太陽と月のない時期(ヘリアカル・アポクリファ)・Ⅶ
「確かに関係ないけどね。ただ、あの男やロークより長く生きていながら、あの男がしたこと……いや、〝あの時〟から君はあいつに従っていたんだった。どうして我が君と呼ぶ?」
「それこそ、お前には関係ない。若輩者が口出しするな」
「親戚として気になるんだよ」
レヴィ・エリファスとメイザース・マクレガーは親戚だ。お互い、生きた時間の流れは違うが、錬金術師同士であるため、何世紀も同じ時間を過ごしてきた。
「親戚だからこそ、関わるな。黙ってシヴァートマを守っていろ」
「もちろん、守るけどね。じゃあ、あいつに鍵を手に入れさせた理由も話す気はないんだね」
九百年ほど前、ある錬金術師が事件を起こした。その事件は事件後に生まれた錬金術師の記憶に刻まれるようになった。レヴィはその事件について、メイザースに問う。──彼が事件の関係者のひとりだからだ。
「なにも話すことはない。お前はただ、ことのなり行きを見届ければいい」
「ザ、ス……っ」
言葉を紡ぐ前にレヴィの意識は途切れる。メイザースが術で彼を眠らせたからだ。
「──誰にも邪魔はさせない。誰にもだ」
意識を失ったレヴィに一瞬だけ視線を向け、メイザースはその場から去る。──彼が去った後、部屋には静寂だけが訪れた。




