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47 や、やめろ! BLにヒゲは不要だ! 特に鼻じゃなくて顎のヒゲは!

(夢の中なら経験あるけど、リアルじゃ無いから……伽耶先生相手でも照れるな)


 うっかり入り込んだ他人の淫夢で、キスどころでは無い経験を現実同様の感覚で、慧夢は経験しているのだが、それとリアル……現実での話は別。

 リアルでは殆ど経験が無い為、どうしても照れてしまうのだ。


(――さっきのヘッドロックとかプロレス技の方が、身体は近かったというか、触れてたんだし、それに比べれば身体が触れてない分、恥ずかしく無い筈なんだけど)


 そう自分に言い聞かせてはみるのだが、恋愛的な意味が無いプロレス技とは違い、いわゆる壁ドンのポーズには恋愛的な意味がある。

 そのせいでプロレス技より、慧夢は伽耶を女性として意識してしまい易く、恥ずかしさを感じてしまうのを避けられない。


「夢占、様子変だぞ? 何かあったのか?」


 慧夢の様子が、普段と違うのを察した伽耶は、顔を覗き込んで問いかける。


「いや、ほら……顔近いから、恥ずかしいじゃん」


「え? ああ何だ……それか」


 何か別の心当たりでもあったかの様な、伽耶は微妙に意外そうな表情。


「恥ずかしいって事は、夢占ってあたしの事を、ちゃんと女だって意識してるんだ? ちょっと意外だな」


 女としての自尊心をくすぐられたのか、伽耶は茶化す様な口調ではあるが、嬉しそうに表情を緩ませている。


「慧夢は女慣れしてないから、女に近寄ると過剰反応するんだよ。今年の正月も、初詣の時……」


 慧夢と伽耶の話が聞こえていた五月が、会話に割り込んで来た。


「その話それ以上続けたら、お前のBLマンガの美少年キャラに、全員スクリーントーンで青々としたアゴヒゲの剃り跡処理するからな」


 伽耶やBLM研究部の部員達の前で、知られたら困る過去の汚点の話を、五月にされそうになった慧夢は、五月を睨み付け強い口調で牽制する。


「や、やめろ! BLにヒゲは不要だ! 特に鼻じゃなくて顎のヒゲは!」


 本当にやられたら堪らないとばかりに、五月は慧夢の正月の話を止める。


「まぁ……ともかく、何かあった訳じゃないなら、別にいいんだが」


 正月の話が気になるのか、五月の方を一瞥してから慧夢に目線を戻し、伽耶は言葉を続ける。


「今日は夢占、朝から様子がおかしかったからな。何か悩み事でもあるのか、心ここに在らずといった感じで」


 伽耶の言う通り、今日の慧夢は普段とは明らかに様子が違った。

 睡眠不足のせいもあるが、睡眠不足の原因となった疑問について、慧夢が一日中思い悩み続けていたせいだ。


 ホームルームと授業を一つ担当しただけだが、伽耶は慧夢が普段通りでないのを察していた。

 その上で心配し、理由を訊ねるタイミングを探っていたのである。


 悩み事……という伽耶の言葉に、慧夢は表情を僅かに硬直させてしまう。図星だったせいだ。


「――あるみたいだな、悩み」


 慧夢の僅かな表情の変化を読み取り、伽耶は慧夢に悩みがあるのを確信する。


「いや、まぁ……悩みって程のもんじゃないけど」


 やや気まずさを覚えた慧夢は、誤魔化す様な口調で続ける。


「色々と考えても答が出ない疑問が、有るだけの話で」


「そういうのを、悩みって言うんだよ」


 当たり前だと言わんばかりの口調で言い切ってから、伽耶は慧夢に問いかける。


「――で、どんな疑問なんだ? 人に話したくないたぐいの疑問なら、別に無理に訊いたりはしないけど」


 疑問を持つ切っ掛けとなった、志月や永眠病……夢芝居などに関する事は話せない。

 だが、慧夢が頭を悩ませている疑問、「自ら死を選んだ他人を、命を賭してまで死から救うべきなのか?」については、話しても構わないと思えた。


 むしろ、大人である伽耶なら、その疑問にどう答えるのか、慧夢は知りたいとすら思った。


(命を賭してまで……の部分は、変に勘繰られたら困るから、除いた方がいいかな。大げさな話になっちゃうかもしれないし)


 そう考えた慧夢は、「「命を賭してまで」の部分を除いて、自分が思い悩む疑問を、伽耶に打ち明ける。


「『自ら死を選んだ他人を、死から救うべきなのか?』っていう疑問なんだけど」


 先程とは逆に、今度は伽耶が表情を硬直させる。

 その程度に、普段の慧夢のキャラクターからは、意外に思える疑問だったのだ。


 意外に感じたのは、伽耶だけでは無い。

 近くにいたので、慧夢の言葉が聞こえてしまった五月や、他のBLM研究部の部員達も、意外そうな表情を浮かべていた。

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