プロローグ・Ⅰ
オカルト用語はほとんど、造語です。
その部屋は図書館と呼ぶに相応しいほど、部屋中が本で埋め尽くされており、ひとりの人物が存在していた。
「──おまえ達は『封印』だ。アレらの能力を暴走させないための」
時刻は夜中。机の上に置いてある、宝石に分類される石のひとつを指先で転がしながら、部屋の主は呟く。
「アレらはこの世界の摂理と理、秩序と均衡を守る者。アレらが暴走すれば、この世界は簡単に滅ぶ。──我々はこの世界でしか、生きられない種族なのだから」
独り言のように彼は言葉を紡いでいく。
「滅びを防ぐためにおまえ達はいる。これは〝世界の主〟の意思」
視線を石から、部屋の扉の方に向けると、ひとりの少女が立っていた。
「わたしが死んだ後、この屋敷は燃やすといい。どうせ〝次〟が現れるまで、この地は閉鎖される。ここにいられなくなるのだから、世界を見てくるといい。──おまえ達は〝永遠の存在〟なのだから」
「…………」
無言のままでいる少女を見て、くすりと彼は笑う。
「いいね、能力を暴走させてはならない。多少の暴走は許されているけれど、世界を滅ぼすほどの暴走はしてはならない。──〝与えられた、その姿を失いたくなければ〟……だ。そして、これらにも『封印』を施す。〝あの男〟が何もしないわけがないからね」
「……そうしろと命令を?」
無言だった少女はようやく口を開き、問う。