表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AKIRA  作者: 千路文也
プロ1年目  -友情-
33/426

033  打撃フォームの狂い


 もしもAKIRAが軽打狙いをしたら3割を超えるという見解がチーム内にも出ていた。それを最も裏付けているのは山室という存在だ。彼はAKIRAに打撃指導をされてからというものの、打率3割台をキープしている。その理由は、やはり単打狙いのバッテイングをしているからだろう。今までは無理にでもホームランを打って首脳陣やファンをアッと言わせたいと思っていたらしいのだが、AKIRAに諭されてから、彼は無理にホームラン狙いのバッティングをせず、自分に出来る範囲の打撃を行っていた。それが単打狙いのフォームを作らせていた。バットにボールが当たった瞬間に走り始めるスタイルは、まさに陸上選手のように優雅だ。彼には力はないが、スピードはあるため、ゴロ性の当たりを打てば内野安打になることもある。そんな山室にパワーをつけ加えた存在はAKIRAだ。昔、AKIRAは短距離走と長距離走の二種目を挑戦していて、そのどちらも全国大会クラスの実力を持っていた。その脚力を生かして、内野安打を量産しようとするのだが、どうも中々上手くいかなかった。やはりAKIRAのフォームは未完成のようで、どうしてもバットに振られているという感覚になってしまっていた。そうじゃなくて、バットを振る感覚に持っていかないと体にズレが生じてしまう。今はだましだましやっているが、マークが厳しくなると、そうも言っていられないだろう。


 オールスター戦終了後、打率を気にし過ぎるあまり、打撃不振が続いていた。今の打率は.248と一時期に比べて低下してしまっている。しかもホームランが1本も出ないのだ。これは由々しき事態であると、自身が一番感じていた。ビデオでフォームを確認するも、今までフォームを固定していなかったため、毎打席違う打ち方をしてしまっているため参考になりもしなかった。


 項垂れるAKIRA。すると、そこに1人の青年が現れた。その青年とは。


「御前らしくねえな。この俺に3番を任せるとは」


 光太朗だ。いつものように意地悪な顔ではなく、笑顔で近づいてきた。拳で語り合って以来、両者には男の絆が深まっていた。しかも、光太朗は練習をするようになり、現在絶好調の身だ。打撃、走塁、守備に怠慢がなくなってきて、徐々にだがチームメイトにも優しく接するようになっていた。


「光太朗先輩か」


「どうした。そんなに気を落として」


「最近打撃不振で5番に降格されただろう……」


 ハアと溜め息を吐いていた。


「その程度で気持ちを暗くしているのか?」


「どうしても打率が上がらないのさ。気持ちも沈むよ」


「打率が上がらないだって? ヒット打てば打率も上がるだろうよ」


「そのヒットが打てないのさ。今はな」


 そうだというのだった。ヒット性の当たりがでないのだと。


「多分、マークがきつくなったんだろうな」


 それが光太朗の分析だった。


「マークか」


「そうだ。マークだ」


「いよいよ、俺もフォームを固める時期が来たのかもしれん」


 そう言って、AKIRAは立ち上がって素振りを始めた。


「なんだそりゃ。今までどうやって打っていたんだ?」


「どうもこうもない。ただ打席に立って振るだけさ」


「それで前半戦20本もホームランを打っていたのか。信じられない奴だ」


 規格外だと言うのだ。AKIRAの存在自体が。


「仕方ないだろう。自分にあったフォームを見つけられない」


「見るところによると、てめえはオープンスタンスのようだな」


「そうだ。これが一番打ちやすい」


「しかも外国人ばりの豪快な打撃フォームときた」


 ピッチャーを威嚇するかのような厳ついフォームなのだ。


「駄目なのか?」


「駄目じゃないふが、もう少し足を生かしたフォームにすればいいだろう」


「足を生かすフォームか」


 AKIRAの脳髄は現在進行形で爆発していた。悪い意味ではなく、良い意味でだ。野球はラッキーな事に内野安打もヒットにふくまれる。それを連想したのだ。


「お前はな。打った後に一瞬だけ固まる。それを失くせば内野安打が増えるとおもうがぞ。俺は」


 光太朗はそうだと言うのだった。


「その一瞬を排除すればいいのか」


「そうだ。今の御前には無駄が多すぎる。その華麗な守備と走塁のように、打撃もスマートにしてみせろ」


 光太朗は打撃コーチとしての才能があるようだ。今までロクに練習をしていなかったため、人間観察が趣味のようなものだった。きっとそれが選手の特徴を見る目を自然に鍛えていたのだろう。一見不必要なことでも、それが将来の役に立つこともあるということだ。


「スマートな打撃か」


 スマートな打撃だ。


「後は石井の野郎にでも聞け。俺よりも詳しい筈だ」


「そう言えば、石井先輩も昔は足が速かったらしいな」


「盗塁数はつねにチームトップだった。まあ、今は見る影もないが」


 AKIRAの48盗塁に負けて、第2位につけている。


「石井先輩か」


「そうだ。あの野郎だ」


「1軍打撃コーチはあてになりそうもないし、そうするとするか」


 今の1打撃コーチはアルコール中毒とニコチン中毒、そしてパチンコ中毒を患っているため、そういう病院で治療を受けている最中だ。よって、今の1軍は変わりに石井が打撃コーチを兼任しているのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ