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AKIRA  作者: 千路文也
プロ1年目  -友情-
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030  修羅の闘い


 その日の夜、AKIRAのツイッターに一つのダイレクトメールが届いていた。その内容とは。


『明日の0時ちょうどに△○公園に来い。決闘だ』


「決闘?」


 とあるフォロワーからのものだった。それは何を隠そう、神野光太朗だった。深夜の0時に公園へ来いという果たし状のようなものだ。このメールだけで如何に攻撃的な人物であるという事がお分かりいただけだろう。しかし、AKIRAは。


『受けて立つ!(^^)!』


 と、返事をするのだった。そして深夜0時ちょうどにAKIRAは約束通りに△○公園に立っていた。先に来ていたであろう光太朗と共に。


「よく来たな」


「ああ。約束だからな」


 男は約束を守る生き物だ。それが男なのだから。


「怖気づいて逃げ出したのかと思ったぞ」


「そんな真似はしないさ」


 しないのだと言うのだった。AKIRAは。


「俺はチームで二番目の握力を持っている。貴様が一番なのは分かりきったことだが」


 そうなのだ。光太朗も筋肉隆々だ。AKIRAの影に隠れてしまっているが、それでも右手は86、左手は81という怪力を誇る。もっとも、AKIRAはそれをゆうに超えているが。


「そうだな。どうやら俺が一番らしい」


 パワーが自慢の外国人バッターですらAKIRAの足元にも及ばない。AKIRAの身体能力はメジャーリーガーと遜色の無いものとして出来上がっているのだ。


「今から、喧嘩に握力は関係ないということを教えてやる」


「それは楽しみだな。是非とも受けて立とう」


「その前にだ。条件がある」


「なんだ」


 と、AKIRAは尋ねた。


「もしも俺が勝てば金輪際話しかけるな。守備練習の時も試合中もだ」


 レフトとセンターが守備練習で話しかけてはいけないというのだ。有り得ないことだが、光太朗はそう提案してきた。


「何故だ?」


「俺は……お前と一緒に会話をしていれば変な気持ちになる。それが嫌だからだ」


 要約すると、一緒に話すのが嫌だというのだ。


「分かった。お前の要件を受けよう」


「それと、もしもだ。もしもお前が勝てば……一緒に飯を食べてやる。誘われれば二つ返事でうんと言ってやろう」


 一緒にご飯を食べてくれるというのだ。これは光太朗と接近するための最大級のチャンスだった。


「その言葉に二言はないだろうな?」


 AKIRAは改めて訊き直した。


「当たり前だ。男に二言は無い」


 光太朗もなんだかんだ言って男としての熱力を秘めているようだ。


「約束だぞ。もし俺が勝てば一緒に飯を食べてもらうからな」


「俺が万が一負けるようなことが有ればの話だがな」


 喧嘩に関しては相当の自信があるようだ。


「分かった。こちらも本気で行かせてもらう」


「ああ、来い!」


 まさに、殴り合いといったところか。二人の拳が同時に前に伸びた思うと、互いの右頬にダイレクトヒットしていた。その衝撃で二人はヨロヨロとよろめきながらもなんとか直立をしていた。頬に男の痛みを感じるが、それも一興だとAKIRAは心の底で感じていた。男と男の殴りはそれだけ魅力にあふれている。それは普段温厚なAKIRAが獣と化す程に。


「うらあ!」


 AKIRAの右腕が伸びる。光太朗はまるで、樹齢300年の太く神経の詰まった丸太が、時速170キロの弾丸で襲ってくるような体感速度を感じてしまっているだろう。それだけ、AKIRAの攻撃にはスピードとパワーが兼ね備えられていた。


「ぐう!」


 危機感を感じた光太朗は両手でバツ印をして、猛撃を受け止めていた。すると、AKIRAの顔は血を求めた猛獣のような顔を浮かべて、空いている左手を振りかざした。まさに電光石火の一撃だったが、光太朗は寸前のところでかわして、数歩後ろに下がっていた。


 闇夜を照らす灯りが、二人のリングを照らしている。これは誰にも語られることのない、二人だけの闘いになるだろう。


「まさか、俺の一撃を躱すとはな」


 ヒートアップしていた。いつもより口調が男だ。


「一撃が重い。喧嘩の素人には思えねえな」


 滅多に人を褒めない光太朗ですら認めてしまう腕っぷしの強さがあるようだ。AKIRAにはそれだけ喧嘩殺法の才能があるということだ。


「イメージが今の俺を作っている。ここに来る前、動画サイトで不良共が喧嘩しているドラマのワンシーンを見て来たのさ」


 それで喧嘩のイメージを作った。AKIRAはそう言うのだ。


「いいぜ。そういう予習復習って奴は!」


 殴り合いは続いた。互いの肉と肉がぶつかり合い、喧嘩による汗が夜の公園を煌めかせていた。まさに男の闘い。喧嘩による怪我など怖くはない。どちらかが地面に這いつくばるまで、血は流れ続けるだろう。


 すると、AKIRAのラリアットが喉に直撃した。あまりの鈍撃に、光太朗は地面に膝をついてしまった。それを見逃すAKIRAではない。


「いくぞ」


 深い声で呟いた。


「本気でやれよ。手加減はするな!」


 光太朗は覚悟していたようだ。AKIRAもそれに答えるように渾身のアッパーを胸に当てた。その瞬間、光太朗は白目を剥いて、体をガクガクと震えさせながら地面に倒れ込んだ。これぞまさに極めの一撃。


「勝負ありだな」


 気のせいか、AKIRAの攻撃で公園の木が揺らめいていた。


「ぐほおお……」


 まるで芋虫のように蠢いている光太朗に向かって、そう言ったのだった。



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