつが反乱分子のスパイだという情報が 地 球 か ら こ っ ち に 入りまして・・・・・・”
「流石だな」
声に振り返ると、翔が耳のイヤホンをポン!とはずしていた。
「お前が 地 球 か ら 送ったんだろ?」
「情報の信頼度は、情 報 源 に 依 存 す る・・・・・・じゃあ、南さん」
「ん?」
「こいつで管制室とコンタクト取ってください」
僕は無線機を投げた。
「??何処でこれを?」
「そんなの、あの警備員さんから“貰った”に決まってるでしょ」
「いつ?」
「葵を運んでるとき」
「・・・・・・・どんだけ?」
「まぁ、何でも良いですけど、早く連絡とってくれませんかね?」
ふと機長の向こうを見ると、翔と未来がわざとらしく自分の財布を確かめていた。
「・・・・・・・こちら,機長の南。応答願います」
“南機長!!ご無事でしたか!”
「・・・・・・“協力者”のおかげだ。・・・・・・それより、斎藤からの報告は・・・・・」
“地球から、彼がスパイだという報告が・・・・・”
「・・・・・・そうか、地球から・・・・・」
“今からおいで願えますか?”
「ああ。すぐに行く」
通話が終った。
「流石ぁ!」
未来が両手を叩いた。僕もなかなか驚かされていた。意外な演技力に、だ。
「いやいや、この位はやらないと、ね」
南さんは穏やかに笑い、僕に無線機を投げ返した。
「・・・・・・おかげで大分楽に入れそうですよ」
「そうかい?」
さすがは“South-Pore”。本当にそう思った。
南機長、隼、翔、葵、未来、それに僕。六人は、大きく開け放たれたシャトルの出入り口から出て行った。
僕 た ち は 、 ル ナ ・ ド ー ム に 足 を 踏 み 入 れ た 。