165 常識に立ち返る
翌日、登板が控えているAKIRAは自分自身を高めるための作業をしていた。野球をするのではなく、常識的にやらねばいけない事をするのがAKIRAにとって自分を高めるための作業だった。部屋の掃除や洗濯など、人間が生きていく上で必要な行動を集中してする。それだけで憂鬱な気分も晴れてくるのだ。特に憤りの無い怒りを感じている時は、敢えて常識的な行動をするようになれば気分が全く違ってくる。しかも自分が不調な時はこういった常識ある行動も疎かになってしまいガチなので、素振りをするよりも先に身の回りの整理をした方がよっぽど利口ではないかとAKIRAは悟っていた。本来は綺麗好きである筈なのに、目先の事ばかりに囚われて掃除を疎かにしてしまう人間は良くいる。しかしそうじゃなくて、苦痛を感じている時こそ、常識的に物事を考えた方が物事が上手くいくとAKIRAは考えているのだ。誰も苦痛や怒りからは逃れないからこそ、それらを人生のエネルギーに転換いていく行為が必要となってくる。その転換がAKIRAにとっては常識ある行動に過ぎない。別に強制する訳では無いのでAKIRAはこの転換作業を誰にも言わずに黙々とこなしている。彼のように努力を人に見せずにいると、体の内からプレッシャーを放つ人物になれるのは言うまでもない。ツイッターやフェイスブックは勿論、親しい友人にも自分が行っている努力を言わないだけで、プロ野球では確実に必要な存在感を習得できるのだ。しかし、ここで自分のしてきた努力を自慢気に語ってしまうと、たちまち存在感は消え失せて、成果にも繋がらなくなる。どんな物事も成功するか否かは自分の人間力にかかっているのだから、絶対に自慢のような人から疎まれる行為はしてはならない。あくまでも自分を高めるための作業は人が見ていない所で行うべきなのだ。露骨な自己アピールなど身の破産を招くだけで何の意味も無い。それよりもひたすら自分のために努力を続けている方がよっぽど自分のためにもなるし、他人に迷惑をかけないで済むので、AKIRAは絶対に努力をしている様を人には見せない。公開練習では仕方がないとしても、それ以外では絶対にだ。故にAKIRAは1日の自分のスケジュールを自発的に言った事は無いので、毎回インタビュワーに仰天されている。テレビや雑誌の取材で「睡眠時間はどれぐらいですか?」と聞かれるのはテンプレ的なので、そこで初めて自分の行いを世間に晒していく。自分にとっては当たり前だと思ってい行動も世間一般の思考では驚きになるのも多々あった。その内の1つが『22時に寝て3時に起きる』事だ。AKIRAは長年この5時間睡眠は普通だと思っていただけに、インタビュワーに仰天されて恥ずかしい思いをいた事がある。だから自分の努力方法を世間に伝えたくないと思っているのだが、いざ聞かれると正直に答える必要がある。もしもここで「8時間睡眠ですよ」と嘘の回答をしてしまえば、一生後悔する必要があるのでAKIRAは絶対に嘘だけは言わないようにしている。そもそも嘘を言う方が恥ずべき行為なので、素直に感情を出して正直に喋ろうと日々心がけている訳だ。
そして今のAKIRAは心身共に追い込まれている状態である。部屋の中に閉じこもって瞑想をしながら腹式呼吸でセロトニンを増幅させていく。そうする事によって部屋の中もそうだが、自分自身の悪しき心が息となって消えていくような気がして心が落ち着くのだ。既にAKIRAは全身からプレッシャーを放出していて、明日のための準備は整っていた。後はゆっくりと寝て、万全の状態をキープするだけである。しかし、そんなAKIRAも寝る前にはブログを更新しなければいけないので、瞑想が終わると情熱をキーボードに宿しながら、ポチポチとブログを書いていた。内容は昨日監督と一緒におでんを食べた事である。おでんの具はただひたすら美味しかったと書くだけで、明日登板する予定なのは伏せておいた。あくまでも野球は仕事であり、ブログで書く内容だとは思わなかったからである。




