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AKIRA  作者: 千路文也
プロ2年目  -苦悩-
172/426

172  挫折を飛躍に変える


 挫折を体験するのが自分を成長させるために欠かせないとAKIRAは思っていた。なぜならば、挫折をした瞬間が一番記憶に残るのを知っているからだ。それが精神的理由なのか体力不足なのか技術が足りないのかは定かでは無いが、とにかく挫折は脳に強烈な記憶を刻む。これだけの強烈な記憶は中々払拭されず、恐らく一生残り続けるだろう。そんな記憶を利用しない手は無い。そう思ってるからこそ、挫折を感じた瞬間には「やったぞ。俺の前にまた困難な道が現れた!」と心の底から喜ぶ。そして失敗しようが成功しようがお構いなく、壁を破るための試行錯誤を続ける。人はどうしても時間に追われている時や水や食料も無い極限状態に優れたアイディアを発想する。AKIRAはそれを知っているので、挫折を感じている時には敢えて失敗を重ねてきた。前述にも触れたが、積極的に失敗をする行為は自分を成長させる要因になる。だから挫折と失敗の繰り返しをしていく事によって、一生分かと思える程のストレスを抱え込む。ストレスは確かに辛いが、いざ挫折を乗り越えた時には吹っ飛ぶ。この不安が吹っ飛ぶ感覚がAKIRAはたまらなく好きだ。なので、「そろそろ自分の調子を取り戻せたぞ」と思った時にはストレスを溜めこみ、最終的には放出する。体はまるで生まれたての赤ちゃんのようで、血液の流れも肌から感じるのだ。それ故に、スランプやイップスを発生している時にはワクワクして溜まらない。少なくとも普段の野球生活では味わえない屈辱を味わえるのだから、今の状況には左程ストレスを抱いていなかった。それどころか、まったくの皆無である。理由も無くホームランを打ってしまうイップスなど他の選手では到底味わえない体験なのだから、脳は確実に揺さぶられている。野球で結果を残すか残さないかはあくまでも個人が判断する必要があるので、嫌ならばやめればいい。ところが狭き門を潜り抜けた野球選手達が今更辞める訳にもいかなかったので、辞めるのは他の選手である。とにかくAKIRAは全力を尽くして尚且つチームを勝利に導くのが最上級だと考えている。しかもこの地域ではプロ以上のミート力は持っているので、まったく野手の才能が無い訳ではない。しかしAKIRAはそもそも高卒2年目でありながら本能だけでは無く、理性を生かして野球をしているような人間だった。そんなAKIRAが相手に臆せずに闘い続けるのは一体何故なのか。そればかりを考えるようになり、結局は答えまで至らなかった。まだ野手としてだけではなく、投手として登板する機会も残されているのだから気持ちが落ち込む理由など見つからなかった。こんな貴重な体験をさせてもらえるのは大変名誉である。脳も活性しているのも分かるので、自分に優しい打順に立たせてもらうのはありがたかった。




 ********************



 ためらいや不安などロッカールームにしまってきたと自信満々に言ってきた。ところが今度はファンの期待を踏みにじるような行動をしてしまった。なんと、シュート回転して真ん中に入ってきたボールを見逃して三振である。かっこわあるいにも程があるので、AKIRAはベンチに戻った後、両手を震わせていた。なんせ、あそこまで甘い球を逃してバットが動かなかっただなんて信じられない。こうなってくると、とにかく不調の原因を探す必要だった。原因さえ分かればこっちのモノなのだから、邪な思いは後で焼くなり煮るなりすればいい。大事なのは今なのだからどうしても数字を与えて勉学をさせたかった。それだけ度重なる人間は神様の言っている言葉を信じている。ほとんどの場合はファンも同じ意見であるが。


「まさかあんたが空振りをするとはな……驚いたぜ」


 と、そう言うのは知念恭二だった。彼はAKIRAの隣に座りながら話しかけてきた。無論、AKIRAは誰も拒まない性質なので遠慮なく言葉を返すのだった。



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