東方Project二次小説[魔法少女になりたくて]
「…魔法少女をしましょう!」
幽々子の発言に場が一瞬固まる。ここは冥界にある屋敷白玉楼。ひと仕事終え、居間のこたつでひと段落していたときのことであった。
「…まず理由を聞こうか。」
片手で頭を抱えながらため息交じりに問いかける。
「幻想郷には魔法少女が少ないと思わない?」
「俺からして見れば全員魔法少女なんだが。空飛んでるし。」
「それに、幽々子様は魔法少女がどのようなものか知ってるんですか?」
同じこたつを囲んでいた妖夢が続いて質問する。
「紫に聞いたわ〜。すっごくふりふりしてて可愛いんですって。」
「ふりふり…可愛い…」
妖夢が一瞬ぼーっとした顔をし、俺はそれを見逃さなかった。
「…妖夢はなってみたいのか?魔法少女。」
にやつきながら妖夢を見る。とっさに妖夢は顔を背けた。
「な、何でもありませんっ!」
「とにかくだ、幽々子が魔法少女になるってのは、その、…難しいんじゃないか?」
「あらどうして〜?なりたいのよぅ〜…」
幽々子がこたつの天板に両手を突き、身を乗り出す。距離が縮まり、反射的に顔を反らす。
「い、いやそれはその…体型的に…ちょっと…魔法少女じゃないというか…」
「むぅ〜、魔法少女はハートが大切とも聞いたのに〜。…ダメ?」
さらに距離が縮まる。接近してくる表情や強調された胸部で視界が遮られる。
神理「駄目というわけじゃ無いがその、いろいろと、危なっかしくてだな…」
「そこをなんとかっ!」
息がかかる距離だった。俺はとっさにこたつを脱出し部屋の一角に避難した。
「いやまて、俺に許可を貰う必要は無いだろ!?」
「あっ、それもそうね〜」
幽々子が元の位置に戻る。それと同時に俺も座りなおす。
「…ほっ」
何を心配していたのか、安堵する妖夢。
「というわけで妖夢ぅ、衣装お願いね?」
「わ、私にはそんなふりふりしたものは作れませんっ!」
妖夢は顔を赤くしながら叫ぶように言った。
「うーん、どうしましょう〜?」
「衣装が手配できないのなら、この案件は無しで、」
「衣装なら用意してるわよ?」
こたつの空きスペースにスキマが開き、靴を脱いだ道士服の八雲紫が現れる。そのまま座り、四人で囲んだ形になった。
「うわ出た…」
「人をおばけみたいに言わないでよ」
「いや似たようなものじゃ痛って!」
乾いた音を立てながら、扇子で頬を叩かれてしまった。
「さすが紫、わかってるぅ〜♪」
そんな悲劇目もくれず、満面の笑みを浮かべる幽々子。
「…まさか紫も着るのか?」
「え?当然でしょ?」
「新たなる異変、か…」
「えっと…今なんて?」
紫が満面の笑みで問い返す。だがその笑みには一瞬とも目を逸らせない、殺気めいたものが含まれていた。
「…何でもないです」
しぶしぶ答えた。これ以上本音を言うと確実に殺される。
「解ればよろしい」
紫は勝ち誇った表情で微笑んだ。
「あ、あのっ!私の分は?」
「着たいのか?」
頬杖をつきながらぶしつけに問いかける。
「あっ、いえそのっ、ちょっと興味があるだけで…」
「もちろん用意してあるわよ、幽々子のお世話いつもありがとうね」
「…やたっ」
誰にも聞こえないような声でつぶやきながら、小さくガッツポーズをする妖夢だったが見ていないことにした。
「まあほどほどにしておけよ。じゃあおれは帰、」
「あら、貴方の分もあるのよ?」
「へ?」
悪寒を感じたが、すぐに足が動かなかった、周りの空間がスキマによって外界と遮断されており逃げられない。
「ちょ、ちょっと待て、俺男だからそんなの似合わないから無理ー!」
「大丈夫よ、最近の衣装は男性サイズもあるし。『大丈夫だ、問題ない』って言うでしょ?」
「問題ありまくりなんですけど!くっ、動けん!」
不気味な空間が覗くスキマに包囲され、身動きが取れない
「そうね、貴方が着てもきっと可愛いわよ〜?」
「うふふ、さてお着替えしましょうねぇ〜?」
「ひっ、く、来んなっ、やめっ、ああああああああああああああああっ!!」
魔法少女は、ハートというよりパワーだと悟った俺は、もう考えるのをやめた。
「ぶぇぶしっ!…誰だ、あたしのうわさをしてる奴は。」
その時、一人の魔法少女がくしゃみをした。
初投稿です。pixivに載せていたものを色々修正しました。
男主人公の視点で観ていただければ幸いです