057 嫁候補
将来のワイフ候補を見つけたAKIRAはルンルン気分になっていた。冬という寒さが苦手なAKIRAだったが、この恋で寒さも吹き飛ぶというものだ。やはり寒いとどうしても人肌が恋しくなってしまう。そういう時に愛する人がいれば抱きしめてあって互いを温もりあえるし、愛の確認もできる。まさに前回の行動は恋を深めるために結び付いた。
これについて、AKIRAは石井にぶっちゃけてみた。百恵の実のお父さんである石井に前回起こった出来事を嘘偽りの無い真実で語ったのだ。てっきり怒られると思い覚悟をしていたAKIRAだが、徐々に石井の口角が上がって笑いがこみあげているのを確認した。
「相思相愛じゃないか!」
「あんな可愛い女の子を見たことが無い。小柄で胸が大きくて、まるで天使のようだ。良くもまあ……その顔から生まれてきたものだ」
石井の顔があまりにも地味すぎて何処にでもいるオッサンの顔をしているので、何故にこの顔から天使が生まれてきたのかと疑問に思うAKIRAだ。
「あいつの外見は母さんに似たからな。性格は俺だが」
「天然なのは分かるが、石井先輩も照れ屋なのか」
二人はいきつけのオカマスナックを貸し切っているので、この会話が外部に漏れることは無い。もしもこの会話が盗聴されていたとしたらマスコミが発狂し始めて大変なことになりかねない。もはや全国に顔を知られているスーパースターなので、その恋沙汰となると某週刊誌も動きは始めるだろう。それだけは避けねばなるまい。
「俺だって昔は照れ屋だった。今もそのふしが見られるし」
「ううむ……見たいような見たくないような」
複雑な気持ちになっていた。
「なんにせよ、AKIRAになら娘を託せられるぞ」
石井はグラス一杯のワインをグビグビと飲み干し、ガツンとコップをテーブルの上に置いていた。これで7杯目である。顔も真っ赤になっているし、酔った勢いで言ったのだろうとAKIRAは直観的に感じた。
「それは酒から出た言葉だろう?」
「いいや違う。酒を飲んだ時は本音がポロッとでるものだじょ」
このスナック最大の名物である、高級あたりめを掴んでむしゃむしゃと食べている石井だ。このコンボが酒飲みにはたまらないのだろう。
「まさか石井先輩の口から結婚の許しが出るとはな」
「こんな完璧人間はそうはいねえ。性格もいいしルックスもいいし、なにより安心感がある。AKIRAと一緒に入れば娘も幸せだろうさ」
安心感は最高の褒め言葉だ。特にここ最近の不況気味の世の中では安心感のある男がモテにモテまくる時代だ。結婚する場合も「この人となら安心して暮らせる」と女性に思わせてテリトリーという名のフィルターを外してやらないとならない。AKIRAはその安心感を全身から放出されているから、男女を問わずにモテモテなのだと石井は認識しているようだ。
「だが……百恵ちゃんは」
昨日、百恵と抱きしめあった時、百恵は高校の制服を着ていたのだ。さすがに高校生と付き合うのは世間的にもマズイとAKIRAは思っていた。
「心配するな。来年の3月には卒業するぞ」
「それまでに恋が冷めたらどうする?」
「ないない。お前が思っている以上に、百恵はAKIRAという人間を愛している筈だ」
「あんな可愛い子に好意を寄せられたら、こちらとしても鼻孔が膨らむというものだ」
男はスケベだ。それを覆すだけの科学的証拠も論理もない。無論、それはAKIRAも同じことだった。あんなに大きなオッパイを至近距離で見せられると鼻孔も膨らむ。
「だがまあ、結婚するかどうかはお前自身が決めろよ。この世には星の数の女がいるんだからよーく吟味しろ。俺としては娘と結婚して欲しいがな、お前はそうはいかないだろう?」
絶対に結婚しろとは石井は言うつもりも思ってもいないようだ。ただ、出来れば結婚してくれと言っている。
「俺の燃えたぎる恋心はそう簡単に消えないぞ」
「そうか。それなら思う存分、百恵と楽しいことをするいいさ」
石井から許可が降りた。男にとってはこんなに嬉しことはない。結婚する前から結婚を前提とした付き合いを許されたのだから。それもただ楽しいことではない。ムフフな行為も公式的にしてもいいといのだ。
「百恵は以前に彼氏はいたのか?」
「いいや。好きな人がいてもあいつは告白できないタイプだし、お前みたいな人間が他にいると思うか?」
「ということは……」
思わず、生唾を飲み込む。
「なんだ、AKIRAも男じゃないか!」
「石井先輩もこの気持ちが分かるのか」
「当たり前だぜ。男はみんな、ソレを望んでいるからな。あるのとないのとじゃ大きな違いだぞ」
石井は酔っ払っているのか、唐突に下ネタ哲学を放り込んできた。飲みの場では必須のネタであれど、まだ18歳の少年であるAKIRAには少し荷が重たい話しでもある。
「そんな大事なモノを俺に任せてもいいのか?」
「その時は、思う存分に暴れてくれ」
「よーし、頑張っちゃうぞ」
AKIRAはニコリと口角を上げて笑った。
「俺も若い頃は良く遊んだな」
「女好きだったのか?」
「いやいや。今の奥さんとだけだよ」
「そうなのか」
「やっぱり一番好きな人と燃える行為をしたいだろう」
石井はそうだと言うのだ。
「石井先輩と仲が良くなって嬉しいよ。まさかこんな出会いがあるとは想像もしていなかった」
「それはこちらの台詞だ。交流って大事なんだな」
「確かにそうだな」
どちらかが欠けていれば、今頃この出会いには結び付かなかっただろう。どこで彼女を作るきっかけが生まれるか分からないので、やはり交流関係は必要なのだなと改めて思ったAKIRAだった。




