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第十話 お出かけ

「俺、今日は大学に行かないといけないからさ。これ食ったら出かけてくるよ」


 俺は皆と朝食を取りながらそう言った。

 居酒屋でアルバイトしているため、普段の俺は起きるのが多少遅いが、大学の講義が1コマからであればきちんと起きる。朝はそんなに苦手でもないんでね。

 今朝は大学に行く用事があり、そのため早めに起き、皆には普段は待たせても申し訳ないため先に朝食をとってもらっているが、俺を含めた5人全員で食事を取っていた。

 しかしやはり、真理亜は良く食べる。牛飲馬食とはこのことか。

 俺の言葉に音把さんが首を傾げた。


「大学……? 学校のことでございますか?」

「うん、そうだよ。ウチの近くに陽真大学ってあるだろ? あそこに通ってるんだ。今は夏休みだから行ってないけどね。ただ今日は、3年生の先輩が研究のための実験に協力して欲しいらしいからね。それで行ってこようかなって」

「研究って何の?」


 俺の言葉に、今度は千代君が首を捻った。

 ああ、そう言えば大学で何やっているかとか、こいつら達には全く話していなかった。

 まあ、聞かれなかったしね。


「そうだなぁ。一言で言えば、心理学だよ」

「心理学? って、あれ? 人間の心が読めるって奴だっけ?」

「いやあ、そう言うもんじゃないよ。そんな簡単に心なんて読めないし、読もうとするもんでもないしね。そう言うのはよく言われるけどさ。確かに出来る人は出来るっていうけど、普通の大学生はちょっと心理学を学んだくらいで人の心は読めないよ」

「そうなんだ」

「そうなんだよ。それでまあ、大学の先輩が心理学の実験をするそうなんだけど、その実験の被験者をやって欲しいらしくてね。だから今日は大学に行こうかと思って」

「うん、そっか。じゃあボクらはお留守番してるね」

「ああ、よろしく」


 そこまで話して俺は朝食を食べ終え、両手を合わせて「ごちそうさま」と言った。

 食器は相変わらずの自動洗浄なのでそのままだ。

 俺は歯を磨き、白地のアロハシャツを羽織ると、左耳にピアスを付け、玄関に向かい車のキーを手にした。

 そのまま、先日業者に頼んで新しく用意してもらったお陰で、綺麗になった戸に手を掛け、


「じゃあ、家のことは頼んだよ!! 行ってきまーす」

「はーい、行ってらっしゃいませ」

「行ってらっしゃーい」


 と音把さんと千代君に言ってから、俺は車に乗り込んだ。

 知り合ったばかりの連中を家に置いていって大丈夫か、と言われると何とも言いがたいが、まああいつらは鍵を閉めていても平然と入ってくる連中だ。

 ならもう気にしたら負けだ。

 あれ、そう言えば狐々さんの返事が聞こえなかったが、答えなかっただけか?


「アタシ車乗るの初めてなんだよな。何だ、このヒモ? こんなの体に巻きつけるのかよ。人間は面倒なことが好きだな」

「ああ、それは安全用のシートベルトだから、必ずつけといて……。って、何でいるんだ? 狐々さん?」


 当然のように助手席に乗り込んできた狐々さんに、俺は嘆息しつつそう言った。

 しかも何故か狐々さんは人間の姿になっている。

 今回は耳も尻尾もない、完全に人型だ。

 そんな姿にもなれたのか。

 俺の言葉に狐々さんは軽く微笑んだ。


「そう言うなって。アタシ、一度街のほうに行ってみたかったんだよな」

「……まあ、いいや。しかしまあ、耳も尻尾もない完全な人間の姿にも慣れたんだな」

「そりゃあな。アタシは妖狐。人を化かすことには特に長けているんだぜ。これくらい出来ないでどうするよ」

「それなら目立たないし、見た目じゃ妖狐だとは分からないな。問題ないとは思うけど、下手に人間離れしたこととかはやらないでくれよ?」

「分かってんよ。アタシを誰だと思ってるんだよ」


 妖怪だよ、と頭の中で呟きながら俺はエンジンをかけ、車を走らせた。

 そのまま10分ほど車を走らせ、俺は大学の構内に入った。

 正直自転車でも良い距離なのだが、俺は暑いのが嫌いなので車で来た。

 帰りに食材も買って行きたいので、荷物を運ぶためと言う意味合いもあるし。


「どうする? 大学まで来てもらったけど、暇でしょ? ていうか何しについてきたの?」

「いやあ、アタシも大学ってのを見ときたくてさ。建物でかくて色んなのありそうじゃん」

「そりゃあ、まあ。色んなものはあるが」


 研究用の機材なんかはあるが、そんなの見てもしょうがないだろうよ。

 狐々さんが何か研究することがあるとも思えないし。

 まあ、彼女が言うなら別に引き止める理由はないので、良いのだが。

 学部棟に入るくらいならいいだろう。


「そうだね。学部棟くらいになら入ってもいいだろうし。他大学の人もサークル関係で来たりするしね。でも、教授の部屋とか資料室とかは色々と貴重なものあるし、あんまり入っちゃ駄目だ。まあ鍵閉まってると思うけど」

「ダーリンがいないときは一応大人しくしてるさ。学食とかもあるんだろ? なんか食べてみたいんだ」

「とは言ってもな。音把さん達のご飯はどうするんだ?」

「朝飯とは別に作っておいてある。腹が減ったら気付いて食べるだろ」


 ……予想通りなんだが、この娘は他の連中に黙ってきたらしい。

 まあ、聖○戦争ならぬ正妻戦争だからな。

 残念なことに俺のサーヴァントは、大分好き勝手やってくれているが。

 お前らは何ガメッシュなんだよ。聞けよ、人の話を。

というかこの娘達はあの手この手で来るし、狐々さんがついてきたのも何らかの策なのだろうか。

しかしこのまま行くしかないか。

 そう思い、俺は教育学部棟、教育心理科の実験室に向かった。




神戸(こうべ)先輩。お疲れ様です」

「お、山本君。お疲れ……。って、その人は誰?」

 

 実験を頼まれた3年生の神戸康人先輩に学部棟で会い、そう問われた俺は、返答に困った。

 聞かれるだろうとは思っていたが、良い返しが思いつかなかった。

 仕方ないので、やはり親戚か何かで誤魔化すしかないか。

 似ていないので無理がある気もするのだけれど。

 

「ええと、この娘は僕の親戚の――」

許嫁(いいなずけ)ですっ!」


 そう言って、狐々さんはこれまでに見たこともないくらいに朗らかな笑みを浮かべて、俺の腕に抱きついてきた。

 ……え?


「……え?」


 先輩の目が点になっている。

 そりゃそうだ。

 俺だってそうだもの。

 こいつ……、今なんて言った?


「はじめまして! アタシは狐々秋葉と言います。実はアタシと斜郎君は遠い親戚に当たりまして、親同士の仲が良いんです!! アタシ達も小さいころから友達だったので、自然と仲良くなったんですよ!! それをきっかけに、アタシ達を許嫁にしようって、両親が決めたんです!!」


 俺の腕に抱きついたまま、狐々さんはそう言い放った。

 つーかお前、丁寧語使えたのかよ。

 そっちにも驚きだわ。

 一人称は変わらないけど。

 しかし――この状況はまずい。非常にまずい。

 親戚であり、昔馴染みという設定だけ残し、うまい事やらねば。


「いやいやいやあ、狐々さん。何言ってんの? 俺らはそんな関係じゃないじゃん。精々年に一度会うかどうかくらいの関係だったじゃん」

「それは大きくなってからでしょ。小さいころは何度も遊んだじゃない!! それに――最近は、同棲してるでしょ? ね、ダーリン」


 狐々さんは軽く照れた表情で、上目遣いでそう言った。

 その綺麗な唇からは、鋭く尖った肉食獣の牙が見えていた。

 ――コイツ!! 俺の周囲の人間にアピールすることでッ!! 既成事実を作ろうとしているのか!!

 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、という言葉のように、俺の周囲から攻め、俺が拒めないようにする算段だったのか。

 ウカツ! この程度のアンブッシュを見抜けぬとは。

 しかし、この程度の事態を切り抜けられない俺ではない!!


「おいおい、同棲じゃなくて同居だろ。日本語はしっかりしようぜ」

「何言ってるのよ。毎日……あんなに、激しくしてるのに」

「俺バイトで夜いないこと多いし、お前は離れに住んでるよね」

「あはは! だから言ったでしょ? 毎『晩』じゃなくて……。毎『日』だって」

「そうだね。まあ派手にゲームしてるからね」

「うん、ちょっとエッチな……二人の体を使ったゲームだね」

「使ってねえよ。現実見えてる? 大丈夫? 頭蓋骨の中にちゃんと脳入ってる?」

「もう、ダーリンってば。確かにアタシも人前でイチャイチャしちゃったけど、そんなに照れなくて良いじゃない!!」


 コイツ手強いな。

 ああ言えばこう言う、とはこのことか。

 俺だってそうだが。

 因みに先輩はこれまでに見たことがないような苦笑いを浮かべている。

 先輩には、俺がこれまで彼女も好きな女子も出来たことがないことは教えている。

それなのに、俺がこんな女の子をいきなり連れていればそりゃあこんな表情になるだろう。

 

「えー、と。結局2人は付き合っているの?」

「はい! 一生添い遂げ――」

「いえ、親戚です」


 先輩の問いに笑顔で応えようとしていた狐々さんの言葉を塞ぎ、俺は話を切り上げることにした。

 これ以上話していても疲れるだけだ。


「まあ神戸先輩、とりあえず実験しませんか?」

「え? ああ、そうだね。そうしようか」

「じゃあ、狐々さん。ちょっと実験行ってくるから待ってて」

「むぅー。仕方ないわね。じゃあ、待ってるわよ」

「あ、金ある? 学食でコーヒーくらい飲めるから、行っといで。はい、小銭渡しとくよ。腹減ったら先にメシ食っててもいいから」


 俺はポケットからレザー製の可愛らしい猫型小銭入れを取り出し、適当に何百円か狐々さんに渡した。

 流石にお金の使い方くらい知っているだろう。

 コンロも使えたし。


「はーい、じゃあ待ってるからね。ダーリン!」


 元気よく手を振りながら去って行った狐々さんを見つつ、神戸先輩がいぶかしむような視線を向けてきた。

 うおっと。流石に気になるかな。


「お前……、あんな可愛い娘どうしたんだ?」

「いやあ親戚が今、家に来ていてですね。まあその関係で来てるだけです。あの娘はああやって僕をからかうのが好きなだけですので、気にしないでください」

「ああ、まあ。お前に彼女が出来るとも思ってないけどさ」

「先輩、ひょっとして僕のこと馬鹿にしてません?」

「いや、そんなことはないさ」


 先輩は俺から目を逸らし、口笛を吹いてごまかす。

 いまどきそんな方法で誤魔化される奴はいないよ。

 別に良いけどさ。

 しかし結局先輩は狐々さんが俺の恋人ではなく、親戚であると判断したらしい。

 俺への信頼と言うより、俺に彼女が出来るはずがないと判断したらしい。

 なんと言うことだ。

 自分のキャラを考えれば仕方ないかもしれないが。

 大分アブノーマルな性癖していたからなあ。

 実際に、そう言うのが現れると抵抗感あるけどね。

 抵抗と言うか、そもそもそういう目では見れない。

 狐々さんとかは、やっぱり人間よりケモノに近いし。

 そこらへんはまあいいか。

 何はともあれ実験を済ませよう。

 幸いなことに30分もあれば終わるらしいし。

 ロールシャッハテストとかは一時間か二時間くらいはかかるからな。

 そう思い、俺は先輩と共に実験室に向かった。




「ごめぇん。待った~?」

「……え? 何それ。きもッ!!」


 実験を終えた俺は、軽い気持ちで『待ち合わせ場所に来たバカップルの彼女ごっこ』をしたのだが、想像を絶して冷たい目が帰ってきたのでもう二度とやらないことを誓った。

 大体、「きもッ!!」は無いでしょ。

 メンタルが砕けるかと思ったわ。

 しかし、狐々さん。なんだか機嫌が悪いみたいだな。むすっとしているようだ。

 1人でコーヒー飲んでただけに見えるが。……妖狐ってコーヒー飲むのか? 別良いか。

 周囲を軽く見渡して気付いた。

 ……ああ、視線か。

 狐々さんは美人だ。

 妖狐としての姿も美しいが、アレは人とは違うベクトルの美しさだ。妖狐の彼女は、人間としての美しさよりも、森の中で生きる獣としての気高さ、美しさといった言葉がふさわしい。

 一方、人間の姿に化けている時は、凛々しい女性という感じだ。

妖狐としての体毛と同色である金髪、金眼、整った目鼻立ち、その上で元がケモノだからか余計な脂肪も無い細身の体であり、和装が良く似合う。

 そりゃあ、そんな女性がいきなり現れたら皆注目する。

 ウチの大学の規模は小さくないし、留学生も大勢いるので、金髪美人くらいはいるのだが、和装メイド服なんて着ていれば余計に目立つからな。

 周囲の人間からちらちら見られているようだ。

 視線というのは案外気付くものだ。

 特に狐々さんは妖狐なだけあって勘が鋭いからな。

 いい気分はしなかったのだろう。


「……狐々さん。もう出ようか」

「……うん」


 学食も夏休みだから人がいないと思っていたのだが、昼時が近づいてきていたこともあり、部活やサークルで大学に来ていた人達が食事を取りに集まっていたようだ。

 俺達はさっさと学食を後にした。

 昼飯はまたどうにかしよう。とりあえず、ここから離れた方がいいだろ。

 そのまま駐車場に向かおうかと思ったのだが、そこで厄介な男に出会ってしまった。


「さ、……山本。誰だその女」


 どさり、と何かを取り落とすような音と共に、そんな声が俺にかけられた。

 聞き覚えのある声だった。

 俺は頭を掻きながら、声の主を確認した。

 そこに居たのは、俺の良く知る人物、というか小学校時代からの腐れ縁の友人、夕立(ゆうだち)紀正(のりまさ)だった。


「ああ、チノか。いやあ、これはだなあ……」


 言いよどみながら、俺は夕立紀正――通称チノの顔を見る。

 端正な顔立ちに黒縁眼鏡、高い背丈と中々格好いい見た目の男だ。

 コイツは俺とは比べものにはならない残念系男子だが。

 見た目だけなら俺よりもはるかに良いのだが、こいつは俺以上にこじれ方がややこしいんだよなあ。

 なんと言うべきか悩んでいたところで、狐々さんがまた猫をかぶって、いや狐が化けてとでも言うべきか、とにかく営業スマイルを浮かべて前に出た。

 先ほどまで仏頂面であったのに、ここらへん強かだなあ。

 

「はじめまして。アタシは狐々秋葉です」

「ど、ども。夕立紀正です。あの、あなたはシャロとどういう関係なんですか?」

「はい……許嫁です」

「ごふぁっ!!」


 狐々さんの言葉に、チノは喀血した。

 あたりに真っ赤な血がぶちまけられ、狐々さんの足元にまで鮮血が広がった。

 狐々さんはぽかんとした表情でその様子を見ていた。

 ああ、やっぱりこういうことになったか。

 びっくりした狐々さんの顔面白いから、それが見れたことは良かったが。

 というかこの展開を見越して狐々さんの邪魔をしなかったんだが。


「シャ……シャロ。お前、それマジか?」

「許嫁って程でもないけど、同棲しているな」

「あべしっ!?」


 今度はチノの鼻から血液が噴出した。

 うわあ、すごい。

 狐々さんは小刻みに震えながら血をぶちまけるチノを見ている。

 まあ、こんなにぽんぽん血をぶちまける奴もおるまいよ。


「じゃ、そう言うわけだから。俺らもう行くぜ。ほら、狐々さん。行こうぜ」

「え!? コイツいいの!? このままで!?」

「いいよいいよ」


 立ち尽くしたまま、口と鼻からぼたぼたと血を垂らすチノを置いて、俺達は車に向かう。

 このままチノで遊びたい気もするが、これ以上血をぶちまけると周りに迷惑だ。

 さっさと2人で車に乗り込み、俺達は出発し、そのまま大学を出ようとした。


「待ぁてぇえええええ!!」

「きゃあああああああ!!」


 口と鼻から血を流しつつ、チノが高速四つん這いで追いかけてきた。

 俺としては、化け物のような生命力を持つあいつのことなので、これくらい予想していたが、狐々さんは追いかけるあいつを見てガクガクと震えている。

 だってもう、動きがホラー映画に出てくるゾンビなんだもの。

 高速四つん這いとか頭沸いてるとしか思えん。

 それでも、車に追いつけはしない。

 俺はアクセルを踏み込み、発進した。


「貴様ああああああ!! 許嫁ってどういうことだああああ!! お前、俺と一緒にニューハーフ風俗で童貞捨てるって話はどうなったああああああああ!!」

「いかねえよ!! 俺はそこまで男の娘に浸かってねえって言ったろ!!」


 これがアイツの拗らせたところだ。

 男の娘エロ漫画に始まり、エロゲにもどっぷり使ったあいつは、リアルでもニューハーフにしか興奮できないというどうしようもないものになってしまった。

 俺の場合、多少変態なくらいなのだが、アイツは完全に駄目だ。

 どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!! としか言いようが無い。

 なんせアイツは同じサークルのビッチからベッドに誘われても「チ○コつけて出直して来い」と一言で切りやがったからな。

 もうどうにもなんねえよ。

 しかしまあ、予想に反し、チノは歩道を高速で突き進み、車を追いかけてきやがった。

 なんなんだよ。も○のけ姫のタタ○神か何かか、アイツは。

 意味が分かんねえ。


「貴様あああああ!! 許さん!! 許さんぞ!! 貴様だけそんな美人となんてエエエエ!! 俺だって可愛い男の娘とお付き合いとかお突きあいとかしたいわああ――ぐふ!!」


 だがそれまでだった。

 チノは俺の車のほうを見ていたため、正面の街路樹に気付かず衝突し、そのまま止まった。

 気を失ったらしい。

 まあアイツは体が頑丈だから、問題ないだろ。


「……あの、ダーリン? アイツは良いの?」

「うん、いいよ。昔からああだから。ああ、あとまあ。君は俺の周囲の外堀から埋めようとしたみたいだけどさ。俺の周囲の人間にはああいう変態を突き詰めたような連中がいるから。気をつけてね? 下手すると俺の家に全裸に靴下だけの男達がリンボーダンスしに来るから」

「どういう状況だよ……。ハァ、やっぱり無理か……」

「え? 何がだい?」

「……何でもねえよ」


 狐々さんはつまらなさそうな表情で窓の外を眺めていた。

多少は懲りてもらおうとあのド変態を炊きつけてみたが、ちょっとショックが強すぎたのだろうか。

 悪い事したかな。

神戸先輩はまともなんだが、俺の同学年の友人は狂人だらけだからなあ。

 まあ、ちょっとしたお詫びだ。


「よし、じゃあ。狐々さん」

「ん? なんだよ?」

「ちょっと出かけようか」


 俺はそう言って、アクセルを踏み込んだ。


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