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95 そんな事より、一応懐中時計と斧の方を確認しないと。持ち込めてはいるんだろうが、ちゃんと機能しているかどうかを……

 意識が回復するのと同時に、視界に見慣れた光景が飛び込んで来る。

 教室の左後方……窓際の席から目にする、授業中の一年三組の光景だ。


 夏服を着ている生徒達の背中越しに見えるのは、黒板を背に教壇で授業をする、白いブラウスに黒いパンツという出で立ちの伽耶。

 窓からの陽射の強さは、昼下がりを思わせる。


(――授業中か)


 初めて入る黒き夢の夢世界で、初めて目にする光景が見慣れた教室だった事に、慧夢は安堵する。

 学校が夢世界の舞台となっている可能性が高いと思っていたからこそ、慧夢は夏服の制服を着た幽体となったのだから。


 慧夢は即座に自分の足元を確認、靴は……教室内なら上履きの筈なのに、青いスニーカーだ。

 青いスニーカーを見て、慧夢は安堵しつつ、心の中で呟く。


(教室の中にいるのに、上履きじゃなくてスニーカーを履いているって事は、上手い具合に幽体の装備のまま、夢世界の中の俺と入れ替われたみたいだな)


 幽体の慧夢が夢世界に入った時、夢世界の中に夢世界が作り出した慧夢が存在しない場合(慧夢を知らない人の夢世界に入る場合は、大抵これ)、慧夢は夢世界に既に存在するキャラクターの誰かと入れ替わったり、それまで存在していなかったキャラクターである慧夢自身として、夢世界に出現する。

 エドナの夢世界に入り、奴隷のキャラクターと入れ替わったのは前者であり、素似合のレズハーレムや、大志と話す志津子の夢世界に入った場合は後者だ。


 夢世界が作り出した慧夢のキャラクターが、元から存在する夢世界に、慧夢の幽体が入った時は、慧夢の幽体は元から存在したキャラクターの慧夢と入れ替わる形で、夢世界に出現する。

 絵里や志月の夢世界に入った慧夢は、このパターンといえる。


 元から夢世界に存在したキャラクターと入れ替わる形で、慧夢の幽体が夢世界に出現した時、慧夢が入れ替わったキャラクターが、夢世界で主要な役割を演じるキャラクターである場合、慧夢は入れ替わったキャラクターの服装や装備を受け継いでしまう。

 エドナの夢世界で、奴隷役のキャラクターと入れ替わった時の様に。


 入れ替わったキャラクターが主要な役割で無い場合は、入れ替わったキャラクターの服装や装備を受け継いだり、受け継がなかったりする。

 ただ、慧夢が強い意志を持って、幽体に着せた服装や装備させた物などは、主要では無い……いわゆるモブキャラと入れ替われた場合は、持ち込める可能性が高いのだ。


 今回、志月の夢世界の中に出現した慧夢は、元から存在した自分のキャラクターと入れ替わった。

 教室にいた自分のキャラクターは上履きを履いていた筈だが、今の自分が幽体の時に履いていた青いスニーカーを履いているのを、慧夢は確認出来た。


 つまり、幽体の服装を夢世界に持ち込むのに成功したと、慧夢は判断した訳である。

 教室内で上履きではなく、青いスニーカーを履いている自分を見て。


 実は幽体になる際に履く靴を、上履きにするかスニーカーにするか、慧夢は迷ったのだ。

 スニーカーを選んだのは、夢の鍵が陽志である可能性が高く、対人戦闘を行う事を想定し、足に馴染んだ動きやすい靴を、夢世界に持ち込みたかったが故。


(ま、モブキャラである俺の足元を気にする様なキャラは、この夢世界の中にはいないと思うけど、いるならいるで……下駄箱で上履きゲットすればいいだけか)


 幽体の慧夢と入れ替わる形で、夢世界が作り出した慧夢が消滅した時点で、消滅した慧夢が履いていた上履きは、下駄箱に戻っている可能性が高い。

 外履きの靴を履いた慧夢と入れ替わった為、夢世界が自動的に辻褄を合わせて、慧夢が上履きに履き替えなかった状況に、夢世界自体を調整してしまうのである。


 ただし、そういった辻褄合わせの調整が起こらない夢世界も存在する。

 辻褄など合わないのが当たり前みたいな、出鱈目な夢も多いので。


(そんな事より、一応懐中時計と斧の方を確認しないと。持ち込めてはいるんだろうが、ちゃんと機能しているかどうかを……)


 青いスニーカーを履いている時点で、懐中時計と斧の持込みにも、成功している確率が高い。

 だが、持ち込めているだけで安心せず、ちゃんと機能しているかどうかも確認しなければならないと考え、慧夢は確認作業を開始。


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