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13 おやぁ? まだお仕置きが足りないのかな? そんな目してるよ……君

 インターネットのアダルトなサイトで、そんな風なファッションの女性を、慧夢は目にした事があった。

 興味本位で見たSM系の動画や画像に、そういったボンデージファッションの女性が出て来ていたのを、慧夢は思い出す。


 夢の主であるエドナが手にしている、先が複数に分かれている短い鞭も、そういったSM系の動画や画像に出て来る、Sの側の女王様などが、使っていた物と同じだった。


(SMの女王様みたいな格好してるし、今……俺の事を、奴隷スレイヴって言ったよな?)


 ボンデージファッションに身を包んだ、女王様然としたエドナの姿と、自分が奴隷と呼ばれた事の意味が、慧夢の頭の中で繋がる。


(――要するに、この夢世界で俺が与えられた役って、SMプレイの奴隷かよ!)


 慧夢が導き出した答は、正しかった。身体を拘束しているのは、柱と木枷が組み合わされた、いわゆる晒し台。

 過去の西洋で罪人を晒す為に使用されていたのだが、今ではSMプレイで、Mの方の身体を拘束する為に使用されている物だ。


 口の中にあるのは、ゴルフボールを空洞にした感じの、穴だらけのボールギャグ(ボール型の猿轡さるぐつわ)という、SM道具。

 鞭はウイッピングという鞭打ちプレイで使われている、バラ鞭。

 打撃の威力が複数の革紐に分散される為、ダメージが少なく、初心者向けの鞭と言われている。


 慧夢は改めて、自分の置かれた状況を確認する。

 目に映るのは、抜ける様な青空に、その空に負けぬ海の青、白い砂浜という、南国のビーチらしい景色。


 暖かな潮風が吹き、夏の陽射が肌を焼く砂浜の上で、ボンデージファッションに身を包んだ女王様に、身体を拘束されボールギャグを噛まされ、SMプレイの奴隷にされている……。

 それが、夢世界の中における、現在の慧夢の状況。


(南国のビーチで、SMプレイだぁ? ミスマッチにも程があるだろ! このエドナとかいう外人女、どんだけおかしな夢、見てやがるんだよ? 変態か? 変態なのか?)


 慧夢はエドナを睨み付ける様な目で見上げながら、心の中でエドナへの文句を叫び続ける。


(青い空と海の下なら、泳ぐなりサーフィンするなり、もっと他にやる事あるだろ! 何で奴隷相手にSMプレイなんて、おかしな夢になるんだよ? お前はカキ氷にシロップじゃなくてポン酢やラー油かけて、ギョーザのタレみたいな味にして、個性をアピールするタイプの勘違いバカか?)


 夢の世界が、現実の感覚からすれば、何かがおかしいのは、別に珍しい事ではない。

 現実では有り得ない様な夢など、有り触れているのだから。


 だが、おかしな夢に慣れている慧夢にとっても、美しい南国風のビーチと、秘めた密室で行われているイメージのSMプレイには(あくまで慧夢のSMプレイに対する認識においての話だが)、繋がりが無さ過ぎて、ミスマッチ過ぎる様に思えたのである。


「奴隷の分際で、随分と反抗的な目付きを、してくれるじゃないか」


 前屈みになり、エドナは慧夢の顔を覗き込む。

 豊かな胸が、ワンピースの胸のラインから、こぼれ落ちそうになる。


「ご主人様を、そんな目で見て、良いとでも思っているのかい?」


 そう言いながら、バラ鞭を手にした右手を、エドナは振り上げる……サディスティックな笑みを浮かべながら。


しつけの足りない奴隷には、お仕置きが必要だねぇ!」


(いや、この目付きは普段通りで、反抗的でもなんでもないの! お猿のアイアイが目付き悪いからって、悪魔の使い扱いしてた、地元の人達みたいな真似止めて! お仕置きとかマジいらないってば!)


 慧夢は心の中で、声を上げる。

 心の中同様の事を喋りたいのだが、ボールギャグのせいで、慧夢の口から漏れるのは、意味不明の呻き声ばかり。 


 そんな慧夢に、エドナが振り下ろしたバラ鞭が迫る。

 九本の革紐は慧夢の……滑らかな肌に覆われている、意外と筋肉で引き締まっている腹部を打ちつけ、平手打ちと似た様な音を響かせる。


「んんんんんッ!」


 腹部に感じた激痛に苛まれ、慧夢は苦しげな呻き声を上げる。

 威力が分散しているバラ鞭とはいえ鞭は鞭、鞭打たれた側が、痛くない訳が無い。


(痛ってー! マジで鞭打ちやがった、この変態外人女! 何考えてやがんだ、畜生!)


 慧夢は心の中で、エドナへの呪詛を口にしつつ、怒りと恨みを込めた目で、エドナを睨み付ける。


「おやぁ? まだお仕置きが足りないのかな? そんな目してるよ……君」


 艶っぽく嗜虐的しぎゃくてきな笑みを浮かべ、そう言い放ってから、束ねたバラ鞭の先端を長い舌で舐める。

 まるで、別の何かでも舐めているかの様に、バラ鞭の先端を何度か舐めて、唾液を塗れさせる。


(足りてる! 物凄く足りてる! つーかお仕置きとかいらない! 求められてもいないのに、自分の恋愛話したがるブサイク女や、みんなで食べてるカラアゲに、勝手にレモンかけたがるオッサン並に、俺の人生に不要な存在だから!)


 慧夢が心の中で上げた声など、知る由も無く、エドナはゆっくりと時計回りで、慧夢の周りを歩き回り始める。

 バラ鞭で慧夢の肩や背中……尻などを、続け様に打ちつけながら。


(痛ッ! 痛いって! 止めろこの変態! いや、止めてくださいマジで! 止めてー!)


 強い痛みに苦悶の表情を浮かべ、苦しげな呻き声を上げる慧夢を見て、エドナは恍惚とした笑みを浮かべる。

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