169 軽い運動でストレスを解消させる
AKIRAは、理性に従って物事を考えればミスをおかさないと自負している。とにかく悩んで悩んで悩み抜く方がよっぽど頭がハッキリとしていて、面倒な出来事を起こさずに済むと、19年間考えて漸く理解していた。人間はどう考えても野生の動物とは違うので本能だけで物事を理解しようとしていてはいけない。理性を失くした人間などゾンビに等しいのだから、合理論こそが全てだと思っていた。無論、根拠なき考え方は理性では無いとも知っている。だからこそAKIRAは野球をするのにも頭脳が必要だと思っている。試合の中で頭脳を使うのは配球やリードを考える捕手だけだと思われがちだが、AKIRAの守備位置であるセンターでも頭脳は必要だった。なんせセンターは外野手の司令塔なのだからレフトやライトにも声を掛ける必要がある。しかも試合中は応援歌や鳴り物でけたたましい音がしているので、腹から声を出す必要が出る。たとえ途中で噛んだとしても声を出す事実が重要だ。なので自分に臆せずに「俺が捕る!」と大声を出すべきなのだ。だがそれに関してはAKIRAに心配は無用である。彼の声は凄まじい声量をしているので、球場に響き渡るような声を持っていると言っても過言では無い。かつてCMに出演した時には監督から「今すぐにでも舞台俳優として活躍出来る」と褒められた程だ。そこまで他人を圧倒する程の声量と肺活量を持っているにも関わらず、決して自分の声を過大評価などしたりはしない。むしろ、自分の声はただ低いだけで相手を魅了させるだけの力すら持っていないのだと理解しているぐらいにだ。
そんなAKIRAの声が大きい理由は性格と一致している。彼本来の性格は明るく陽気でのほほんとした感じた。とにかく笑っている時こそストレス解消になっていると頑なに信じているため、どんな話しでも面白いのならば腹を抱えて笑う。そんなAKIRAは自然と腹式呼吸をしているためセロトニンの量も他の人間とは段違いである。セロトニンとは別名、幸福を呼ぶ神経細胞と呼ばれていて、セロトニンが活発であれば活発である程、人生を生き生きと過ごせるとまで呼ばれている。そんなセロトニンを増やすためには腹式呼吸は勿論、リズミカルな運動が必要とされている。他には太陽の光を浴びるだとか規則正しい生活をするだとか人間ならば当たり前の行動をしていれば勝手に増えてくれる。だが、セロトニンの量を増やしてストレスとは無縁の生活を過ごしたいのであれば、腹式呼吸やリズミカルな運動が大事になってくるのだと、AKIRAは試行錯誤の上で理解していた。本来ならば誰かに教わる事によって初めて理解する内容なのだが、AKIRAは常に脳をフル回転している。そのため、他の人がなかなか気づかない点を自分の力だけで学習していたりするのだ。
夜寝る前にシャドーボクシングでジャブを打ったり、一定時間に腕立て伏せをしたりするだけでも気分がまるで違ってくる。特にシャドーボクシングはストレス解消にもなるので他の選手達にもオススメしている運動方法だ。激しい運動を夜寝る前にするのではなく、このように誰でも簡単に出来る運動を2、3分行うだけで随分と幸せを感じられる。一日の絶望感を感じたまま寝床につくよりもハッキリと効果的なのはまず間違いないのだから、率先してやるべきである。少なくともスポーツ選手ならば体を動かしてから寝る方が良いに決まっているのだから。
なのでAKIRAは、こうしてベンチで試合展開を見守っていても深い呼吸をしている。セロトニンの量が減ってしまえばたちまち投球リズムや打席の中で狂いが生じてくると知っているからだ。不調よりかは興奮している方が良いに決まっているので、なるべく勝負事の時には冷静になるよりも力んでいる方が体は命令通りに動いてくれると言うのだった。




