『一度目の』さよなら
おじいちゃんのお葬式の日が来た。
天気が良くて、空が青かった。
四十人ぐらい。
遠くの親戚も来てくれて、いろいろ手伝ってくれた。
パパは、いつもと変わらず、てきぱき準備をしていた。
いつもより明るいくらいだった。
ぼくは、いすに座って、お葬式が進むのを待っていた。
おじいちゃん家のお隣の、おじさんとおばさんが来てくれた。
「いつも窓とかを直してもらって」と言っていた人たちが、今日は、
「たいへんだったね」って、パパに声をかけていた。
その人たちが泣いているのを見たとたん、
パパの目から、急に涙がこぼれた。
パパは、くるっと後ろを向いた。
ママがパパに、ハンカチを渡していた。
パパが泣いているのを見たのは、ぼくははじめてだった。
お坊さんがお経をとなえ終わると、
立ち上がって、みんなの方を向いて言った。
人間は、『二回』死ぬと言われています。
一度目の死は、肉体が死ぬこと。
でも、残された人の記憶の中には、まだ生きているんですね。
覚えている人が誰もいなくなった時に、二度目の死が来るとされています。
一度目の死を迎えた人の事を、
この世に残された私たちが覚えていて、幸せに暮らすことが、
旅立った人への一番の供養になるのです。
そうか。
今日はおじいちゃんと、『一度目の』さよならをする日なんだ。
でも、二度目のさよならは、僕はしたくない。




