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15 いやあああああああああああああああああ! やああああああめえええええええてえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!

「――開けなさいと言ってるでしょ!」


 厳しい口調で叱責しながら、エドナは慧夢の鼻をつまむ。


(い、息が……出来ない!)


 夢の中でも、息が出来ないのは苦しいので、呼吸が出来なくなった慧夢は、口を開く羽目になる。

 大きく開いた口から、息を吸い込む。


 その隙を、エドナは見逃さない。開いた慧夢の口の中に、バラ鞭の柄を突っ込み、口を閉じられなくしてしまう。


「あ……あいおうるひあ?」


 バラ鞭の柄が邪魔するせいで、慧夢の言葉は意味不明の呻き声に化ける。

 ちなみに、「な……何をする気だ?」と、慧夢は問いかけていたのだが。


 不安げに見上げる慧夢を見下ろしつつ、エドナは口を閉じていた。

 口の中で何かをしているらしく、もごもごと頬が動いている。


(嫌な予感しか、しないんですけど……)


 悪寒に背筋をざわつかせている慧夢の顎に、エドナは左手を伸ばす。

 そして、顎を掴んで、強引に慧夢の顔を上に向ける。


 閉じられぬ口を、上に向けられた慧夢の視界に、口を閉じたまま嫌な笑みを浮かべている、エドナの顔が映る。

 慧夢は前屈みになったエドナに、顔を覗き込まれているのだ。


 三十センチ程の距離まで、エドナの顔が近付いて来る。

 美人の外人女性の顔が近付いて来る状況は、それだけなら思春期の少年としては、胸が時めく何かが起こりそうなシチュエーションと言えなくも無い。


 でも、口の中にバラ鞭の柄を突っ込まれている状態、そんなロマンチックに胸が時めく何かが起こる事など、慧夢には予想すら出来ない。

 胸が時めくというより、嫌な予感と不安のせいで、心拍数が上がると表現する方が、明らかに正しい状況。


 そして、その嫌な予感と不安が当たったのを、慧夢は悟る。

 閉じていた口をエドナが開き、開いた口から、だらーりと垂れ下がってきた唾液を目にした瞬間に。


 エドナが自分に、唾液を飲ませようとしているのを、慧夢は理解したのだ。


(いやあああああああああああああああああ! やああああああめえええええええてえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!)


 心の中で上げた叫び声が化けた、悲痛な呻き声を上げながら、慧夢は必死で頭を動かし、垂れて来る唾液を避けようとする。

 でも、顎を押さえるエドナの力は強く、慧夢は頭を動かせない。


 そして、粘度が高いのだろう、糸を引いて垂れ下がって来ていた唾液の糸が、ぷつりと切れる。

 唾液の塊が……落ちて来る、慧夢の口の中に。


 べちょっ!


 嫌な……とても嫌な感触と生温かさを、慧夢の舌は感じる。

 限度を越えた気色悪さに、全身の毛が悪寒で逆立ち、肌が粟立つ。


 好きな女の子とキスを交した結果として、口の中に入って来る唾液なら、むしろ好ましい位なのだろう。

 でも、見知らぬ他人の、しかも変態的なプレイとして、だらーりと垂らされた唾液を飲まされるのは、他人の噛んだガムを口の中に放り込まれ、無理矢理噛まされるレベルで気持ち悪いと、慧夢は思う。


 もっとも、他人の噛んだガムを噛んだ経験など、慧夢には無い。

 あくまで、同じ系統の気持ち悪い行為として、慧夢が頭に思い浮かべただけである。


 舌の上に落ちた唾液が、じわりと口の中に広がり始める。

 せめて、これ以上口の中を、エドナの唾液に汚されたくは無いとばかりに、慧夢は唾液を吐き出そうと試みるが、バラ鞭の柄が邪魔して、吐き出すのは無理。


 しかも、上を向かされている為、唾液はどんどん、喉の方に向って垂れて行く。

 慧夢自身の唾液と混ざり、喉の方に唾液は流れて行く。


(ちょ……ちょっとタンマ! 止まれ、止まれってバカ!)


 唾液の流れを止めようにも、バラ鞭の柄が邪魔をして、舌をまともに動かせない現状、慧夢は何も出来ない。

 心の中で空しく祈り、叫ぶだけだ。


 そして、とうとう唾液は口の奥……喉の辺りに辿り着く。

 すると、嚥下えんげ反射(喉の辺りまで来たものを、飲み込んでしまう反射)が起こり、意志とは無関係に、エドナの唾液を……ごくりと慧夢は、飲み込んでしまう。


(ぐええええええええええええ! 飲んじまったあああああああ!)


 苦悶の表情を浮かべつつ、苦しげな呻き声を上げる慧夢を見下ろし、エドナは満足げな笑みを浮かべる。

 明らかに精神的ダメージを受けたのを、慧夢が表に現しているのを目にして、嗜虐的な快楽を得ているのだ。


「ご褒美は、気に入って貰えたみたいね」


 サディステッィックな笑みを浮かべつつ、エドナは続ける。


「どうやら君は……唾液プレイとか、体液系のプレイを楽しむのに、良さそうな奴隷って事なのかな」


(気に入ってもいないし、唾液プレイとか体液系のプレイとか、人生で一切……関わり合いになりたくない、一般人ですけど! 何か無茶苦茶な思い違いをしちゃいませんか? この変態唾垂へんたいつばたらし女!)


 慧夢は言葉にならない呻き声を上げながら、心の中でエドナに文句を吐きまくる。


(つーか唾液プレイは、今みたいな唾飲ませるSMのプレイなんだろうけど、体液系のプレイって何なのよ? 他にもあるの? いや、どんなプレイとか、知りたくないよ! 知った時には俺……ろくな目に遭ってない感じの、嫌な予感しかしないもん!) 


 結果として、その嫌な予感は唾液の時と同様、今度も当たる。エドナの言う所の体液系のプレイというのを、エドナにされてしまう事によって……。


    ×    ×    ×





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