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AKIRA  作者: 千路文也
プロ2年目  -苦悩-
112/426

112  日本人初の看板直撃弾


 芝田の一撃はクレイジードームの看板に直撃するという特大のホームランだった。あの看板は前々から「景品を渡す気がないだろう」とファンからもツッコミがあった程の位置に建てられている。クレイジードームの歴史はとても古いが、それでも看板直撃の当たりをみせたのは日本人はいない。助っ人外国人が一人だけ当てた実績を持っている。つまり、芝田が日本人第一号の看板直撃弾を放ったという訳だ。これが芝田のパワーである。長らく外国人のパワーには日本人は勝てないと言われていた。しかし、パワーだけならメジャー級の男がここにいるというのが証明されただけでも朗報だ。


 そしてAKIRAは、芝田がホームランを打った時の感想を聞きたくて聞きたくてウズウズしていたので、敢えて自分から芝田の隣に座って話しかけていた。さっきまで監督と野球話をしていたのに、今度は芝田と野球話をする。これがAKIRAの野球熱だ。


「まさに目の覚めるホームランだったな。良く打った」


 AKIRAはそう言いながら、芝田の背中をポンポンと叩いた。無論、今度は優しくである。


「自分でもビックリの打球だったよ。まさかクレイジードームの看板に当たるとは想像すら出来なかったし」


 それはそうだ。あの看板に当てるには並大抵の飛距離では無理だ。それこそ阪海球場のライトスタンド上段に放りこむぐらいのパワーが無ければ不可能に近い。それぐらい難しい事をプロ1年目でやってのけたのだから凄まじい破壊力をお持ちのようである。


「このドームは広いからな。それでも俺達の本拠地に比べればまだマシだが」


 阪海球場は両リーグでナンバーワンの両翼を誇る球場だ。しかもライト方向には強烈な浜風が吹いているので中々ホームランが出ない。阪海でホームラン王を狙おうと思えば逆方向にホームランを打てる技術が無いとかなり難しい。そんな中、去年のAKIRAは本塁打数がラ・リーグの2位だったのだから驚きだ。しかも阪海球場を本拠地にしている左打者なのだから、それだけ価値のあるホームラン数だ。なお、去年三冠王に輝いたツネーズは両リーグでもっとも狭いと言われる球場を本拠地にしてのホームラン王だったので、色々と批判はあったようだ。


「本当だよな。阪海球場を見たメジャーリーガーたちも度胆を抜いたらしいぞ。なんだこのファッキン球場はってね」


 名高いメジャーリーガーでさえも驚きを隠せない広さだというのだ。しかし、メジャーには更に広大な球場が何個か存在しているのでリップサービスだったのかもしれないが。


「しかし、パワーヒッターは芝田君を含めて大勢いるようだが、なんで阪海にはパワーヒッターが集まる傾向にあるんだ? 育成力があるのだろうか」


 AKIRAも疑問に感じていた。あんなに広い球場を本拠地にして、何故パワーヒッターを育成できるのか不思議で仕方ないのである。それこそツネーズの本拠地でホームランバッターが出てくるのは分かるが、明らかに広い球場で飛ばし屋を育成できる阪海フロントにAKIRAも驚きを隠せないでいた。


「それは違うんじゃないか。阪海は即戦力を中心にドラフトを廻しているし」


「そうか……ようするにクジ運が強いって訳か」


 ドラフトでは使命が被ると箱の中に入っている抽選クジを引いて見事当たった者に褒美としてメンバーを獲得できる権利を与えている。ようするに、AKIRAはいくつもの球団が競い合った結果、阪海が獲したという事になっている、


「それと、力はあるが問題を抱えている選手を接客的に入団させる傾向も影響しているんじゃないか。俺みたいな奴、他の球団なら絶対に獲らないだろうし」


 さすがに部活の後輩をイジメて自殺に追い込んだ選手を入団させようと考える球団はどこにもない。人間はどうしてもメンツを気にする生物なので、芝田のような問題児はどれだけ才能を秘めていようが入団させないのが基本的だ。ところが、阪海フロントは良い意味でも悪い意味でもアバウトな感じなので、芝田獲得に動いたという訳だ。それでも知念のような暴れん坊を獲得するのはどうかと、未だにAKIRAと石井は首を捻っているようだが。


「例の事件があってからでは、世間の目もだいぶ違っただろう?」


「モチのロンだ。今まで俺を応援してくれていたおばあちゃんたちが、ある日突然目の敵ような目つきで俺を睨んでくる。こんな体験をされたことは一度たりとも無かった。友達も徐々に離れて行ったし、最終的には卒業式で自分だけ明確な友達が一人もいなかったよ」


 友達さえも離れていったというのだ。さすがのAKIRAも憐みを隠せないでいた。なんせ彼の家系は代々友達を大切にするというスピリッツが宿っていると言われているので、黙ってはいられない。むしろ可哀想にと思っていた。


「そもそもなんでその子をいじめていたんだ?」


「やめてくれ。もうその話しは俺の中で黒歴史と認定されているから思い出したくもない」


 芝田はそうだと言うのだった。思い出したくないのだと。



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