放課後なんてもうトラウマだ…
最近小説の更新をしていなくてすいません!
春の心地よい午後の風が吹く三時の屋上。そこにかわいらしい容姿の少年・空と長い髪に花の髪飾りを付けた少女・水希が向かい合うように立っていた。彼らの間の温度はとても違う。空のほうからは幸せそうなオーラが出ていて暖かいが、水希のほうからは怒りのオーラが出ていて、寒い。オーラに温度はないはずなのだがこう感じさせてしまうぐらい、二人の表情や様子は違っていた。
「結局来てくれたんだね、みずちゃん。」
「あんたが脅迫まがいの言葉で私を脅すからでしょ…。」
嬉しそうに言った空に冷たくピシッと言い放つ水希。彼女の心にはイライラと憎しみと怒りと辛さと自分のふがいなさなどのマイナスの感情しかない状況だ。
「えー、そうだったっけ?僕、覚えていないやー、あはは。」
お気楽そうに明るく言う空。彼の心には幸せとかみずちゃんをぎゅっとしたいとか、キスしたいとか、とりあえず妄想やプラスの感情しかない。
「違うでしょ!あんた、何嘘ついてんのよ!私は全然ここに来たくなかった。むしろ避けたかった。そしてあんたに会いたくなかった。」
「あ、ばれた?えへへへへ。」
「なによ、そのぶりっこ。悪いけれどやめてくれない?私にはそういうの全くきかないから。むしろ逆効果だから。余計嫌いになるから。」
「もうツンデレなんだからあ、みずちゃんはっ。」
「やめて、虫唾が走る、鳥肌が立つ、吐き気がする、頭痛がする、腹痛がする…。」
空に対して水希の体と心は素直に拒否反応を示す。でもまだじんましんがするよりはましなのかもしれない。けれどかなり重症ということには変わりはない。
「ひどいね、みずちゃん。もしかして僕に長い間会えなかったから嬉しさのあまり、そうなったの?」
どれだけこいつはポジティブで自己感情主義で鈍感なんだろうか…。水希は内心あきれつつも自分がその相手に好かれてしまったという不幸を嘆いた。
「なんでそう思うのよ、空、あんたは…。」
「だってみずちゃんに避けられていることは分かるもん。だからせめて冗談でもそういわないとちょっと辛いところあるからさ…。」
切なそうに空は言った。その言葉を聞き、水希は笑顔で言った。
「私が空のことを避けていると分かっているんだったら近づかないでくれるかな?」
「それは無理です。」
きっぱりとそう言い切る空。
「僕はみずちゃんがいないと生きていけないから。」
「あっそ。別に私は空が生きていけなくてもどうもこうもないけれど。」
水希にとっては空はいないでいてくれたほうがありがたい存在だ。彼女にとって空がいることはマイナスにはなってもプラスになることは今のところ、いや多分将来でも一回もないだろう。と水希は思っている。
「へえ、強いね、みずちゃんは。僕なんて愛する人がいないと飢えてしまうタイプなんだけれどな。」
そういうことをサラッと空はなんでいつも言うのだろうか、と水希は思った。そしてなぜそんなことを言えるのかが妙に気になったので、聞いてみた。
「なんで空は普通の人が恥ずかしがって言えない言葉を普通にさらっと言えるの?」
「だって素直に気持ちはつたえないと相手には絶対に伝わらないじゃん。」
「でも私に言っても気持ちは通じないと思うけれど?」
「たとえそれでも僕は絶対にあきらめないからね。」
そう言った空の表情にちょっと水希はドキッとなった。そう空に対して自分が思ったことに水希は戸惑った。なんで空に対してそう思ってしまったのだろうと。
「あれ、みずちゃん、どうしたの?」
そんな水希に空は気づいてそう聞いた。
「な、なんでもないっ。」
ちょっと顔を赤くしてそう言う水希に対して空はもしかして…、と思い、にやりと心の中で笑った。
もしかしたらみずちゃんをおとすことができるかもしれないと…。そして水希に聞いてみた。
「もしかして一瞬、僕にドキッてなった?」
「なってないっ!」
その時に一瞬水希がためらったのを見て、空はよっしゃあ、と心の中で叫んだ。しかしそのそぶりは見せずにこう続けた。
「えー、本当に?」
「本当です。」
それから空は
「本当にみずちゃんは僕に何されてもドキッとならないの?」
「なるわけないでしょ!って何されてもって一体な…?」
そのあとの言葉を水希が続けられなかったのはいきなり空が『キス』をしてきたからだった。その時に
はとっさのことに口に触れる柔らかい感触がなんなのかが水希は分からなかった。だが少し落ち着くとその感触がなんなのかに気付き、すぐにその感触から逃げようとした。だが空に体をぎゅうっと抱きしめられていたために逃げることができない。そこで水希は顔をそらそうとしたが、それは空によって封じ込められる。それから約一分後に空は水希から顔と唇を離す。
「ぷはっ、みずちゃんのセカンドキスゲット!」
嬉しそうな空に水希はいらっとしたが、なぜか怒る気にはなれない。しかもふと思い返すと…
「ないないないない、ありえないっ!」
そう、いやな気持が不思議なほどなかったのだった。
ちょっと自分でもこういう感じになるとは想像がつきませんでした…。でもこれでちょっとは恋愛ものに近づいたのかもしれませんね…。感想いただけたら嬉しいです。では