世界の主(ワールド・プリマリー)の子供達・Ⅱ
「なんだ、招待状がないのか? 俺の連れということで、特別にいれてやろうか?」
にやりと、嫌味ったらしい笑顔で言うレネリアに「いらないわよ!」と答え、そこから去っていく。その後ろ姿を見送ってから、レネリアは館主と共に館へと入った。
人気のない道をアーヴィーは歩く。それはもう、一心不乱というほどに、ただひたすら。
『……なんで、人気のない道を歩くんだ』
アーヴィの脳裏に直接、響いてくる声。その声は少年だ。
「こっちが近道じゃない」
『そりゃそうだけど……せめて、人気のある道を歩け』
呆れたように言った、次の瞬間に少年は「アーヴィーッ!!」と叫ぶ、。
「────ッ」
『大丈夫か!?』
声に反応し、振り向いたものの、避けきれなかったのだろう、アーヴィーは顔を歪めた。──左腕からは血が流れている。
「大丈夫だけど、掠った」
流れる血を止血せず、アーヴィは少年の声に返事をし、自分を襲った若い男性を見た。右手にはナイフ、その甲には模様が描かれている。
「……なにか用?」
「〝ソロモン〟を寄越せ」
男の言葉にアーヴィーはぴくりと反応し「持ってるわけないじゃない」と言った。けれど、男は聞く耳を持たず「寄越せえ!!」と叫びながら、ナイフを降り下ろす。
(まったく……〝あの男〟も)
心の中で呟きながらも、少女は行動に移す。自分に襲いかかってくる男を少女は意図も簡単に倒す。男は小さく呻き声をあげ、その場に気を失い、倒れる。同時に不思議な模様は消えた。
「……ちょっと疲れたから、サーディア、しばらくアンタが出てて」
『わかった』
サーディアと呼ばれた少年が返事をすると、姿が変化していく。
服装は男女どちらが着ても違和感のない格好なので、変化したのは性別くらいだ。髪の長さ、瞳の色、身長に変化はない。少年の身体と少年の顔になっただけの、サーディアという少年がそこに存在した。
「……本当、いい加減にしろっての」
息を吐き、サーディアは歩き出した。
呼び鈴を鳴らすこと数回。玄関の扉が静かに開く。
「──ようこそ」
出てきたのは漆黒の髪に、右眼だけが琥珀色の女性。
「悪いね、こんな時間に。レヴィは起きてるよね」
シヴァートマの治安を守り、統治しているのは、レヴィ・エリファスという錬金術師。