表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/71

第十九話   幸運だったな

―――シャトル




「“Loki”に聞いた、か・・・・・・・」


大男があごをさすりながら呟いた。翔はその口調に含まれた疑わしさを敏感に感じ取り、彼をにらみつけた。機長は翔をなだめるような身振りをしながら尋ねた。



「どういう風に教えてきたのかね?」


「・・・・・・・ただ一言、“向日葵は日向葵だ”って・・・・・・」


周りを取り巻く連中の一人が笑った。


「ハン!お前、それを信じたのか?」


「“Loki”の言葉を信じたから、あんたらはここにいるんだろ?」



笑った男はちょっと身をすくめた。目の前の大男が今度は腕組をして翔を見下げた。



「そういうお前は?」



「・・・・・・・?」



「“Loki”を信じてい・・・・・・」


「・・・・・あ、そういうことか」



翔はかすかに呟いただけだったが、男はぴたっと口を閉じた。



「“Straw”のことだろ?あれは、“Loki”の考えじゃない。知らなかったのか?」



ざわめいた部屋の真ん中で、機長が拳をぎゅっと握り締めたのが見えた。



翔の言葉は続く。



「親愛なる“South-Pore”のお考えなのさ」





「手の内は政府にばれ、向こうは準備万端整っている」





「しかも、政府への“情報提供者”は彼の部下・・・・・・・」






少しずつ、みんなの目が一点に集まっていった。その“一点”の男はまっすぐ前を向き、その視線を受け止めた。



「おい、おっさん・・・・・・ホントか?」





この静まり返った部屋で、機長のすぐ傍に立っている僕が、彼らの視線を集めるのは至極簡単だった。



パチン!




指を鳴らせばよかったのだ。音と同時に皆僕のほうを見た。



「おい、翔。ちょっとそれは、お前にとって“困ったこと”を隠してるようだぜ?」


「何?」




響きと強さは100点満点だ。“自分は何を言われているのか分からない”。そういっているように聞こえる。でも、目はこう言っている。


“お前、正気か!?”




僕は構わず続けた。



「・・・・・・ここに居る方々、“ルナ・ドーム”が何のための施設か、ご存知ですか?」




男たちが互いに言い合った。



「実験施設だろ?」


「人体実験をやろうなんて、一線を越えてるよ」




黙っている何人かは知っているようだ。じとっとした視線を送ってくる。



「・・・・・それすらも、真実ではありません・・・・・・・」





――――――――――――――――




僕が話し終えたとき、部屋は静まっていた。



「・・・・・・だから、計画が無茶だろうと、やるしかないんです」



翔は僕を睨みつけた。


「・・・・・・厳重警戒の中、“Loki”の力も借りず、ルナ・ドームのコンピュータを乗っ取るってか?」


「プラス、先にドームに住み着いた人の救出」


「・・・・・・正気か?ヒーロー願望にとりつかれてないか?」




「大丈夫だ」




機長の確信に満ちた声がした。




「私の考えでは、“Loki”はここに居る」


皆がざわめき、お互いの表情を窺った。




「・・・・・何故ですか?」


「“Loki”がこの計画を知らぬはずも、黙ってみているはずもない。それに・・・・・」


彼は翔をあごで指した。


「いざとなれば、彼がいる」






幸運(ラッキー)だったな、来ていない筈の“Wildcat”が来てくれているんだから・・・・・」






機長は満足そうに頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ