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161 ここまで敵の数が多い場面だと、こんな豆鉄砲じゃなくて、マシンガンやショットガンどころか、フィールドにロケランくらいは落ちてるもんな、ゾンビゲーなら

「ここまで敵の数が多い場面だと、こんな豆鉄砲じゃなくて、マシンガンやショットガンどころか、フィールドにロケランくらいは落ちてるもんな、ゾンビゲーなら」


 慧夢は再び双眼鏡を覗きながら、拳銃を引き金に、双眼鏡をターゲットスコープに見立てて、ロケラン……ロケットランチャーで、北側住宅街を狙う風なポーズを取る。

 双眼鏡の中に映し出される、多数のモブキャラクター達を狙い撃ちする感じで、慧夢は拳銃の引き金を引く。


 無論、金属音が響くだけで、弾切れの拳銃からは弾など出ない。

 壊れた場合と違い、消耗した物は、基本的には復活しないのだ(ただし、夢世界の維持に必要な物は、復活する場合もある)。


「ロケランがあれば、あんなゾンビ紛いの連中、一掃出来るのに」


 ロケットランチャーを撃つ真似をしたせいで、双眼鏡の向きがずれ、慧夢の視界に籠宮家の屋敷が入って来る。

 双眼鏡がターゲットスコープの様に、屋敷を捉えた感じだ。


「――いや、モブキャラどころかボスキャラの籠宮を、屋敷ごと吹っ飛ばせるか」


 ゲームに擬えた軽口で、偶然に呟いた言葉。

 その言葉に、慧夢は引っかかる何かを感じる。そして、夢世界の中で目にした、屋敷の中で家族と幸せそうに過ごしていた、志月の姿を思い浮かべる。


 陽志と会話を楽しみながら、ダイニングキッチンで夕食の準備を整える志月。

 両親や陽志と共に、幸せそうに会話を楽しみながら、夕食を食べる志月。


 そして、湯船に浸かりながら、上機嫌でアイドルポップスを歌う志月……。

 夢世界に入るまでに慧夢が抱いていた、堅くて真面目過ぎて、キツイ性格の少女というイメージとは、全く違う志月の姿を、慧夢は目にしていた。


 両親との関係は、兄である陽志程には良くは無いというのが、夢世界に入る前の情報収集からの、慧夢の推測だった。

 だが、夢の中で目にした志月の家族との関係は、悪いどころか良好過ぎる程。


 慧夢が夢世界で目にした志月の姿や、両親との関係などが、現実通りであるのか、それとも志月が抱いている願望が反映されているのか、慧夢には分からない。

 だが、志月にとって陽志だけでなく、両親を含めた家族が大切な存在であり、家族で過ごす屋敷も、大切な場所であるのは、夢世界で志月を覗き見た慧夢には伝わっていたのだ。


「そうだ、あの屋敷自体が……籠宮にとっては大事なんだから、屋敷自体が夢の鍵だったりするのかも? いや、でも屋敷というか……建物って大き過ぎるし、夢の鍵になるのか?」


 慧夢は夢占秘伝での、夢の鍵についての説明を思い出す。

 だが、人や物の制限はなく、宝物の様に大事な存在といった程度の説明で、大きさに関する記述は無かったのを、慧夢は思い出した。


「建『物』というくらいだから、一応は『物』扱いにして良いのかも……」


 長い間、手詰まりだった状況にいた慧夢にしてみれば、新たなる夢の鍵の候補について思い付いたのは、その状況を打開し得る、歓迎すべき事だといえる。

 無論、屋敷を「物」に含めるのは、慧夢自身も強引過ぎるかもしれないとは思うのだが、何せ他には現状、夢の鍵の候補が思い当たらないのだ。


 他に思い当たらない以上、屋敷自体が夢の鍵の候補であり、それを破壊しようと慧夢が考え始めるのも、無理は無い。


「――屋敷が夢の鍵では無かったとしても、屋敷の中に夢の鍵があるのなら、まとめて破壊出来る可能性もある。悪い手じゃないぞ、屋敷が夢の鍵だという前提で、屋敷ごと破壊するという手は……」


 双眼鏡のレンズ越しに、籠宮家の屋敷を眺めながら、慧夢は呟き続ける。


「それに、他に夢の鍵候補も思い付かないし、とりあえず屋敷を破壊する方向で、策を練ってみるか」


 慧夢は意を決しつつ、双眼鏡の向きをずらし、屋敷の周囲の様子を視認する。

 屋敷を守り続けている、ゾンビの如き多数のモブキャラクター達の姿が、慧夢の目に映る。


「でも、破壊するにしても結局、問題なのは屋敷に辿り着く方法なんだよな。ロケランみたいに遠距離から屋敷を破壊するのは、どう考えても無理そうだし……」


 戦場を舞台とする夢世界なら、そんな武器が存在する可能性はあるが、この夢世界はリアルな川神市を舞台としている。

 そんな威力が高く射程の長い武器など、存在する訳も無い。


「火矢が届く距離じゃないし、それくらいの火だと、届いても簡単に消されるか……」


 武器が無いなら、自作する手もある。

 だが、夢世界で入手可能な素材で自作出来る、遠距離攻撃が可能な武器は、慧夢は弓矢くらいしか思いつかなかった。


 弓矢なら火矢を飛ばして、屋敷に火を放てるが、弓矢の射程距離では、凍り付いた領域から屋敷を攻撃するのは無理。

 だが、凍っていない領域の中に、ある程度まで足を踏み入れた上で、モブキャラクター達の攻撃をかわして、屋敷に放火する程度の事なら、出来るかもしれない。


 だが、多数のモブキャラクター達に守られた屋敷の場合、火矢を数本撃ち込んだ程度では、モブキャラクター達どころか、志月にすら消火されてしまう可能性が高い。

 火矢程度では、屋敷を火事で破壊するのは無理だろうと、慧夢は考える。


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