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AKIRA  作者: 千路文也
プロ2年目  -苦悩-
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064  表と裏


 AKIRAこそが5ツールプレイヤーに最も近いバッターであることは誰しもが知っていることだ。走攻守揃って超一流の選手は長いプロ野球界においても、そうはいない。誰しも選手としてプレーしていくうえでは、短所となる部分を持っているものだが、今のAKIRAにはそれが無いのだ。課題だったミート力も打撃フォームの改造によって改善され、ホームラン数も去年と同じペースで伸びている。それでいて、足も速く、ゴロになっても内野安打でセーフになれるのだから大したものだ。


 だが、そんなAKIRAとプレースタイルが似ている選手が現れた。それこそが知念恭二ちねんきょうじだ。彼は高卒一年目でありながら今のところスタメンで出場し続け、強打の2番バッターとして君臨し続けている。


 今年の阪海はなんと言っても打線が爆発的に強くなり、両リーグで最強の打線とも呼び声が高い。そんな打線を演出している一人が知念恭二という男なのだ。


 彼は性格的に多少欠点が見られる。それでも野性味溢れるプレースタイルで、球場をとにかく沸かせていた。デットボールを当てられたら積極的にマウンドに突入し、ファンを熱狂させる乱闘を始めたり、ランナーが一、三塁の場面でホームスチールをしかけ、本塁に帰還するという滅多に見られないプレーを頻繁に起こしていた。


 このように知念という男は恵まれた野球センスを生かして、がむしゃらにプレーをし続けていた。練習熱心で最後まで居残り練習をする姿を何度も発見されている。一見、大した選手じゃないかと思うかもしれないが、実際はそうじゃない。今までの美談を全て卑下にするような行為もまた知念という男の特徴だ。


 高卒一年目というのに真っ黒な髭をボーボーに生やして、サングラスをかけている。髪もロン毛で両肩の位置まで伸びきってしまっていた。しかもそれだけではなく、女子アナウンサーとのスキャンダルも発覚して、同時に絶倫である事も世に知らされてしまった。


 こんな様子では叩かれるのも当然である。彼のツイッターは毎日のように炎上していて誹謗中傷のメッセージやツイートが爆撃のように振っていた。しまいには。


『○ートと無職が騒いでやがる』


 と、淡泊に炎上ツイートを連発するので、いつの間にか彼のフォロワー数は球団で2番目の30万フォロワーを達成していた。ちなに、阪海で1番人気のアカウントはAKIRAで137万人もフォロワーしている。しかも現在進行形で伸びているのでまだまだフォロワー数は伸びていくだろう。


「あまりにも祖業が悪すぎるな」


 AKIRAはロッカールームで知念のツイートを見ながら呟いていた。知念は今もフォロワーと口喧嘩しているようで中傷の嵐が流れている。ネット住人が良く使う煽り文句に引っかかり、逆上して言い返しているのだ。これでは子供と一緒だと、AKIRAは「はあ」と言って溜め息を吐く。


「どうしたんだ?」


 すると、4000本安打を間近に控えた石井が隣の席に座ってきた。


「いやさ。知念がツイッターで暴れてて」


「またか。懲りない奴だな」


 さすがの石井もこれには顔をしかめてしまう。ツイッターには、口が裂けても言えないような下品な言葉が乱雑としているのだ。


「酷いだろう?」


「ああ。いくら知念が暴れん坊だからって、ここまで書くか」


 知念が知念だけに、フォロワーの質が悪すぎるのだ。しかも知念はまだ誰もフォローしていないので、ほぼ喧嘩するために利用しているようのものだ。普通は情報収集だったりネット友達を作るためにアカウントを作成する人間が大多数を占めると思う。が、知念は一体何のためにツイッターをやっているのか。それすらも本当のところは分からない。本人に聞いてみないことにはだ。


「これだけ怒られるならツイッターをやめればいい。スポーツ選手がくだらないやり取りで精神を不安定にさせてどうするんだ」


 AKIRAは情けない気持ちでいっぱいになる。知念の力は現状、AKIRAが一番良くしっているし自分と似たプレースタイルなので本来ならば切羽琢磨して互いに力量を磨き上げたいと思っていた。


「確かにそうだな。AKIRAの言い通りだ」


「石井先輩は本物の野球選手なのに見向きもされないんだぞ。それに30年も現役を続けているレジェンドだよ、まったく人気はないが」


 隣の石井はさっきの言葉を聞いていたようで、とたんに顔色を暗くして、存在感の薄い石井が更にとんだ空気と化している。


「まさかここまで人気が出ないとは……なあ?」


「予想はしてたぞ」


 だがだ。AKIRAは石井の弱点を知っている様だ。


「是非とも教えてくれ。俺が人気のでない人間であることを」


「本当に何度もいうようで申し訳ないが、石井先輩は地味ですよ」


「地味さだけが人気の上下を関係しているのか?」


 いくら石井だって人気がないよりはあったほうがいいと思っているだろう。


「それだけじゃない。徹底的な理由が存在している筈だ」


 AKIRAはそう分析するのだった。




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