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AKIRA  作者: 千路文也
プロ1年目  -友情-
14/426

014  これまでの成績一覧


 山室は次第にバッティングセンスを開花していった。当てる技術もさることながら、足の速さで内野にゴロを打てば内野安打になる。塁に出れば盗塁も仕掛けるので、投手からしてみれば嫌な相手だろう。しかも、四球も選べるようになっているのだ。七月時点で、山室の打率は3割を超えている。それ故に、六月の中旬から一番バッターに起用されることが多くなり、AKIRAは三番を任されていた。四番にはショルダーという絶対的な四番打者がいるためだ。二番には送りバントの鬼、田中がおり、五番にはザ・キャプテンの石井がいる。野手陣は大きく改善されていき、勝ち数も増えていった。といっても、開幕二十九連敗という悪夢があったので、最下位を定位置としたままだが。



 ここで、阪海ワイルドダックスの選手たちの成績を確認しよう。




 一番 ライト 山室 打率.343 0本 6打点


 二番 セカンド 田中 打率.224 0本 14打点


 三番 センター AKIRA 打率.264 20本 44打点


 四番 ファーストA.ショルダー 打率.386 15本 38打点


 五番 ショート 石井 打率.255 5本 32打点


 六番 レフト 神野 打率.232 2本 15打点


 七番 サード 別府 打率.201 10本 18打点


 八番 キャッチャー 松本 打率.182 8本 14打点




 高卒ルーキーとは考えられないほど、AKIRAはよく打っている。後半戦が始まるまでに、20本のホームランを放っているのだ。四番のショルダーも参加が遅いながらも既に15本も放っていた。阪海ワイルドダックスは中軸は良くなってきているが、やはり下位打線が落ち気味である。八番を打っているこの松本というキャッチャーは将来の大砲候補でドラフト一位指名されて、もう5年が経つ。パンチ力はあるのだが、やはり打率が控えめでチャンスにも弱いのが欠点か。そして、何よりもリード力と捕球が壊滅的に悪く、チーム事情がチーム事情なだけに、コンバードさせられないのが痛い。これよりキャッチャーが出来る選手がまだ育っていないのだ。将来的には鉄砲肩を生かして三塁手にコンバードさせる計画があるらしいのだが、それは随分と先の話しだろう。


 そして、最も酷い醜態をさらしているのは七番の神野という選手だ。彼は打撃成績も壊滅的に低いのだが、それよりも守備面があまりのも酷い。怠慢守備は当たり前で、何回もトンネルをしたり、バンザイをするのだ。肩も悪い意味でイカレていて、人生で一度もバックホームした事がないという体たらく。プロ野球でも中々お目にかかれない守備の雑さなのだ。そんな神野でも阪海のレフト陣では比較的マシな方であり、泣く泣くスタメンで使う事を余儀なくされているのだ。もし、他に使えるレフトが出てくれば、余裕で二軍送りにさせられるだろう。しかし、神野は十年近くもの間、スタメンとして出続けている。ファンからも疫病神扱いされていて、神野のグッズは一個も無い。たとえ出したとしても売れないのだ。そんな不人気選手の神野は性格も悪い。ツネーズの矢部程ではないが、嫌いな選手のホームランタッチを無視したり、陰で嫌味を言うのは当たり前の選手だ。そんな選手がスタメンを出続けるのは球団の汚点であり、一刻も早く改善しないといけない。今年のドラフトで、ワーグナー監督がまた怪物ルーキーを引き当てる事を期待しよう。


 そして、今日の試合では山室のバットが火を噴いていた。初回にスリーベースヒットを放つと、田中のスクイズでホームイン。二打席目も再びスリーベースヒットを放ち、三番AKIRAのタイムリーヒットで二度目のホームイン。そして極めつけは右中間にボールを弾き返して、ランニングホームランをした事である。明らかに今までの山室とは違うのだ。打撃力が覚醒をしている。


 それもこれもAKIRAの指導力の御蔭だった。前回にも話したが、AKIRAには打撃コーチとしての才能もあり、それを認めたワーグナー監督は山室に打撃の極意を教えろとAKIRAに頼み込んだ。すると、山室はAKIRAの指導で見る見るうちに才能を爆発させ、今ではチームの一番バッターを任されている程である。しかも、今日の試合で打率を上げた。いまだにホームランを打っていないのはAKIRAの言葉だった。ホームランの魅力に囚われて長打狙いになってしまうのは打率を下げるだけだから、ホームランは絶対に打つなよと固く言われていた。なので、ホームランはほとんど打たないが、それでも俊足を生かした見事なプレーと両リーグトップの守備力はファンを魅了してやまない。


「俺、億プレイヤーになれそうですね(笑)」


 試合後のヒーローインタビューで言った言葉だ。冗談で言ったのだと思うが、それでも年俸一億に相応しい男になれそうなのが、山室の恐ろしいところだ。このまま、走・攻・守のスペシャリストを目指して突き進んでもらいたい。


 次は石井遊撃手だ。今年で49歳という年齢でありながら、打率は.255でホームランを五本も打っている。元々、ショートは打撃力が低い選手が集まるポジションなのだが、この男は3000本以上の安打数を誇るヒットメーカー。一時期は首位打者を狙える位置にあったのだが、後に伝説となる、とある選手に負けてしまった。それ以来、石井は一度もタイトルをとは無縁の野球人生を送っているのだが、積み重ねたヒットの数は3900本を超えた。後一年現役を続けられれば、4000本安打に到達できるのだ。


 これには高卒ルーキーのAKIRAは度胆を抜かされていた。4000本のヒットなど気の遠くなる話しであり、自分とは格が違うのだなと、ひそかに尊敬していたのだ。石井は普段は居酒屋テンションのおっさんだが、野球になると人一倍努力をするし、周りからも好かれていて、嫌われる要素がまったくない人格者でもあったりする。


「石井先輩、あんた凄いよ」


 ロッカールームで、AKIRAと石井は二人きりになっていた。そこで、AKIRAは石井に話しかけるのだ。


「どうしたんだ急に?」


「いや、50歳が近い体で良く現役を続けられるなと思ってさ」


「気持ちが若いから、体も若くなるのさ。俺は足がもつれるまで現役を続ける予定だ」


 走塁でコケた時が現役最後だと石井は言うのだった。






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