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AKIRA  作者: 千路文也
プロ2年目  -苦悩-
108/426

108  人は変われる


 AKIRAの三振はとても美しく様になる三振だった。とはいえ、アウトカウントが一つ増えた事には変わらないのである。そして次の打者は5番の芝田。このバッターはクラッチヒッターであるためチャンスであればあるほど、勝負師としての本領を発揮する。たらればになってしまうが、もしもAKIRAが進塁打でも打っていれば、更に芝田の打撃力が増幅するのだ。


 打率も残せてホームランも打てる4番、そして4番が返しきれなかった塁場の選手を一掃可能とする5番。この4、5番がいるからこそ今の阪海はラ・リーグの首位争いが出来るという訳だ。


 それだけにベンチに戻ったAKIRAも彼には期待をしていた。ハッキリ言って、自分よりも芯に当たれば飛ばせる力を持っていると思っているぐらいなのだから。それぐらい、芝田という男のパワーはえげつないのである。バットを短く持っているのにも関わらず、球場によっては場外ホームランを放つ飛距離を誇る。こんな選手が何故に社会人でくすぶっていたのか首を傾げる程だ。もしも彼がクラッチヒッターでは無く、常に本当の自分を出す事が出来れば、間違いなく球界最強のバッターとなりえる。しかも彼はまだ20代と若いのでかなり期待が持てる。


「芝田という男は何故なにゆえ社会人野球をしていたんだ? あれだけのパワーがあれば高校生ドラフトにかかってもおかしくはないだろう」


 さすがのAKIRAも疑問を隠せない。なので、球界の宝とも言える石井先輩に問うていた。彼はこの場の誰よりも野球を知っていて、なおかつ日本野球界の歴史もそれなりに知っている事だろうと思っての事だった。するとその予測が当たっていたのか、石井は目を上空に泳がせて頷きながら顎髭をボリボリと掻いていた。こういう仕草をするときは物事を知っていて、必死に思い出そうとしている証拠だ。なので、AKIRAはじっくりと石井の言葉を待つ事にした。


「あいつは高校の時に不祥事を起こしたからな。誰も獲ろうとしなかった」


「またそのパターンか。阪海にはロクな選手が入団しないな」


 その中にも自分も含まれているのは言うまでもない。何を隠そう、彼は自他共に認める変わり者なのだから。もしくは、変わり者だからこそ好成績を残せると言っても過言ではないかもしれないが。


「ハハハ! 確かに個性だけなら他球団を圧倒しているかもな」


 存在感が限りなく薄い石井に、暴力沙汰を引き起こす光太朗と知念。そして覆面で顔を隠している謎の監督と挙げればキリがないぐらい、阪海はバラェティー豊富な選手に恵まれている。この中に入れば、自ずとAKIRAの変人具合も薄れるぐらいだ。


「それで……奴は一体何をしたんだ?」


 一度気になったらとことん追求するのがAKIRAの性分だ。モヤモヤとした気持ちになるよりも、多少強引かもしれないが真実を聞き出そうとする方が体にも精神的にも楽だと心得ている。それに、今は試合中なので心に靄がかかっている状態でプレーするようでは選手失格だとAKIRAは思っていた。


「野球部のイジメに加担していたそうだ。しかも当時の芝田は主将だったから余計に印象が悪くてな。ドラフトで指名しようとはどのチームもしなかった」


 芝田にはそんな過去があったというのだ。何故こうも阪海には血の気が多い選手ばかり集まるのか溜め息が出そうなぐらいである。最も、皆が血の気が多いからこそパワーヒッターとして活躍しているのかもしれないが。


「イジメか……それはやっちゃいけないな」


「でも、芝田はもう反省しているだろう。立派な大人なんだし」


 石井から見れば柴田なんて子供のようなものだ。しかし、彼の事を一人前の大人だと認められる懐の深さがとても印象的である。人によっては芝田のやった罪を一生許さないと言って嫌味を漏らす人間もいるが、石井はそのような人間とは格が違う。赦しの精神を持っていて、人は必ずやりなおせるという事を提唱していた。


「ああ、そうだな。そう願おう」


 こうしてAKIRAは再び芝田の打席に注目するのだった。




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