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134 マウンテンバイクにすりゃ良かったな、どうせ奪うなら!

 必死でペダルを濃ぎ、自転車で歩道を疾走する慧夢は、背後から響いて来る喧しいエンジン音を耳にして、振り返り様子を確認。

 津波の様に迫って来る自動車の群を目にして、慧夢は驚き焦る。


(ゾンビみたいなの倒した後はカーチェイスって、洋ゲーやハリウッドのB級映画かよ! こっちは自転車だから、正確にはカーチェイスとは言わないのかもしれないけどさ!)


 好んでプレイするゲームや、たまに見る映画などで目にした様なピンチが続く状況に、慧夢は心の中で愚痴る。

 ゲームや映画なら痛みなどは感じないが、夢世界では痛みも感じるので、ゲームや映画の様にピンチを楽しむ訳にはいかない。


 だが、慧夢としては何よりも、慧夢自身が夢世界の中で殺されたところで、志月の意志と無関係に復活する事を、この場面で志月に知られるのを避けたいのだ。

 何故なら、慧夢が復活する事を志月が知ってしまえば、慧夢が自分を邪魔出来ない様に、殺さずに拘束したり監禁するなどして、行動不可能な状態にするに違いないだろうから。


 殺されるよりも、行動出来ない状態にされる方が、慧夢にとっては目的を果たす為の行動をとれなくなる為、まずいのである。

 故に、この場で殺される訳にも捕まる訳にもいかず、慧夢としては逃げ切るしかないのだ。


(やばい、このままじゃ追いつかれる! どうすりゃいいんだ?)


 迫り来る自動車の群を目にして、慧夢は焦りながらも打開策を模索。

 慧夢は辺りを見回し、自動車の追跡を逃れられる逃げ道を探す。


 そんな慧夢の視界に入るのは、幹線道路の周囲に広がる畑と、その向こう側にある田んぼばかり。

 市の校外に広がる田畑の中を突っ切る幹線道路なので、当たり前といえば当たり前の光景。


(そうだ、あそこまで行けば!)


 歩道の左側に目をやった慧夢は、自動車の追跡をまけるかも知れない可能性がある、逃げ道の存在に気付く。

 そして、すぐさまハンドルを左に切り、慧夢は畑の中に突入。


 本来は緑なのだろうが、夕陽に照らされているせいで、薄紅色のボールの様に見えるキャベツが並ぶ畑は、土にハンドルを取られるので、慧夢の乗るシティサイクルでは走り難い。


(マウンテンバイクにすりゃ良かったな、どうせ奪うなら!)


 心の中で愚痴りながら、畑の合間にある作業用の細い畑道はたみちを、慧夢は目指す。

 畑道は舗装されてはおらず、荒れてはいるが普通に走れるので、慧夢はキャベツ畑を走り抜けて畑道に上がると、稲が水面の様に風にそよぐ田んぼを目指して、自転車を走らせる。


 畑に逃げた慧夢を自動車が追うには、ガードレールという障害があるのだが、百メートル以上先にはガードレールが途切れ、自動車が畑の方に向う事が出来る農道がある。

 慧夢を追う自動車の半分は農道を目指して先に進み、残りの半分はガードレールに体当たりを始める。


 交通事故が起こったかの様な、鈍い金属音を響かせながら、二台の乗用車がガードレールに体当たりを繰り返し、ガードレールを飴細工みたいに折り曲げながら、押し倒してしまう。


 ガードレールを押し倒した、フロント部分が凹み、ライトのカバーが砕けている二台の乗用車を先頭に、五台の自動車が畑の中を突き進み始める。

 だが、自転車同様にハンドルを土に取られるし、キャベツを踏んだタイヤは滑ってしまう。


 追い駆けて来た車の中にオフロードカーは無かったので、畑を普通のスピードでは走れないのだ。

 しかも畑道の太さは、小型のトラクターがギリギリ走れる程度の幅しかないので、自転車と違って自動車は走れない。


 結果、ガードレールを倒して畑の中を走って来た五台の車は、次第に慧夢から引き離され始める。


(よし! これで後は……農道の方に行った車だけだ!)


 自転車を走らせながら振り返り、ガードレールを押し倒して追い駆けて来た五台の自動車を、引き離し始めたのを視認した慧夢は、右側を向いて状況を確認。

 慧夢の右側……百メートル程離れた辺りの農道を走り、慧夢を追い続けている五台の自動車の姿が、慧夢に目に映る。


 農道を走る自動車は、既に慧夢を追い抜き始めている。

 自動車が向う先では、農道が田んぼの手前で丁字路になっていて、丁字路を左折すれば農道が、慧夢が自転車で走行中の、狭い畑道に辿り着く。


 当然、丁字路で自動車達は、次々と左折を開始。

 田んぼがある方向に向かって突き進む慧夢の前に、モブキャラクター達は回り込むつもりなのだ。




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