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AKIRA  作者: 千路文也
プロ2年目  -苦悩-
175/426

175  真実が明らかに


 VIPルームに座っている者が謎の重圧を放っているのは間違いなかった。しかしここで疑問が生じてくるのは火を見るより明らかだった。ただ観戦をしているだけでプロ野球選手が慌てふためく程の重圧を放つのはありえないからだ。少なくとも一般人ならば到底不可能な芸当である。という事はすなわち、あそこに座っている人物は野球関係者なのだろうか。疑問は尽きないが、とにかくAKIRAは正体を突き止めようと石井に相談していた。どうやらこの男は謎の重圧の正体を知っているようなので、今ここで答え合わせをしようと思ったのだ。クイズとまではいかないが、やはり問題を投げかけられれば誰だって自分の力で解決しようとしたくなる。他人の力を使って簡単に答えが見つかってしまうのであれば脳は喜ばないからだ。私達の四肢を司っているのは紛れも無く脳である。その脳を蔑ろにする行動をとってしまうのは、あまりにも理にかなっていない。特にAKIRAのようにプロフェッショナルを目指している者であれば、投げかけられた問題には自分の力で考えるようにしなければならないと思っている。そして石井はその事を分かっているようで、両者共に微笑ましい顔をしていた。問題解決まで行くかどうかは分からないが、それでも今の時間は十分に価値はある。なぜならば、脳はまだ自分の知らない知識を与えられると無上に喜ぶからだ。脳が喜ぶと体の動きも良くなり、その日はストレスとは無縁の生活を過ごせる。それだけ、日々の勉強は強い自分を造るためには必要不可欠なのだ。


「審判の後ろにVIPルームがあるだろう。テレビで年俸の査定係が良く映っているあの部屋だ。そこに1人の老人がいた。その老人が凄まじい重圧を放っているように感じがする」


 AKIRAはそうだと言うのだ。その部屋にいる老人が全ての元凶ではないかと。ところがこの話しはあまりにも非現実的だとAKIRA本人も感じていた。なぜならば1人の老人が重圧を放ち、試合展開を制御しているからだ。そんな事を可能にさせる人間がいるのかと、本当の意味で疑問を感じてしまう。この先、未来はどうなるか分からないが、このような能力を持った人間が現れるとも限らない。その中で、目の前の現実に重圧を漲らせている老人が存在しているのだ。そういう意味を込めて石井に話すと、彼は微笑みを維持したまま頷いていた。どうやら限りなく答えに近いようで、AKIRAも喜んでいいのか悪いのかも分からなかった。


「そこまで到達すれば答えは簡単だ。あそこにいる老人こそが鬼崎喜三郎なのだから」


 石井の口から出た言葉は以外だったかもしれないが、それと同時にAKIRAの中では妙に納得していた。まるでその答えが分かっていたかのような反応を脳がしている。体はまだ脳のひらめきに動きがついていけない。これは別に特殊な体験ではなく、直感に体がついていかないのは日常生活でも多々見受けられる。たとえば、相手に言葉を投げかけようとしたにも関わらす喉から言葉が出ないと感じるのは誰だってあるだろう。それと似たような感覚をAKIRAを味わっていた。脳は働いているのに、体が言う事を聞いてくれない。今まで培ってきた努力や苦痛までもが吹き飛ぶかのような、新感覚が体中の血液から流れ出ている。こんな体験は初めてだったので、結局は体が自由に動くまでに2秒は掛かった。僅か2秒だと思われるかもしれないが、1秒の判断能力が命取りになる野球界で、2秒も体が動かなくなるのは営業妨害に他ならない。



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