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AKIRA  作者: 千路文也
プロ2年目  -苦悩-
83/426

083  魅せる守備


 1回表は3者凡退に終わったため、AKIRAの出番は無かった。そして今度は相手の攻撃が始まるのでセンターの守備位置に就く。もはや当たり前と化しているが、AKIRAは打撃や走塁よりも守備を得意としている選手だ。


 去年は144試合に出場して失策数が0というとんでもない数値を叩きだしていた。今年も現時点で0失策なため、他の選手達はセンターに打ち返す事を極端に嫌う。例えあたりが良くても、目が覚めるようなレーザービームが返ってきてアウトにさせられる可能性が非常に高い。それでいて、当たり前のようにファインプレーを連発させるのだ。


 100メートルを9秒台で走る俊足を生かし、守備範囲も全球団ナンバーワンだ。AKIRAの見た目は野獣そのものだが、彼はとても美しい守備を見せる。一見、彼の筋肉隆々な体を見るとパワフルかつ豪快に思えるが、実際の彼はとても繊細で几帳面だ。


 なので打撃フォームだけでなく、守備も洗練されている。全ての動作に無駄な動きなんて一つも無い。外野手として必要な事を全て兼ね備えているのだ。


 判断力もあり、レフトやライトにも適切な指示を出す事が可能だ。ライトに任せると言えば絶対に自分は捕球せず、ライトに任せる。その逆もしかりだ。


 そんな彼がセンターの守備位置に就くと、脚光を浴びる事は明白だ。なんせスーパースターの階段を登っているのだからAKIRA目当てで球場に運ぶファンは少なくない。自分では気が付いていないが、ファンは大勢いるのだ。


 まるで1980年代のアイドルのような甘いマスクをしていて、とても顔立ちの整ったハンサム顔だ。それでいて野球も超一流なのだから人気が出ない筈も無く、今日もAKIRAファンが大勢集まっているのだった。



 *************************



 1回の裏が始まった。今日先発するのは阪海不動のエース東川。彼は最速156キロのフォーシームと縦に鋭く落ちるスプリットフィンガーファストボールを決め球にしている。他の球種も平均以上の精度を誇り、名実ともにエースとして君臨しているのだ。


 そんな彼も初回からエンジンを飛ばしていた。いきなり、マジックキャッツの先頭バッターを三振にきってとると、2番打者も三振させたのだ。これにはセンターから見ているAKIRAも思わず嬉しくなる。


 こんなにも優れた投球が出来るのだと、感心する程だ。


 そして、次の3番打者に打席が回った。彼は四球を選ぶ事に長けている外野手で、尚且つ長打力もあればチャンスにも強い。打率は.280程度とそこまで高くはないが、厄介な相手には違いない。先程の知念のように粘る事も出来るし、カットしてファールにするのも非常に上手いのだ。警戒を怠れば負ける事必死だ。


 なのでAKIRAは心の中で「油断はするなよ」と呟くのだった。


 そして展開は徐々にAKIRAの思うようになっていく。さっきまでのバッターとは違い、簡単にボールを見極めている。積極的に打つのではなく、むしろ四球を待っているかのよう狙いが垣間見える。


 ただでさえ彼はバットコントロールが高いのだから隅を突くのは当たり前だ。しかし、慎重になり過ぎてわずかにコントロールが狂っているのか、審判は3球続けてボールと判定したのだ。


 これにはさすがのAKIRAも心配になってきたので、気持ちを落ち着かせるために両腕を伸ばす。あまりにも緊張した状態では血行の流れが悪くなるので、時にはリラックスするのも大事なのだ。それを知っているからこそ、AKIRAは常に外野の守備位置にいる時も体を動かしている。


 すると。


 相手バッターが粘り始めた。4球目に投げられた様子見のストレートと内角を襲うスライダーにも全く動じない。平然とした態度で見送ったのだ。そしてその後、ストライクゾーンに投げられる球を悉くカットしてファールにする。


 彼は場合によって打撃方法を変えてくるのだが、今回はスタミナを減らしてくる作戦のようだ。ふと、左を見ると知念が悔しそうな表情を浮かべている。きっと自分の案をパクられたか何かだと思って、そう思っているのだろう。


 だが、実際はそうじゃない。選球眼やカットする技術は向こうの方が上でプロ野球歴も相当長いのだ。そういった意味では、むしろ知念の方がパクっている。


 しかも相手は積極的に打つ事もあれば、今のように粘りに粘る時もある、状況に応じて打撃スタイルを変えてくるのだから投手としてこれほど、厄介な相手はいない。


 4球続けて、ボールは後ろに飛んでファールになる。そろそろかとAKIRAが思ったところ、その予感が当たったのか初めてボールが飛んだ。しかも、甘く入ってきたボールを見逃さずに完璧に捉えた当たりだった。


 ボールはセンター方向に飛んでいる。


 そう、AKIRAの守備位置だ!


 AKIRAは巨体を揺らせて走っている。というのも少し浅い守備位置に陣取っていたため、思っていた以上に伸びる打球を追いかけているのだ。


 普通ならばスリーベースヒットになる当たりだった。だが、相手が悪かった。なんせAKIRAは世界陸上で屈強な外国人選手と闘った事がある身だ。


 猛スピードで落下地点まで走ったと思うと、グラブを伸ばして前方宙返りをしながら、白球をその手に掴む。


 瞬間、球場からは鳴りやまぬ拍手と歓声が轟き、彼の雄姿を祝福するのだった。



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