161 人々の意外な反応
こうしてアスリートとして最優先にすべき達成事項を伝えたAKIRAは家に帰って好きなバラエティ番組を見ながら腹を抱えて笑っていた。特に今、彼がハマッているのはAKIRA自身を真似ているモノマネ芸人だ。彼の芸名はカントリー親父という名前で見た目も実際年齢もおっさんそのものなのだ。それなのに若い自分をモノマネして実際にお客さんに大うけしているのだから、やはり自分は世間から老けて見られているのだろうとも納得していた。そんなカントリー親父を見ていると、本当に自分はここまで独特な声と喋り方をしているのかと耳を疑いそうになる。確かにこんな喋り方をしていたら笑われるのは当然だが、明らかに言い過ぎな部分もあるので、そこがまたAKIRAの笑い壺を刺激していた。ここまで独特の低い声と、その絶妙な言い回しをされるのであれば本人も腹を抱えて笑うのも、ある意味では仕方がない事だった。AKIRAはカントリー親父のモノマネが自分の中でブームになっているのも知っているので、彼が出ている番組は必ず録画してチェックしている。ここまでくるとファンを通り越して親のような気持ちになっているが、本当にその気持ちと近い部分があるのだ。カントリー親父はどうみても自分よりも幾分も年上である筈なのに、どこか子供のような目で彼をみてしまう。いつか彼と対談をしてみたいと思う程なのだが、生憎今はシーズン中なので自分からバラエティ番組に出演するのは許されない。そんな事をすると、まず間違いなくツイッターのフォロワーから「テレビに出る暇があったら練習しろや!」とお叱りの声を頂く羽目になるので、カントリー親父と共演するためには明らかに時期が足りない。なので、オフシーズンにそういうオファーがきたらいいのになと願いながら、パソコンに向かってキーボードを叩くAKIRAだった。
というのも、さっきのモノマネがあまりにも面白かったのでブログのネタにしようと思いついたのだ。それにAKIRAのブログは1日に数十万アクセスを誇る人気ブログであり、アクセス数ランキングでは堂々の王冠マークを獲得している。別にAKIRAには文才などまるで無いのだが、彼には女ファンが大勢いるのでAKIRAの言葉に少しでも触れたいと思う彼女達がこぞってブログにアクセスしてくれる。だからこそ、こうやって人気ブロガーとして多少のお小遣いも稼ぎつつも、日々の出来事を少しでも面白おかしくしようと必死にキーボードを打っているのだった。そもそも、彼はパソコン音痴なのでキーボードを打つのにやたら時間がかかるのがネックだ。今時珍しく、キーボードを人差し指だけでポチポチと押しながら「ああでもない、こうでもない」と自分の作った文章と睨めっこするのだ。しかし今日に限って自分の納得する文が思いつかなかったので、結局は多大な時間を消費したにも関わらず、大した文字数を書けなかった。
「今日のカントリー親父はいつにもましてキレが良かったね。いつか彼と共演してみたいな(*^_^*)」
この一文だけである。時間を消費したにも関わらず、この一文だけではさぞアメンバーも苦笑いしているだろうとAKIRA自身も苦悩を抱いていたのだが、意外や意外、自分がカントリー親父を見ているのに仰天したファンの人達でコメントが溢れかえっているではないか。コメントを見ていると、どうやら本人が見ているとは思わなかったようで、皆がコメントの最後にビックリマークをつけているのが印象強かった。そしてファンのコメントを流しながら読んでいると、とある文章に注目せざる終えなかった。それは「ヤフーニュースにAKIRAさんのブログが載っているよ」とのコメントであった。暁天したAKIRAはすぐさまヤフーのトップページに飛ぶと、確かにそこには『仰天。あのAKIRAがカントリー親父を知っていた』と記事になっているではないか。そこまで驚く事なのかと若干疑問に思いながらも、もしかしたらこれを見てくれたカントリー親父さんがサインを送ってくれるかもしれないと淡い気持ちを抱きながら、その日はパソコンの電源を落とした。なんせもう時間は21時を過ぎているので、とっとと風呂に入って寝る必要がある。いつも22時には寝ているから夜更かしは厳禁なのだ。
しかし2メートルの身長を誇るAKIRAにとっては、寮の風呂に入るのは危険を伴うので近くの温泉施設に出向く必要があった。あそこならば高身長の人にも配慮した素敵な温泉を楽しめるので、AKIRAはいつも風呂に入る時間帯になるとルンルン気分になる。本当は朝風呂をするのが日課なのだが、今回は変化を愉しもうとしている自分がいるので、夜にお風呂に入る気持ちは一体どうなのかと愉しみたがっているのだ。そして当然の事ながら、風呂場にはたくさんの人々がいてAKIRAはたちまちサインの要求をされていた。朝風呂になると人が空いているのでサインを求められる機会は最小限に止められるのだが、どうやらこの時間帯に来てしまうと少々面倒な事態に発展するようだ。しかしそれでも悪い気分にならないので、AKIRAはファンの人達に笑顔を見せながらサインに応じているのだった。




