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111 問題なのは、籠宮自身が身に着けてる奴だ。今の所、夢の鍵である可能性が高そうなのは、あの例の指輪なんだが……

(まぁ、でも……情報収集に来たのは正解か。籠宮の兄貴が本物の霊魂だという、確証が得られた様なもんだし、両親との関係が良好だってのが知れたのも良かった)


 大志と陽子に目線を移動させつつ、慧夢は心の中で呟く。


(籠宮にとっては、両親も大事なんだろうから、両親も夢の鍵の候補に含めておいた方が良いって、分かったからな)


 陽志本人ではなくとも、陽志関連の物が夢の鍵だろうというのが、慧夢の基本的な考え。

 だが、情報収集の結果、大志と陽子も夢の鍵の有力な候補だと、慧夢は考える様になった。


(籠宮の両親を殺す……というか破壊するのは、籠宮の近くでない方がいいだろう。凍っている時の方がやり易いし、兄貴の時みたいに、籠宮に木刀持って駆けつけられたら困る)


 慧夢は陽志を襲撃した際の、志月の行動を思い出しつつ、目線を大志と陽子から志月に移動させる。

 そして志月の全体から、その左手の指先に、慧夢の目線は移動する。


(問題なのは、籠宮自身が身に着けてる奴だ。今の所、夢の鍵である可能性が高そうなのは、あの例の指輪なんだが……)


 茶碗を手にしている左手で輝く、銀色の指輪を見ながら、慧夢は考え続ける。


(部屋にある奴とかは、籠宮が学校に行っている間に、忍び込んで壊せばいいけど、指輪なんて風呂に入る時でも外さないだろうし、籠宮を襲うしか無さそうだけど……それは出来れば、夢の鍵が指輪だという確証を得られるまで、避けたいんだよな)


 夢の主は夢世界において、特別なキャラクターであり、ある意味最強と言える存在。

 侵入者である慧夢よりも、夢世界で志月は圧倒的な強者なのである。


 慧夢は夢の主を目覚めさせる為、この世界が夢である事を伝えた上で、夢の主に攻撃を加える事には慣れている。

 だが、それは基本的には一撃のみの奇襲攻撃であり、相手が慧夢の攻撃を警戒し、対処する様になれば、慧夢には殆ど勝ち目が無い。


 通常なら奇襲の一撃で、夢世界であるのを教えても目覚めない、夢の主を目覚めさせるという目的を、慧夢は果たせる。

 だが、黒き夢の夢の主は、夢世界であるのを教えても、その上で強い衝撃を与えても、夢の鍵を壊さぬ限り、目覚める事は無いという。


 つまり、指輪を破壊する為に、慧夢が志月を襲った場合、指輪が夢の鍵だったら問題は無い。

 慧夢を警戒していない、この夢世界では普通の少女のままである志月は、あっさりと慧夢に指輪を破壊され、黒き夢の夢世界は終るだろう。


 だが、指輪が夢の鍵では無かった場合、黒き夢の夢世界が終らないだけでは済まない。

 その後の志月は、自分が狙われているのを警戒し、普通の少女ではなくなり、慧夢の手に負える存在でなくなる可能性が高い。


 志津子の夢世界に入った時、慧夢に性的な意味で襲われたと勘違いした志津子は、巨大化して慧夢に襲い掛かった。

 あの時の志津子の様に、志月も慧夢には太刀打ち出来ない強さを持つ存在と化した上で、その後は警戒し……反撃して来る存在になるだろうと、慧夢は考えている。


 巨人と化した志津子の場合は、夢世界であるのを知らせる方法により、慧夢は目覚めさせる事に成功した。

 だが、慧夢は過去に何度か、明晰夢状態になっても目覚めなかった夢世界の主に、奇襲攻撃を加えようとして失敗した経験があるのだ。


 失敗した際、怪物レベルの強者と化した夢世界の主相手に、地獄の様な目に遭わされた経験が、慧夢にはあった。

 過去の経験から慧夢は思い知っているのだ、夢の主への一度目の攻撃は、成功率が高いのだが、それで目的を果たせなかった場合、警戒する様になった夢の主相手の二度目の攻撃は、難易度が異常に跳ね上がってしまう事を。


 故に、志月本人を襲わざるを得ない、志月が常に身に着けている指輪の破壊は、「後は指輪以外に有り得ない」という段階になるまで、慧夢は避けたいのである。


(あの指輪を破壊するのは、他に思い付く夢の鍵の候補を全て、破壊してからだな)


 そう決意した上で、とりあえず夢の鍵について考えるのを止めた慧夢は、再び籠宮家の者達の会話に、耳を傾け始める。

 今後の活動に役立ちそうな情報の収集を、再開したのだ。


 楽しげな夕食を終えた籠宮家の面々は、協力して手早く夕食の片付けを終える。

 そして、居間へと移動すると、テレビを見ながら会話の花を咲かせ、夕食後の一時を楽しむ。


 志月が夢見ている、楽しげな家族団欒だんらんの光景を眺めながら、慧夢の夜は更けて行く。

 本物では無い、夢世界で過ごす夜が……。


    ×    ×    ×





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