世界の主(ワールド・プリマリー)の子供達・Ⅰ
アルカヘスト国の中心都市──シヴァートマ。
中心都市なだけあって、深夜も近い時間にも拘らず、街は賑わっている。
その中でも、ひとつの建物がひときわ、賑わっていた。なにかの催物があるのだろう、着飾った人々が建物に入っていく。
「……あきらかにわかるなあ」
建物を見上げ、少女は呟き、受け付けをしている男に近づく。
「いらっしゃいませ、お嬢さん。招待状はお持ちですか?」
「持ってない。見学もダメなの?」
「今回の催物は特別でして。見学は許可できないんですよ。申し訳ございません」
「どうしても?」
首を傾げて訊く少女に「はい」と男性は答える。
「せっかく〝ソロモン〟が出展するって、聞いたのにな」
一瞬、男性の表情がかわるが、すぐに表情を戻す。
「なんの話でしょう?」
「今日、ここで〝ソロモン〟が競売にかけられるって、聞いたから、来たの」
「どこで、そのようなことを、お聞きになったのかわかりませんが、そのような物は今回、出展されてません」
「うっわー、シラをきるんだあ」
少女の言葉に男性は「お引き取りを」と言う。
「いいじゃん、別に! 見学くらい!!」
「──どうしたの?」
少女の声がよほど大きかったのだろう、主催者らしき女性が護衛を連れて、現れた。
「館主、こちらの方が今回の催物を見学でもいいので、参加したいと申されまして……」
「招待状はお持ちではないのでしょう?」
「持ってなくても、見学くらいは出来るでしょ。ここの錬金術師が許可したから、競売をやってるわけだし」
館主に少女は言う。
この世界に王族は存在しない。そのかわりに存在するのが、錬金術師だ。
錬金術が、街や村に必ずひとりはおり、その地を統治している。
「ええ、ちゃんと許可は得てあります。ですが、それと話は別ですわ」
にっこりと、笑って言う館主に少女は息を吐く。その時、
「あれ、アーヴィー!」
少女に声をかける、ひとりの青年。青年を見て、アーヴィーと呼ばれた少女は「げっ」と小さく呟く。
「これはレネリア様、ようこそ。さあ、どうぞ中へ」
「ちょっと待ちなさいよ!」
「なにか?」
「なんで、そいつがよくて、私はダメなのよ!?」
「俺は招待客だ」
青年の言葉に少女は「はあ!?」と、素っ頓狂な声をあげた。