世界の主(ワールド・プリマリー)の子供達・Ⅲ
錬金術師になれるのは「魔力」を持つ者だけ。
錬金術師は──「魔女」、「男魔女」、「道士」、「妖術師」、「魔法使い」、「魔術師」らの総称だ。その中で、レヴィ・エリファスは「男魔女」に属している。
「もちろん、起きています。──どうぞ、中へ」
女性に促され、ありがとと言って、サーディアは屋敷の奥まで進む。
「邪魔するよ」
その言葉に屋敷の主である、レヴィ・エリファスは息を吐いて、サーディアを見た。
レヴィは見た目は青年だが、実際の年齢は300歳をこえている。
一定の年齢で成長が止まり、不老長寿となる錬金術師。──魔力を持つ者だからこそ可能なのだ。
「……来るのはわかっていたけれど、静かに来れないかな? それに、どうして君が〝表に出てきて〟いるんだい、サルサディア・フィリアーラ」
少年をフルネームで呼ぶ、レヴィ。
「わかってるのに聞くのは、アンタの癖だな」
「……あの男もしつこいね」
共通して、街には術が施されており、錬金術師はその術を通して、自分が統治する土地を屋敷にいながら、〝視る〟ことが出来る。だから、アーヴィーと、サーディアのやりとりも〝知って〟いるのだ。
「仕方ないだろ、あいつのしつこさは昔からだし」
ソファーに腰をおろすのと同時に机に紅茶が置かれる。
「ありがと。えーと、名前は?」
お茶を運んできた──玄関でサルサディアを迎えた──女性に訊く。
「ああ……君は初めてだったか」
「そっ。前に来た時はいなかったじゃん。いつ〝造った〟んだ?」
「二年ほど前かな、名前はウィルカ」
レヴィの紹介にウィルカと呼ばれた女性は頭をさげ、部屋から出ていった。
「もう造らないとか言ってなかったっけ?」
「そうだったんだけど、上質の琥珀が手に入ったから、ついね」
「ついで人工生命を造るのが錬金術師だよな〜」
呆れたように、仕方ないけどさ、とサルサディアは続けて言う。
錬金術師は宝石を材料にして、人工生命を造る能力がある。その主な使用方法は医者である。医者以外の利用方法もあるが。
造った錬金術師が死ぬと造られた人工生命も死ぬようになっているが、人工生命はそうだとわかるように、材料にした宝石の色が右眼に与えられる。
「……それで?」
「なにが?」
「シヴァートマに来た理由は〝ソロモン〟だと思ったのだけどね」
「そうそう、それ! ローゼンがあそこに行くんなら、言ってくれよ。そしたら、先にあっちに行ってたのにさ!」
そう言った瞬間、ゴッと鈍い音が「でえっ!」という呻き声と共に部屋に響いた。