第十七話 決心はついたかい?
―――地球
「おい!そっちはなんか反応あったか!?」
「ダメです!!何にも反応がない!!」
「クソ!!!」
騒然としたコンピュータールームを見下ろし、羽下は溜息をついた。
“ムダムダ。お前らには手におえない代物だよ”
「決心はついたかい?」
「・・・・・・・君のような 犯 罪 者 に全てを託すのは・・・・・・」
「まだ逮捕はされてないぜ?」
「証拠がないだけだろう」
羽下は肩をすくめ、そこから出て行こうとした。その腕を正田ががしりと掴んだ。
「分かった、頼む!」
彼は正田を睨みつけ、忌々しそうに舌打ちした。そしてその手を振り解き、一歩後ろに下がった。
「ちょっと前に言った条件・・・・・・・」
「分かってる、パソコン4台に個室、だな?」
「もう一つ!」
たっぷりと間をおいて羽下が告げた。
「俺を監視したり、指図したりしたら・・・・・・・」
「・・・・・どうなるんだ?」
「・・・・・さぁな?」
羽下がにやりと笑った。正田は内面の恐怖を巧みに隠し、鼻で笑って溜息をついた。そして傍の職員を呼び寄せた。
「おい、あそこのコンピュータを・・・・・」
しかし、羽下が笑いながらさえぎった。
「正田さん、冗談はやめてくださいよ」
「何?」
「あそこのが使い物になるわけないでしょ」
「・・・・・・・」
「多少旧式でも構いませんから、今、完璧にネットワークから遮断されているものを」
正田が職員に問う。
「そんなものあるのかね?」
「倉庫に転がっているものでよろしければ・・・・・」
「よし、確認してみよう」
職員と羽下が部屋から飛び出すと、入れ替わるように一人の男が入ってきた。正田が溜息交じりに聞いた。
「・・・・・“Loki”とは、何者なんだね?」
「・・・・・“Phantom”と呼ぶ奴もいます。ま、警察が安直につけたあだ名ですけど」
「ファントム?“Loki”というのは?」
「それは彼自身が名乗ったんです。システムを盗み見たら、そのコンピュータのデスクトップに“Loki”と大きく書く。ウィルスを送ったら、それが“Loki”と告げるように設定しておく。等等・・・・・」
「なんというか・・・・・・」
「ガキっぽいでしょ?でも、尻尾はつかめませんよ」
「 君 に は 分かっているんじゃないかね?」
彼は肩をすくめた。
「確かに、昔、探したことがありますよ。警察官の立場を使ってね」
「で?」
「性別すら分かりませんでした」
正田がそばの椅子にドカリと腰を下ろした。
「いったい何者なんだ?」
「・・・・・・大臣、ご存知ですか?」
「何を?」
「あいつの被害にあった企業などは洗ってみると 必 ず 何 か 出 て く る んですよ」
正田は目を手で押さえた。
「・・・・・・・洗えば何かしら出てくるさ、この世の中」
「そりゃ、そうですけど、洗う糸口は必要ですよ」
「で?その糸口を“Loki”が提供してくれる、というわけか」
「えぇ、有り難いことにね」
「ここでも、そうなるのかね?」
男は挑戦的に笑った。
「さぁ、どうでしょうか・・・・・・」