第十四話 勝手に、ね
―――シャトル
斎藤は一人で操縦席に座っていた。ちょうど、メッセージを送り終わったところだ。
“石井の息子が、このシャトルに乗っている”
このメッセージが届くのは、“Loki”が政府のコンピュータを壊滅させた2分後だ。
本庄が斎藤にとってどうでもいい報告をしに来なかったら、地球の政府の指示が仰げたかもしれないが、もう、遅かった。
“全く・・・・・・日向氏の娘の怪我がどうだったとか・・・・・・別にそんなことに興味はないというのに・・・・・・”
何も知らない斎藤は、“向日葵”“South-Pore”の両人を出し抜いたことで悦に入り、にやけて座席に寄りかかった。
「・・・・・フン・・・・俺の勝ちだ」
そんな独り言さえ口にした。
―――シャトルの個室
「うわ、独り言・・・・・・」
それも独り言だと気付いて、笑いがこみ上げてきた。私もあの“斎藤”とか言うやつと変わらないか。
「まぁ、私は完全にひとりじゃないけどね。ねぇ?議員」
耳にイヤホンをつけたまま、椅子に座ったまま動かない、中年の夫婦に笑いかける。答えはない。
「ぐっすり眠ってる・・・・・・まるで・・・・・・」
自分の一瞬考えた言葉に背筋が寒くなった。こう思った。
“・・・・・・死 ん で い る み た い ”
我に返って、急いで荷物をまとめ、かばんを肩に引っ掛け、部屋を後にした。
部屋は、真っ暗だった。自分がその中にいたと思うと、なんだか気味が悪かった。
―――シャトルのさらに別の場所の廊下
「石井君!!」
僕はぐるりと振り返りながら、人差し指を唇に当てた。
「警備員に見つかったらどうするんです!?」
当たり前だろう?と、いわんばかりに彼が言った。
「・・・・・・また君が何とかするだろう?」
うんざりしてきた。
声にそんな感情がたっぷりと詰まっているのが、自分でもわかった。
「・・・・・・今度はあなたを置いていきますけどね」
「それはそうと、石井君」
全く!ある種の才能だ。僕の感情をここまで無視できるとは・・・・・!
「君はいろいろ知っているかもしれない。だが、一つ教えてやらねば・・・・・・」
ぴんと来た。こいつは・・・・・・
「親父のことですか?」
機長が停止した。見事にぴたりと。普段なら笑っていただろうけど、今はそんな気分じゃなかった。
「知っているんですよ。 あ な た が 思 っ て い る 以 上 に・・・・・・・」
いつの間にか壁を見つめていた。頭が空っぽで、機長の声が聞こえてはいたが、聴いてはいなかった。言葉を聞き流してしまいなんていったのかさっぱり分からなかった。
「え?」
彼は僕の顔をじっと見て、繰り返した。
「・・・・・どうやって知った??」
迷ったが、設計図のことをこの人に話すのは、なんだか気が引けた。
「・・・・・・知るべきことは、知りたくなくても、勝 手 に 耳 に 入 っ て く る もんなんです」
僕は廊下を進みながらもう一度呟いた。
「勝手に 、ね」