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63 ――って、そんな事今はどうでもいいわッ! 問題はどうやって救急センターに通報するかだ!

 途切れていた意識が戻った慧夢の耳は、優しげなクラッシックの音色を聴き取る。

 眠るのに向いていそうだと思い、眠る前にスマートフォンで流しっ放しにしていたプレイリストの曲だ。


 幽体離脱してから、すぐに肉体に戻る羽目になったので、眠ってから殆ど時間は過ぎてはいない。

 目を開けて時計で時間を確認すると、午前一時三十四分。


 思考も次第に明確になり始め、自分が置かれている状況とやらなければならない事を、慧夢は思い出す。


「――救急車、呼ばないと!」


 慧夢は枕元のスマートフォンを手に取ると、音楽の再生を停止。

 通話モードに切り替えて、119に連絡しようとするが……思い留まる。


「いや、その前に場所をはっきりさせないと!」


 慧夢はベッドから起き上がると、部屋の灯りを点けて、机の引き出しの中にしまっておいた、籠宮総合病院の場所を調べる時に使った地図を取り出す。

 北側郊外の辺りを調べて、志月の父親がいる道路を探すが、それが何処だか慧夢には分からない。


 ヒントとなるのは、霊力切れで意識を失う前に見た籠宮総合病院の建物と、青く光っている看板らしきもの。


「――あの看板の色は、見覚えあるな。結構街のあちこちで見た覚えがあるから、たぶんチェーン展開してる店。しかも、真夜中で看板光らせてるとなると、コンビニにファミレス、ファーストフードとか……ん、コンビニ?」


 コンビニという言葉から、慧夢は思い出す。

 志月の父親の近くに落ちていた、コンビニエンスストアチェーン……ファミリーストアの袋を。

 その袋にプリントされているマークの色は、目にした看板と同じ色合いの青。


「ファミストだ! 籠宮の親父さんはファミストに買い物に行った帰り、病院に戻ろうとして、あそこで事故ったんだ!」


 慧夢は早速、ファミリーストアを地図の中から探し出そうとするが、その地図にはコンビニの店舗名までは載っていない。


「ファミストのサイトで店舗情報見れば、大雑把な場所が分かる筈!」


 慧夢はスマートフォンを操作してネットに繋ぎ、ファミストのサイトを検索して表示。

 川神市の店舗情報のページに表示された地図を確認する。そして、驚き……焦りの表情を浮かべる。


「川神市北側郊外付近だけで、三店舗もあんのかよ?」


 地図上の川神市の北側郊外付近には、ファミリーストアの位置が三つ表示されていたのだ。

 当然、どれが慧夢の探す店舗なのは、地図を見ても分からない。


「集中出店方式とかいうんだっけ? 商品の配送効率を良くする為に、コンビニチェーンは近くにまとめて、店を出すとかいう……」


 過去にニュース番組か何かで知った知識を思い出し、川神市北側郊外に同じコンビニチェーンが、三店舗も出店している理由を、慧夢は推察する。


「――って、そんな事今はどうでもいいわッ! 問題はどうやって救急センターに通報するかだ!」


 具体的な場所が分からないのに、救急センターに通報して救急車を呼べるのかどうか、慧夢は考え込む。

 救急車を自分で呼ぶのは初めての経験なので、怪我人がどこにいるのか分からない状況で、救急車を呼んでも来て貰えるのかどうかが、慧夢には分からない。


「どこだか分からないのに、救急車って呼べるのか? 場所ははっきりしていないと、悪戯と思われて、救急車は来ないんじゃないか? 場所くらいは自分で、ちゃんと探し出してから呼ばないと、駄目なのかも?」


 色々な疑問が浮かんで来るが、答など出ない。

 ただ考えているのは勿体無いとばかりに、慧夢はポールハンガーにかけてあったジーンズを素早く穿くと、スマートフォンを片手にして部屋を出る。


「――とりあえず、志月の親父さんが倒れている場所を探しながら、考えよう!」


 慧夢は階段を駆け下りて玄関で靴を履き、ドアを開けて外に出る。

 そして、門の内側に置いてある自転車を道路に出すと、慧夢は夜の街の中に自転車で漕ぎ出した。

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