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AKIRA  作者: 千路文也
プロ2年目  -苦悩-
79/426

079  外国人ならではの変化球


 最強の打撃フォームを手に入れたAKIRAにとって死角は無いと思われたが、残念ながらそうでもないようだ。やはり人間なだけあって打撃成績に穴が発見された。その穴とは左投手との対戦成績だ。


 対右投手.448 対左投手.302


 このように1割以上も差が見られるのだ。何故AKIRAが左投手に弱いのかその理由はずばりAKIRAが速球を得意としているからである。日本のプロ野球に速球派の左腕は左程おらず、むしろ軟投派のピッチャーが大勢いる。その逆で、右腕投手ともなれば150キロを超えて投げる投手がざらにおり、AKIRAはその150キロを超えるストレートをかっ飛ばしているのだ。


 だからと言って遅い球が苦手な訳ではない。むしろ遅い球を投げる投手相手にも平均以上の打撃成績を残している。だが、AKIRAが右投手からポンポンとヒットを打つので他の監督や捕手はA、KIRAが左の軟投ピッチャーに弱いと錯覚する現象が起きていた。


 その現象は今日の試合にも見られていた。相手先発投手はエドワードという外国人投手だ。この男は平均138キロというツーシームを投げるという事で、外国人投手の中では比較的球速が遅い投手に分類される。だが、彼の決め球であるナックルカーブが曲者だった。


 ナックルカーブはカーブよりも落差の激しい変化球だ。縦に大きく割るように曲がり、打者は体勢を崩されて内野ゴロを連発する。ただでさえツーシームはゴロになりやすい球なのにだ。しかもフォークボールも投げる事が出来るため、ブライアンは三振よりもゴロを打たせるタイプと分かる。


 そんなブライアンは相手チームのエースとして君臨していた。しかも今年の防御率は破格の1.46という数字を誇っている。両リーグで一番奪三振率が低いのにも関わらずゴロを打たせまくる技術には長けている。実際、ブライアンが先発した試合は、三振の数は多くとも7つぐらい。1つしか三振がとれないのも何ら珍しくないのだ。


 ナックルカーブを決め球にするブライアン相手に対し、どう攻略するか、監督の力量が問われる。




 *******************




 阪海のメンバーはミーティングルームにて相手投手をどう崩すか作戦会議をしていた。と言っても、普通の作戦程度でブライアンを攻略できるものなら他のチームがとっくの昔に攻略している。では、この試合をどう攻略するのか、その鍵を握るのはAKIRAだった。


 既に阪海はAKIRAを中心に回っている。彼無しでは到底この順位に位置する事は不可能だった筈で、他の選手達も絶大な信頼を置いていた。以前、「知念軍団に入れ!」とニャーニャー騒いでいた知念も少しづつだがAKIRAという存在を認めているようで、開幕戦のようなフテブテシイ態度を取ることは少なくなっていた。


 だが、相変わらず短気でキレやすく頻繁に乱闘を起こしている。そのつどAKIRAは先頭で殴り込み、知念を敵の手から救いにいくという御約束のようなテンプレ劇場が出来上がっていた。


「今日の先発投手はブライアンだ。恐らくAKIRAが左ピッチャーに弱いことを計算してぶつけてきたのだろう」


 謎の覆面監督がホワイトボードにブライアンの名前を書きながら、激を飛ばしている。その激を選手達はパイプ椅子に座って大人しく聞いている。それはAKIRAも同じで両腕を組みながら配球表が書かれた資料に目を通す。無論、耳では監督の言葉を入れていた。


「だがだ。もはや我々を止められる存在などいない事を徹底的に教えてやれ!」


「はい!!」


 こうして、熱い作戦会議を終えた選手達はベンチに戻って行く。今から試合が始まるので各々が準備に取り掛かっていた。


 今回の対戦相手はマジックキャッツという球団だった。この球団の名物監督が中々の曲者で、トリッキーな戦術を使ってくる事で有名である。例えば4番打者を先頭バッターに起用するのはザラであり、以前は長打力の高いバッターを1番から順番に並べるという策も編み出していた。


 そんな監督が指揮する中でどんな試合が展開されるのか、AKIRA自身も想像がつかないままベンチに座って相手投手に睨みをきかせている。


 相手はAKIRAとほぼ同じ身長で201センチもある。それをマウンドから見ているとまるで山のように大きい。去年自分がマウンドに立っていた時は同じような事を他人は思っていたんだろうなと、不意に想像するのだった。


「いやしかし、あんな化け物ピッチャーを本当に打ち崩せるのか」


 隣に座っている光太朗は半信半疑なようで首を傾げていた。確かにそれも無理はないだろう。ただでさえ日本には2メートル越えの投手があまりおらず高さのあるボールを打てるのかという不安に駆られるのも不思議ではない。


「打つ前から弱気でどうするんだ。普段の弱気な自分はロッカーに預けてこい」


 もはや、19歳の青年が言う言葉ではない。


「そうだな……弱気な俺が悪かったよ」


 すると、先頭打者の石井が左のバッターボックスに入った。石井は阪海のリードオフマンとして活躍していて、打率.280という石井にとっては好成績をマークしている。いつもならば.250程度が限界なのだが、今年はどうやらハッスルしているようだ。


 さすがに無邪気な少年心を忘れない50歳は強い。


 ブライアンと対峙しても恐れを抱かず、むしろワクワクした顔でルーティンをこなしているではないか。これには期待が出来るぞとAKIRAは思ったのだった。





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