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74 どんな方法だったの? その永眠病にかかってる人を、眠りの世界から呼び覚ます方法って?

「――でも、籠宮さんが永眠病だって噂が、本当じゃなくて良かった」


 安堵したといった感じの演技をしつつ、慧夢は話を続ける。


「その噂が本当なんじゃないかと思える様な噂が、今日……じゃなくて昨日、インターネットで流れていたもんだから、籠宮が永眠病だって噂は本当なんじゃないかと思って、心配してたんです」


「それって、どんな噂なの?」


「帝都大学の大学病院に入院していた末期ガン患者が、昨日永眠病で死んだっていう噂ですけど」


 慧夢の話を聞いて、志津子の表情が再び強張る。

 帝都大学や末期ガン患者、昨日永眠病で死んだ……などという、慧夢が口にしたキーワードに、志津子は明らかに反応して見せてしまったのだ。


(あのインターネットの書き込み、本当だったみたいだな)


 掲示板の書き込みを見た時、夢世界の中で志津子が言っていた、睡眠障害の専門家の大学が抱えているという「志月と同様の症状の患者」とは、帝都大の永眠病患者なのではないかと考えた。

 志津子が「帝都大学」などのキーワードに反応したので、慧夢は自分の考えの正しさに自信を持つ。


「帝都大学の大学病院に勤務しているって人が、ネットの掲示板に書き込んだ話が、噂の出所。その人が、『籠宮総合病院に女子高生の永眠病患者が一人いる』って感じの事も、書き込んでたんです」


 実際は、「埼玉県の川○市にある総合病院」に、「女の子の患者が一人いるらしい」という感じで、はっきりとした固有名詞は出していなかった。

 話の「らしさ」を高める為に、慧夢が吐いた嘘だ。


「学校だけじゃなくて、ネットでもそんな噂が流れてたもんだから、その女子高生の永眠病患者っていうのが、籠宮さんなんじゃないかって思ったんです。まぁ、根も葉もない噂だったのなら、何よりですけど」


「――そんな噂が」


 衝撃を隠せないといった風に、志津子はぼそりと呟いてから、慧夢に問いかける。


「そのネットの掲示板っていうのは、どこのネットサービスなの?」


 日本最大と言われる掲示板サービスの名前を、慧夢は口にする。


「ああ、あの匿名掲示板ね。余り使った事無いんだけど、そんな情報まで流れる掲示板なんだ」


 志津子はポケットから、スマートフォンを取り出す。

 慧夢が言った掲示板のスレッドを、確認しようとしているのだ。


「あ、もうそのスレッド……掲示板の板は、見れないと思いますよ。俺が見た時に、もうスレッド……落ちてましたから」


 スレッドが落ちるという表現が理解出来ない志津子に、慧夢は掲示板のスレッドは、一定の時間が過ぎると見れなくなる事を教える。

 掲示板の話には、一部嘘を混ぜていた為、掲示板を志津子に今見られるのは、慧夢からすると拙いので。


「もう見れないんだ……。他にどんな事が書いてあったか、知りたかったんだけど」


 残念そうに呟きつつ、志津子はスマートフォンをポケットに戻すと、慧夢に訊ねる。


「ねぇ、他にどんな事が書いてあったか、覚えてる? 覚えてるなら、教えて欲しいんだけど」


(――これは、上手い流れかもしれない!)


 慧夢が志津子から引き出したい情報を得るのに、都合が良い流れに展開出来そうな話を、志津子本人が振ってくれたのは、慧夢からすれば幸運であった。

 慧夢は心の中でガッツポーズを取りながら、志津子の問いに答える。


「チルドニュクスを買っちゃったけど、どうしようって話や、永眠病にかかってる人を、眠りの世界から呼び覚ます方法とか……ですね、覚えてるのは」


 事実と嘘を織り交ぜた慧夢の言葉を聞いて、志津子は驚きの表情を浮かべる。


「永眠病にかかってる人を、眠りの世界から呼び覚ます方法?」


(よし、食い付いた!)


 志津子の表情と口調から、慧夢は自分が仕掛けた罠に、志津子が引っかかったのを確信する。

 実は、「永眠病にかかってる人を、眠りの世界から呼び覚ます方法」などという話は、掲示板には無かった。


 慧夢が志津子から欲しい情報を得る為、釣りの餌として混ぜた嘘だ。


「その方法で永眠病の人を治したとか言う奴が、掲示板に書き込んでたんですけど、永眠病自体が実在しないなら、その方法ってのも実在しない……デマなんだろうね」


「それは、そうなんだろうけど……どんな方法だか、少し興味があるな」


 少しどころか、かなり興味が有りそうな表情で、志津子は慧夢に頼む。


「どんな方法だったの? その永眠病にかかってる人を、眠りの世界から呼び覚ます方法って?」


 狙い通りの志津子の反応に、慧夢は心の中でほくそ笑みつつ、その方法について話し始める。


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