第十五話 二人のピエロです
「何を言おうとしているのかね?」
機長は、顔をしかめて僕を見た。
「・・・・・・良いでしょう。はっきりいいますよ?」
「・・・・・・」
僕は廊下を早足で歩きながら続けた。
「この船の乗客の 9 割 が 組 織 の メ ン バ ー ということを知っています・・・・・・あ、それと、南さん」
僕は付け加えた。
「ポーカーフェイスを身につけたほうが良いんじゃありません?」
慌てふためく男を横目で見るのは、面白かったが、先のことを考えるとどうにかしてもらわないと困る。貴重な人材なのだから。
「・・・・・・まさか、私たちの・・・・・・」
「“Straw”でしょ?」
「何の話だ?」
「政府の機関があなた達の計画につけたあだ名ですよ。“藁”ってね」
「・・・・・・藁?」
「溺れるものは藁をもつかむ」
機長はそれきり黙ってしまった。
“ちょっとまずかったかな?”
「まぁ、やるしかないですよ」
機長が力なく笑った。
「種の見えてるマジックを披露しろと?」
「はい」
ついつい、笑ってしまった。
「二人のピエロです」
「君も、かね?」
僕は何も言わなかったが、彼にはそれでよかったようだ。
僕たちはシャトルの集会所の扉の前に立っていた。
「・・・・・・前に聞いたかな?君は何者だ?」
「・・・・・・ごく普通の高校生です」
「・・・・・・最近の高校生はレジスタンスのアジトも知っているのか・・・・・やれやれ・・・・」
諦めたかのように首を振った機長を促し、扉を開けさせた。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
張り詰めた空気に満ちていた。
“やれやれ・・・・・・ちょっと違う連中が入って来たぐらいで殺気立ちやがって・・・・・”
「お二人さん、何か間違えてないか?」
僕の身長は182cm。結構高いほうだろ?そんな僕が見上げてしまうような大男だ。その上、ボディビルでもやってるんじゃないかというほどの体つきで、人を小馬鹿にした笑みを浮かべている。
「何も間違ってないよ」
機長が完璧に冷静さを保っているには驚かされた。
「ここがどこか、君たちか何者か、しっかり分かっているつもりだ」
金属音が鳴り響き、いくつもの銃口がこちらに向けられた。
““怪しんでください”と言わんばかりだな。ブラフだったらどうすんだ?”
目の前の大男も銃を構えていた。銃器類に詳しくないのでよく分からないが、とてつもなくごつい銃だった。
「どういう意味かお聞かせ願おうか」
機長が両手を広げ、周りを見渡した。
「私は“South-Pore”だ」
部屋の中の者がぴたりと止まった。そして、構えられた銃がゆっくりと降りていった。
「・・・・・・待ってましたよ」
声がしたほうを振り返ると、僕ぐらいの身長で、サングラスをかけた男が立っていた。
「まさか機長がそうとは思ってませんでしたが・・・・・・」
「君は?」
「“Wildcat”です」
「え!?」
つい、声が出た。皆が僕のほうを向く。“Wildcat”がサングラスを取った。
「・・・・・・・哲!?」