それは、『ぼくらの』ゴールなのかなぁ?
月曜のお昼休み。
「パパにまた聞いてみたよ」
そう言ってミホが取り出したノートには、青や赤でいろいろとメモが書いてあった。
「CCOがサービス終了するのは、人が減ってきたからだろう……って」
「人?」カケルが聞いた。
「CCOで遊んでいる人のことだよ。会社に入るお金がだいぶ減って来たはずだって」
それを聞いて、ハルは、うんうんとうなずいていた。
「どうしてお金がへるの?」と、カケル。
「サーバーを動かし続けるのには、お金がずっと必要で、遊ぶ人が沢山いないと支えられないんだって」
「また知らない言葉が。サーバーってなに?」
「わたしもよくわからなかったんだけど……。CCOをみんなで遊ぶには、『サーバー』っていう機械が無いとダメなんだって、パパが言ってた」
「ええと、ぼくらはどうしたらいいんだ?」
カケルがうなった、そのとき。
ハルが話しはじめた。
「土日にさ。『AIさん』に聞いてみたんだよね」
「AIさん?」とカケル。
「うん。兄ちゃんのパソコンを借りてさ、『オンラインゲームを残すにはどうしたらいいですか?』って、AIさんに聞いてみた」
「そしたら?」
ミホが、すこし身を乗り出した。
「まず、『サービスを終わらせないようにするには、ゲーム会社と一緒にやる必要がある』って。
会社には『けんり』っていうのがあって、会社の外の人が、勝手にやっちゃダメなんだってさ」
「だよね……それ、わたしのパパも言ってた」
ミホは、自分のノートを見つめた。
「でね、AIさんは、
『プレイ動画や写真、テキストの記録などで「遊んでいたようす」を残すことなら、遊んでいる人ができるかもしれません』
って」
「ゲームじゃなくて、遊んでいたようすを、残す……かぁ」とカケル。
「僕は、AIさんの案って、いいと思うんだよね。だってさ——」
ハルは話を続けた。
「『遊んでいたようすをのこす』って、ミホがいつもやってる『写真を撮るあそび』の、すごいバージョンみたいなもんじゃない?」
「たしかに。広場の写真とか、塔の写真とか、もういっぱいあるもんね」
カケルはうなずいた。
「それを、もっとちゃんとやる感じ。
動画もとって、メモも書いて……。それなら、僕らでもできると思うんだ」
ハルは胸をはった。
「なるほど」と、カケル。
「実況動画を撮って、ユーチューバーになれるかもしれない」と、ハル。
「小学生で、ユーチューバーデビュー……すごい話になってきた」
こうふん気味の、カケルとハル。
でも、少ししてから、カケルがミホの表情に気づいた。
「……ミホは、それでいい?」
カケルは、ミホの顔をうかがうように、そう聞いた。
ミホは、すこし考えてから言った。
「わたし、写真とるのは好きだよ? 続けるのも楽しい。
でも、サービスが終わった三か月後にはさ——」
「うん」
「三人で あそべる場所は、なくなっちゃうんだよね?」
「「……うん」」
「写真だけ、思い出だけっていうのは、ちょっとさびしいかなぁって」
「そっか……思い出だけ残っても、遊ぶ場所が無くなっちゃうのか」
ハルがしみじみと言った。
「できるかもしれないけど、『ぼくらのゴール』って感じじゃないね」
と、カケルが言った。
三人とも、しばらくだまった。
「そういえばさ」
カケルが口をひらいた。
「おじいちゃん家に行ってきたんだ」
「ゲームに詳しいって言ってた、おじいちゃん?」とミホ。
「うん。そのおじいちゃん。
昔のゲームをいっぱい持っててさ。
いちばん最初の『コスモキャンプ』もあって、ちょっとだけ遊ばせてもらった」
「えー!」とハル。
「わたしも見てみたい!」とミホ。
「けっこう面白かったよ。
でも、『ぼくがなんとかしたいのは、CCOなんだよね』って言ったらさ——」
カケルは、二人の顔を見てから言葉を続けた。
「『それでいい』って言ってくれたんだ。
『じゃあ、今のCCOのことを、いっしょに考えよう』って」




