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AKIRA  作者: 千路文也
プロ1年目  -友情-
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018  速水大道


 AKIRAも素晴らしい成績を残して新人王候補に挙がっているのだが、他にも新人王の可能性を秘めた選手がいる。その男の名前は速水大道はやみずだいどう。速水は高校野球決勝戦でAKIRAと投げ合い惜しくも敗れたが、プロ入りしてからは一軍で投げ続け、防御率2.16、奪三振数155はリーグトップである。速水は最速163キロのフォーシームを主体とした速球派のピッチャーで、他にもツーシーム、スピリットフィンガーファストボール、高速スライダー、高速シンカーなどを投げ分けている。他にも球種はあるが、メインで投げるのはこの5つである。どれも球速は140キロを超えているため、速球に弱い日本人打者はどうしても速水を打ち崩すことが出来ず、リーグトップの投球成績をしていた。


 しかし、対速水で好成績を収めている野手は何人かいて、その内の一人が同期のAKIRAだ。AKIRAは速球に滅法強いため、対戦成績は三割を超えている。二人は因縁が因縁だけに日本のマスコミは二人をライバルとして見ているが、当の本人達はむしろ仲が良い。プライベートでも挨拶を交わして、互いにキャッチボールをして、普通に話しをしている。


 この日もそうだった。今日は速水が所属しているダイスターズとワイルドダックスの試合がナイトゲームに組まれていて、互いは顔を見せることとなった。


「よお、AKIRA」


 自動販売機でスポーツドリンクを買おうとしていると、先客がいた。それこそが速水大道はやみずだいどうだ。彼は身長185センチと大柄だが、AKIRAは201センチのため、どうしても速水が小さく見えてしまう。


「速水大道か。久しぶりだな」


「三か月前の阪海戦以来か。こうして話すのは」


 二人は花を咲かせていた。確かに、元々、二人はマスコミが騒ぐように互いをライバル視していた時代があったが、もうそんな気持ちは無くなった。それはU18の野球世界大会で、二人の間に友情が芽生えたからだ。だからこうして面と向かって会話することができる。


「頑張ってるじゃないか。防御率トップだって?」


「AKIRAの方こそ、ホームランダービートップじゃないか」


「なーに、矢部さんと同じホームラン数だがな」


 ツネーズの矢部だ。AKIRAと同じく、和製大砲として、観客を魅了し続けている。しかし、矢部の性格は常識を疑う程だが。


「それなら僕だって谷さんと同率だよ」


 ボンバーズの谷と同じ防御率だというのだ。谷は最速120キロ、速水は最速163キロと、まさに両極端の投手なのだが、防御率はどうも一緒らしい。


「谷さんか。でも、あの人はまだ8勝しかしていないんだろう?」


 谷は中々援護してもらえないのだ。それ故に最多勝利とは無縁の野球生活を送っている。


「そうだね。こっちはお陰様で12勝させてもらっている」


 そうだというのだ。12勝もしていると。


「ダイスターズの爆発力は手がつけられないからな。こっちの投手陣も何回も炎上させられている」


「それもお互い様だよ」


 速水はお互い様だというのだ。確かに、最近のワイルドダックスの攻撃力は底上げされていて、今一番怖い野手陣は阪海だと言われている程にまで。


「それにしても、お前は投手として指名されたんだよな。野手としての才能もあったのに……もったいない」


「AKIRAの才能には勝てないよ。僕なんか投手だけで精一杯さ」


「謙遜しなくていいだろ。俺は知ってるぞ。お前の打撃成績を」



 打率.341 1本 7打点 得点圏打率.364 OPS.977



「所詮ホームラン1本どまりさ。君は20本も打ってるじゃん」


「そうだとしても、お前なら外野手としてもそこそこイケたと思うぞ。俺だってこの成績なんだからよ。もし、投手が駄目になったら野手に転向しろよ。絶対引退するなよ」


 この間まで高校で投手をしていた者が、プロで走・攻・守の全てが揃った5ツールプレイヤーへの階段を登っているのだ。


「そういう君だって、投手一本なら凄い成績だったかもよ。この間も170キロ出して日本最速記録を塗り替えてたじゃん」


「俺の球は速いだけキレも伸びも全くないからな。打たれまくったさ」


 そう、AKIRAは自虐するのだった。


「練習すればきっと上達するって」


「いやいや、こちとら野手の練習でヒーヒーなんだからこれ以上は無理だ」


 AKIRA自身も二刀流の挑戦は難しいと言っていた。


「そうだね。片方の練習だけでも地獄の沙汰なのに、それを両方するなんて、二刀流選手は凄いよ」


 ここで、AKIRAは目当てのスポーツドリンクを買って、飲み始めた。


「速水」


 そう、呼びかける。


「何?」


 速水は聞き返す。


「そろそろオールスターが始まるが、バテてないか?」


「大丈夫だよ、休憩はしっかり取っている」


「そうか。実は俺も元気モリモリなんだ。後半戦に入る前は必ずバテると石井先輩に聞いたが、何一つ疲労感が無いんだよな」


 AKIRAはそういうのだ。毎日のように練習をし、試合に出場しても、まったく疲れないのだいう。とてつもないスタミナ力だ。


「あの人は48歳なんだからバテても仕方ないよ。それに比べて、僕達は若いんだから体力が有り余ってるんじゃない?」


 速水はそう言うのだった。若さは素晴らしいのだと。


「ああ、そうだな」


 これにはAKIRAも納得しているようだ。


「AKIRAは先発出場して、翌日に野手として試合に出場していたけど、あれってとんでもないことだよ。あの一連で、AKIRAは無尽蔵の体力だって分かったよ」


 先発出場を何回も経験したことがある速水の説得力のある言葉だった。


「体力は昔からあったからな。一時期、マラソン選手になろうと思っていた」


 そう、中学時代は陸上の経験者だったAKIRAは体力には相当な自信があるのだ。


「多分、通用していたと思うよ」


 そうだというのだ。長距離ランナーとしてもAKIRAは通用したのだと。



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