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176 出来れば、マッドなマックスの映画に出て来る改造車みたいに、格好良くしたかったけど、部品も足りないし……俺の技術じゃ無理か

 その文房具店「岡本文具」は、川神学園の生徒達が良く利用するので、志月も現実世界で使っていた可能性が高いと推測し、慧夢は籠宮家へのアタックの合間に、岡本文具を訪れた。

 すると、慧夢の推測通り、岡本文具の店内は、現実通りとはいかないが、かなり現実に近い形で、再現されていたのである。


 ちなみに、慧夢が利用している双眼鏡は、岡本文具のショーウインドウに飾られていた物。

 現実世界の岡本文具のショーウインドウにも、天体望遠鏡と共に双眼鏡が飾られているのだが、夢世界の岡本文具にも同じ物があったので、拝借して利用していたのだ。


 ハンヴィーの強奪後、慧夢はハンヴィーを修理する道具を調達する為、岡本文具に向った。

 すると、ハンヴィーの修理に使えそうな、接着剤やビニールテープなどの文房具だけでなく、ガソリンの着火に使えそうなマッチまでもが、岡本文具の店内には置かれていた。


 数年前に亡くなった、先代の経営者の時代には、今はショーウインドウに改装されている店頭の一部に、煙草屋が併設されてた。

 経営者が息子の代に変わってから、煙草屋は閉められたのだが、煙草屋の名残りなのか、マッチやライターがレジの近くで売られているのだ。


 現実世界で、慧夢も岡本文具は利用していた為、文具だけでなくマッチやライターが入手可能なのではないかと、期待していたのだが、その期待は叶えられた。

 使えそうな文房具に加え、マッチやライターなども持ち出して、慧夢はサービスステーションに移動し、ハンヴィーの修理を開始した(ちなみに、岡本文具にマッチやライターが無ければ、凍った領域にいる、煙草を吸っているモブキャラクターから、慧夢はマッチやライターを奪うつもりだった)。


 修理を始めた慧夢は、皹が入っている窓を、斧で全て叩き割った。

 そして、近くの道路から掻き集めてきた、道路の側溝に嵌められている、スチール製の格子状の蓋を使い、窓枠の外側と内側に接着剤で固定し、更にビニールテープで徹底的に補強。


 すると、ハンヴィーの窓は刑務所の窓の様に、鉄格子が嵌められた感じになった。

 皹が入った窓ガラスよりは、遙かに車外が見易いし、スチール製なので防御能力も高い。


 サイドミラーは修理しても、すぐに破壊されてしまうだろうから、慧夢は修理をしなかった。

 窓の視界が一応は回復したので、バックミラーが使えるだけでもマシだろうと考えた上で。


 フロントガラスは無事だったので、外側にだけ側溝の蓋を接着剤で貼り付けて、ビニールテープで補強。

 内側にも蓋を貼り付けようとしたのだが、左右や後方の窓と違い、フロントガラスから前方が見辛くなり過ぎるのは、運転に支障をきたすだろうと判断し、内側には貼らなかった。


 ボンネットの上には、モブキャラクターに乗られて、フロントガラスに攻撃されるのを避ける為に、一面に接着剤で画鋲を貼り付けた。

 忍者が使っていたという、撒菱まきびしの様なものだ。


 荷台の手すりの部分や、窓の部分に設置した格子状の蓋などにも、慧夢は画鋲を接着剤で貼り付けまくった。

 モブキャラクターが荷台に乗ろうとしたり、窓を塞ぐ格子状の蓋を、引き剥がそうとするのを妨害する為に。


 更に、それでも窓が破られた場合、モブキャラクター達からの攻撃を防ぐ為、木製の画板を五枚重ねて貼り合わせ、取っ手を付けた手製の盾を二つ作り、助手席に用意。

 ステンレス製の百五十センチの長い定規も、武器として使えるかもしれないと思い、慧夢は助手席に置いた。


 着火用のマッチやライターも、慧夢は制服のポケットの中に、それぞれ二つずつ忍ばせてあるが、ハンヴィーの運転席のグローブボックスにも、慧夢は幾つか放り込んでおいた。

 ガソリンに着火する際、マッチやライターを奪われる可能性もあるので、予備は必要だと考えたのである。


 ハンヴィーの荷台には、既にガソリンの入ったドラム缶が二つ積まれている。

 手すりに画鋲を貼る前に、まずは空のドラム缶を積んだ上で、ガソリン計量器のホースをドラム缶に伸ばし、給油したのだ。


「出来れば、マッドなマックスの映画に出て来る改造車みたいに、格好良くしたかったけど、部品も足りないし……俺の技術じゃ無理か」


 軍用車両のミリタリー感が台無しになり、かなり間抜けな見た目になったハンヴィーを眺めながら、慧夢は呟く。

 改造車という言葉を口にした通り、慧夢がハンヴィーに施したのは、修理というよりも改造と表現した方が、相応しいのかもしれない。


 愚痴りつつも、それでいて満足気にハンヴィーの姿を確認し終えた慧夢は、ポケットから懐中時計を取り出す。

 現実世界の現在時刻を、確認する為に。


 六月十五日午前五時十二分を、懐中時計は示していた。

 ハンヴィーを強奪し、修復改造の為の道具調達を終えた頃に、十五日を迎えていたので、五時間程かけて完全徹夜で、慧夢はハンヴィーの修理……改造を終えた事になる。


 完全徹夜とはいっても、夢世界の中にいる慧夢に、睡眠の必要は無い。

 食欲同様に、睡眠欲も覚えはするのだが、眠らなかったからといって、現実世界の様に問題は起こらないのだ。


 暫く堪えていれば、眠気はいずれ消えてしまう程度のものでしかない。

 修理と改造に没頭し続けた慧夢は、既に眠気など覚えてはいなかった。




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