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162 屋敷だけでなく、北側住宅街ごと放火しまくって、火の海にするというのはどうだ?

 火矢による放火という考えから、過去にドラマや映画、ニュースなどで目にした放火犯に関する記憶が、慧夢の頭の中に甦る。

 灯油缶やガソリンタンクなどで、家屋敷の周囲などに、灯油やガソリンなどを撒いて気化させてから点火する、放火犯の手口が。


「ちゃんと家屋敷を燃やすなら、灯油やガソリンなんかの可燃性の液体を大量に撒いて、ある程度気化させてから火を点けないと駄目か……」


 可燃性の液体なら、サービスステーションにガソリンが存在するのを確認済み。

 だが、幾ら考えてみても、遠距離からガソリンを屋敷に大量に撒く方法が、考え付かない。


 小さな容器にガソリンを積めて投擲したり、ポンプとホースを使って放水するが如く、ガソリンを撒く方法なども、一応は考えてみた。

 だが、どちらも大した距離は飛ばせないだろうと、慧夢は考える。


「屋敷だけでなく、北側住宅街ごと放火しまくって、火の海にするというのはどうだ?」


 北側の住宅街の各所に放火して大規模火災を起こし、籠宮家の屋敷まで延焼させる方法を、慧夢は検討してみる。

 だが、志月に都合が良い形では、現実と違う部分もあるが(通信障害など)、基本的には現実に限りなく近い夢世界で、それは無理だろうと慧夢は結論付ける。


 現実世界の川神市でなら、籠宮家まで延焼する程の大規模火災に至る前に、消防車が駆けつけて消火してしまう筈。

 夢世界でも同様の結果になるだろうと、慧夢は考えた。


「――結局は屋敷まで近付いて、ガソリン撒いて放火するしか無いか」


 これまでの志月の夢世界における経験から、志月は夢世界において、モブキャラクター達を一定の範囲で、意志のままに動かせはするが、人や物は常識的なレベルの能力しか発揮出来ないと考えている。

 常識的なレベルであるからこそ、自動車による追跡の、田畑を利用した妨害が可能だった訳であるし。


 当然、この夢世界に消防車は存在するが、消防署から瞬間移動できたりはしない。

 リアルに道路を走って来るので、最短でも籠宮家まで十分程度の時間はかかる筈なのだ。


 燃え易い木造の屋敷、ガソリンを大量に撒いた上で気化させて点火すれば、破壊相当のレベルまで燃やせる可能性は高い。

 屋敷内にガソリンを撒いて気化させる事が出来れば、爆破すら出来る可能性もある。


 大量のガソリンを持って、籠宮家の屋敷まで何とかして辿り着く。

 そして、ガソリンを撒き散らして気化させて放火、屋敷を燃やすか爆破する形で破壊する方向性で、慧夢の次なる策は固まり始めた。


「まぁ、仮に屋敷が夢の鍵でなかったとしても、屋敷まで辿り着けたのなら、籠宮の兄貴とコンタクトする方向に切り替えればいいか……」


 仮に屋敷が夢の鍵で無かったとしても、屋敷まで辿り着けたのなら、そこには陽志がいる筈。

 その場合は柔軟に、陽志からの情報収集に切り替えるという、二段構えの策だ。


「問題なのは、どうやって大量のガソリンを運びながら、屋敷まで辿り着くかなんだよな……」


 大量のモブキャラクター達が守りを固めて以降、慧夢は籠宮家に辿り着けてすらいない。

 だからこそ、陽志と接触が出来ずに情報を入手出来ていない為、手詰まりの状況が続いているのだ。


「籠宮の兄貴から情報を得るだけより、ガソリン運ばなきゃならない分、むしろ難易度は上がる訳だし」


 大量に運ぶなら、自動車に頼らざるを得ない。

 だが、自動車による過去の突入は、全てが失敗に終っていた。


「ガソリン大量に運ぶとなると、タンクローリーかトラックだけど、タンクローリーはバスと同レベルの大きさだろうから、俺には運転自体が無理か……」


 既に失敗に終ったバス同様、タンクローリーは大型車両なので、自分の運転技術では、籠宮家の屋敷まで辿り着くのは、まず無理だと慧夢は判断する。

 同様に、大型のトラックも、操縦の困難さ故に選択の範囲外だ。


「大型じゃないトラックなら運転出来るけど、そういうトラックじゃパワーが足りなくて、モブキャラ連中に止められちゃうんだよな」


 津波の様に押し寄せるモブキャラクター達を、突破するのに必要なパワーがある自動車は、車体が大き過ぎて運転が難し過ぎる。

 でも、運転出来る大きさの自動車では、モブキャラクター達を押し退けるパワーが足りない。


 あちらを立てれば、こちらが立たずといった風な問題に、慧夢は頭を悩ませる。


「俺の運転技術でも、運転出来るくらいの大きさで、大型車両並のパワーがある車があればいいんだけど。そんな都合の良い車、ある訳がないか……」


 屋敷を破壊するのではなく、陽志と接触する為に策を練った時にも、慧夢は同じ問題に頭を悩ませた事があった。

 運転技術の問題から、バスでの突入に挫折した後の事だ。


 その時は、そんな都合の良い車について、慧夢は思い付けなかった。

 だが、今回……慧夢の思考は、前回とは違う方向に向いた。


 元々が、ゾンビを倒すFPSやTPSなどのシューティングゲームに、現在の状況を擬えて、ロケットランチャーでモブキャラクターを一掃したり、屋敷を吹っ飛ばせたらという考えから、慧夢は屋敷が夢の鍵である可能性に、思い至ったのだ。

 つまり、慧夢の頭の中には、その類のゲームに関連する思考や記憶に、繋がり易い状態にあったのである。


 結果、バスでの突入に挫折した時とは違う答を、慧夢の頭は出す事が出来た。




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